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2023年下半期・調剤薬局業界M&A総括

寛一商店 テーオー ケアサービス事業譲渡のアイキャッチ

2023年下半期(7~12月)は、「地域ドミナントの深掘り」「周辺機能の取り込み(DX/オンライン)」「資本提携での布石づくり」**という3つの潮流が鮮明でした。個別ディールの件数自体はローカル中小の案件が中心でしたが、上場大手の動きが方向性を示した期でもあります。以下、主要トピックを俯瞰します。

1) クオールHD:九州での連続買収で面展開を強化
11月、鹿児島の調剤薬局3社(アート、エイエムメディカル、はらいがわ調剤薬局)を一括グループ化。中期目標(連結売上高3,000億円・営業利益250億円)に沿った、M&Aドリブンのドミナント深化です。翌12月にも鹿児島の別企業取得を発表しており、九州での基盤固めを加速。地場のかかりつけ機能や在宅対応力を束ね、広域での運営効率を高める狙いが読み取れます。(Yahoo!ファイナンス, QOLHD, 日本M&Aセンター)

2) メディカルシステムネットワーク(なの花薬局):合弁解消→完全子会社化&デジタル機能の取り込み
11月、オプト(現リテイギ)との合弁会社ファーマシフトを完全子会社化し、同時にLINE公式「つながる薬局」事業を取得。電子処方箋やオンライン服薬指導の普及を見据え、デジタル接点を自社に内包することで、処方前後のコミュニケーションや受診前誘導までを一気通貫化する布陣です。導入店舗4,300超・友だち登録87万人(23年10月末)の資産を取り込み、患者接点DXを加速させました。(Yahoo!ファイナンス, M&A Online, メディカルシステムネットワーク)

3) スズケン × ファーマライズHD:卸×薬局の資本業務提携
11月、医薬品卸大手スズケンがファーマライズHDに資本参加。卸×薬局の結び目を強め、在庫・物流・データ連携や新規サービス開発を共同で推進する布石です。薬価・報酬改定で収益性が揺れる中、上流(卸)と下流(薬局)の機能連結でバリューチェーンの摩擦を減らし、コスト・在庫の最適化や需要予測の高度化に踏み込む狙いといえます。(バフェットコードアーカイブ, aspirantgroup.jp, suzuken.co.jp, pharmarise.com)

4) ツルハHD:グループ内再編でスケールメリットを最大化
12月、連結子会社B&Dをツルハ本体に吸収合併。中部エリアの店舗網(ドラッグ+調剤)を中核会社に統合し、商品・人材・バックオフィスの共通化を一段と進める再編です。処方箋の取り込みやOTC/物販とのクロスセル、在庫最適化などの運営効率を高め、EBITDA創出力を底上げする狙いが見えます。(株式会社ツルハホールディングス, 株式会社ツルハホールディングス)

5) アイセイ薬局:オンライン漢方事業を譲受し「店舗外」を拡張
12月、オンライン漢方相談『わたし漢方』の事業を譲受。店舗外の継続課金モデルや薬剤師の新しい働き方(遠隔カウンセリング)の確立に向け、デジタルD2Cの実装を進めました。対面起点のチェーンが非来店需要を取りに行く動きとして象徴的です。(aisei.co.jp, プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES)


3つの示唆(下期の動きから)

  • 地域ドミナントの深化:クオールの連続買収のように、**“点の買収”から“面の最適化”**へ。面での在宅対応や人員融通、薬剤在庫の共同化でスケールメリットを出す段階に。(Yahoo!ファイナンス)
  • デジタル接点の内製化:メディカルシステムネットワークの事業取得に象徴されるように、処方前後の患者接点(送信・相談・予約・決済)を自社に抱え込み、来店フローを自前で設計する発想が拡大。(M&A Online)
  • 資本提携の布石:スズケン×ファーマライズHDのような川上×川下の連携は、価格・物流・情報の“摩擦”を減らし、薬局の営業利益の安定化に効く。卸主導のデータ/物流インフラと薬局の患者接点の連携強化は、今後の標準形に。(バフェットコードアーカイブ)

今後の見通し(24年以降への橋渡し)

24~25年にかけては、

  • M&A×DXの複合投資(店舗取得+デジタル接点の拡張)、
  • 在宅・専門外来・地域連携薬局の機能強化、
  • 卸・メーカー・ITとの提携による共同購買/共同物流・需要予測の高度化、
    が加速。単店の“処方箋枚数依存”から、チェーンとしての“接点・供給・データ”の統合運用へと軸足が移るでしょう。(QOLHD)

主要トピックのIRリンク(企業五十音順)

参考:上記のほか、クオールHDの12月の追加買収(鹿児島の別企業)や、下期の**地域案件(未上場間取引)**も散見されましたが、適時開示/IRで裏付け可能なものを中心に整理しています。(日本M&Aセンター)


まとめ
2023年下半期は、“店舗を増やす”だけでなく“患者接点と供給網を握る”方向へ舵が切られた期でした。M&Aは面の最適化デジタル内製化の文脈で語られ、加えて資本提携がバリューチェーンの摩擦を減らす有効手段として浮上。24年以降の再編は、店舗×DX×サプライチェーンの三位一体が主戦場になると見ます。(M&A Online, バフェットコードアーカイブ, Yahoo!ファイナンス)

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