2024年下半期の調剤薬局M&A総括──大型クロージングと“救済型”譲受が同時進行
2024年下半期の調剤薬局業界は、①上期に発表済みの大型案件のクロージング、②経営再建局面にあるチェーンの“救済型”譲受、③地域密着チェーンの取り込み、という三つの流れが同時に進んだ。診療報酬・薬価改定の影響、後発品の供給・仕入条件の厳格化、人件費上昇といった逆風が中小運営に重くのしかかり、業界全体の「規模の経済」志向と寡占化をいっそう押し上げた半期だった。
象徴的なのが、スギホールディングスによるI&H(阪神調剤グループ)の完全子会社化が9月2日に完了したことだ。これにより、ドラッグストア大手と調剤専業大手の“複合体”が生まれ、道内から九州まで2,100超のDS・調剤拠点を束ねる体制が明確化。翌年以降の組織再編・統合作業(I&H側の子会社整理やグループ内合併)も動き出しており、スケール活用と専門性の垂直連携が本格化する。(阪神調剤, Sugi HD)
「救済型」の代表例は、会社更生手続きに入っていた寛一商店グループ(「なぎさ薬局」など)からの事業譲受だ。ファーマライズHDは9月24日に、同グループの調剤54店舗を総額31億円で取得する方針を公表。取得予定日は12月1日で、その後の受け皿会社(next PH)への組織移管計画も開示された。需要はあるが収益構造が脆弱な地域薬局網を、上場チェーンのオペレーションに載せ替える典型的なディールであり、ドミナントの増強と仕入・システム統合による効率化が狙いだ。(M&A Online, dgs-on-line.com, finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp)
一方、エンタメ企業の新規参入という異色案件も話題を呼んだ。9月4日、Xriseが「キラリ薬局」を運営するKIRARI Pharmacy(東京・神奈川で8店舗)を子会社化。異業種からのヘルスケア参入は珍しくないが、店舗運営・薬機規制・人材確保など“薬局ならでは”の経営要諦を、どこまで外部資本の機動力で補完できるかが注目点となる。(プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES, インテグループ)
地域連携の強化という文脈では、メディカル一光グループが三重県薬剤師会から薬局2店舗の事業譲受を10月1日に実行。公的色の強い主体から民間オペレーターへの承継は、地域医療提供体制を絶やさない“公助×民間”の役割分担を示すケースといえる。(株式会社メディカル一光グループ)
また、上期発表のクロージングが下期に実行された例として、クオールHDが関東の行徳ファーマシー(6店)とボトムハート(2店)の株式譲渡を7月2日に完了。首都圏の既存ドミナント深耕と在宅・長時間開局体制の補強という、同社の地上戦を象徴する“ピンポイント拡大型”の買収だった。(M&Aキャピタルパートナーズ)
ドラッグストア×調剤の垂直統合の加速も、再編の下地を厚くする。ウエルシアHDは長野地場の「とをしや薬局」を6月に子会社化し、9月1日にウエルシア薬局へ吸収合併。仕入・基幹システムの統一を梃子に地域密着の調剤ネットワークを再編する動きで、上場ドラッグストア各社が“調剤の厚み”を増す流れを裏付けた。(welcia.co.jp)
下期末の12月には、総合メディカルが広島地盤のライフアート(62店舗)を子会社化。医療モール開発を得意とする同社グループの中四国ドミナント強化に直結する大型案件で、同時に後発品卸の機能取り込み(サンクスネットの後発品卸を吸収分割で承継)も発表された。調剤×医薬品流通の一体運用で収益源を多層化する動きが鮮明だ。(sogo-medical-gp.co.jp)
総じて、2024年下半期のM&Aは「量×質」の二面で進んだ。量の面では、破綻チェーンの広域束ね替えや、県域・市域ドミナントの“穴埋め”型取得が増加。質の面では、①データ・デジタル接点を活かした遠隔指導や配送といったモデルへの適応、②後発品卸など周辺機能の取り込み、③ドラッグストアとの垂直統合深化、が各社のディール選好に影響した。これらはすべて、報酬改定や薬価・人件費上昇で圧縮したマージンを、スケールと機能統合で取り戻すための“構造対応”である。
2025年に向けては、(1)大型グループ内のPMI進捗(スギHD×I&H等)、(2)救済型譲受の運営安定化と既存網への編入効果(ファーマライズHD×寛一商店G)、(3)地域密着チェーンの承継・統合(総合メディカル×ライフアート)の成果が、収益・人員配置・在宅対応力の指標にどう現れるかが焦点となる。下半期に形づくられた“次の当たり前”を、各社がどこまで収益モデルに落とし込めるか。再編は、まだ道半ばだ。
※主要出典:I&HのスギHDグループ入り(9/2完了)とその後の統合方針、ファーマライズHDによる寛一商店Gの事業譲受(54店舗・取得予定12/1)、XriseのKIRARI Pharmacy子会社化(9/4)、メディカル一光Gによる三重県薬剤師会の薬局譲受(10/1実行)、ウエルシア薬局による「とをしや薬局」吸収合併(9/1効力)、総合メディカルのライフアート子会社化(12/17)。(阪神調剤, Sugi HD, M&A Online, dgs-on-line.com, finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp, プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES, インテグループ, 株式会社メディカル一光グループ, welcia.co.jp, sogo-medical-gp.co.jp)
(ご要望があれば、上記案件の“地域別・店舗数別”マップや、プレーヤー別の買収類型一覧も作成できます。)
以下は、2024年下半期(7〜12月)の国内「調剤薬局」業界における主なM&A関連トピックを俯瞰しながら、再編の軸と背景を整理した約2000字の記事です。
2024年下半期の調剤薬局M&A総括──大型クロージングと“救済型”譲受が同時進行
2024年下半期の調剤薬局業界は、①上期に発表済みの大型案件のクロージング、②経営再建局面にあるチェーンの“救済型”譲受、③地域密着チェーンの取り込み、という三つの流れが同時に進んだ。診療報酬・薬価改定の影響、後発品の供給・仕入条件の厳格化、人件費上昇といった逆風が中小運営に重くのしかかり、業界全体の「規模の経済」志向と寡占化をいっそう押し上げた半期だった。
象徴的なのが、スギホールディングスによるI&H(阪神調剤グループ)の完全子会社化が9月2日に完了したことだ。これにより、ドラッグストア大手と調剤専業大手の“複合体”が生まれ、道内から九州まで2,100超のDS・調剤拠点を束ねる体制が明確化。翌年以降の組織再編・統合作業(I&H側の子会社整理やグループ内合併)も動き出しており、スケール活用と専門性の垂直連携が本格化する。(阪神調剤, Sugi HD)
「救済型」の代表例は、会社更生手続きに入っていた寛一商店グループ(「なぎさ薬局」など)からの事業譲受だ。ファーマライズHDは9月24日に、同グループの調剤54店舗を総額31億円で取得する方針を公表。取得予定日は12月1日で、その後の受け皿会社(next PH)への組織移管計画も開示された。需要はあるが収益構造が脆弱な地域薬局網を、上場チェーンのオペレーションに載せ替える典型的なディールであり、ドミナントの増強と仕入・システム統合による効率化が狙いだ。(M&A Online, dgs-on-line.com, finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp)
一方、エンタメ企業の新規参入という異色案件も話題を呼んだ。9月4日、Xriseが「キラリ薬局」を運営するKIRARI Pharmacy(東京・神奈川で8店舗)を子会社化。異業種からのヘルスケア参入は珍しくないが、店舗運営・薬機規制・人材確保など“薬局ならでは”の経営要諦を、どこまで外部資本の機動力で補完できるかが注目点となる。(プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES, インテグループ)
地域連携の強化という文脈では、メディカル一光グループが三重県薬剤師会から薬局2店舗の事業譲受を10月1日に実行。公的色の強い主体から民間オペレーターへの承継は、地域医療提供体制を絶やさない“公助×民間”の役割分担を示すケースといえる。(株式会社メディカル一光グループ)
また、上期発表のクロージングが下期に実行された例として、クオールHDが関東の行徳ファーマシー(6店)とボトムハート(2店)の株式譲渡を7月2日に完了。首都圏の既存ドミナント深耕と在宅・長時間開局体制の補強という、同社の地上戦を象徴する“ピンポイント拡大型”の買収だった。(M&Aキャピタルパートナーズ)
ドラッグストア×調剤の垂直統合の加速も、再編の下地を厚くする。ウエルシアHDは長野地場の「とをしや薬局」を6月に子会社化し、9月1日にウエルシア薬局へ吸収合併。仕入・基幹システムの統一を梃子に地域密着の調剤ネットワークを再編する動きで、上場ドラッグストア各社が“調剤の厚み”を増す流れを裏付けた。(welcia.co.jp)
下期末の12月には、総合メディカルが広島地盤のライフアート(62店舗)を子会社化。医療モール開発を得意とする同社グループの中四国ドミナント強化に直結する大型案件で、同時に後発品卸の機能取り込み(サンクスネットの後発品卸を吸収分割で承継)も発表された。調剤×医薬品流通の一体運用で収益源を多層化する動きが鮮明だ。(sogo-medical-gp.co.jp)
総じて、2024年下半期のM&Aは「量×質」の二面で進んだ。量の面では、破綻チェーンの広域束ね替えや、県域・市域ドミナントの“穴埋め”型取得が増加。質の面では、①データ・デジタル接点を活かした遠隔指導や配送といったモデルへの適応、②後発品卸など周辺機能の取り込み、③ドラッグストアとの垂直統合深化、が各社のディール選好に影響した。これらはすべて、報酬改定や薬価・人件費上昇で圧縮したマージンを、スケールと機能統合で取り戻すための“構造対応”である。
2025年に向けては、(1)大型グループ内のPMI進捗(スギHD×I&H等)、(2)救済型譲受の運営安定化と既存網への編入効果(ファーマライズHD×寛一商店G)、(3)地域密着チェーンの承継・統合(総合メディカル×ライフアート)の成果が、収益・人員配置・在宅対応力の指標にどう現れるかが焦点となる。下半期に形づくられた“次の当たり前”を、各社がどこまで収益モデルに落とし込めるか。再編は、まだ道半ばだ。
※主要出典:I&HのスギHDグループ入り(9/2完了)とその後の統合方針、ファーマライズHDによる寛一商店Gの事業譲受(54店舗・取得予定12/1)、XriseのKIRARI Pharmacy子会社化(9/4)、メディカル一光Gによる三重県薬剤師会の薬局譲受(10/1実行)、ウエルシア薬局による「とをしや薬局」吸収合併(9/1効力)、総合メディカルのライフアート子会社化(12/17)。(阪神調剤, Sugi HD, M&A Online, dgs-on-line.com, finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp, プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES, インテグループ, 株式会社メディカル一光グループ, welcia.co.jp, sogo-medical-gp.co.jp)