アメリカの薬局経営とPBM

未分類




こんにちは!今回の記事ではアメリカの薬局経営の現状をご紹介します。日本の薬局経営は現在、大きな転換期を迎えているのは異論のないところかと思いますが、では明確な方向性をもって転換しているかと言えば、少なくとも薬局経営者は右往左往するだけで向かっている方向はそろっていません。今回の記事ではそんな薬局経営者に向けて、指針となるアメリカの薬局経営の現状を整理し、関連する論文を列記、さらには注目すべき仕組みとしてPBMを深堀します。最後には日本版PBMの可能性まで、AIを利用して記述しました。

アメリカの薬局経営に関する最新の研究と実務動向を分析したところ、以下のような重要なポイントが明らかになりました。


Contents

🧾【概要】アメリカの薬局経営の主要テーマ

アメリカの薬局経営は現在、大きく3つの柱で展開されています:

  1. 薬局利益管理(PBM: Pharmacy Benefit Managers)
    保険給付との関係や価格交渉力が議論の的になっており、PBMの透明性と規制強化が求められています。
  2. 地域医療と薬剤師の役割拡大
    特に地方部や退役軍人病院では、薬剤師が慢性疾患管理、ワクチン接種、遠隔医療での服薬指導に重要な役割を果たしています。
  3. 起業的・サービス指向の拡張戦略
    「請求可能なサービス(Billable Pharmacy Services)」やテレファーマシーなど、臨床サービス提供型のビジネスモデルが急成長しています。

📚【主要研究と論文一覧】

1. Bridging the Distance: Entrepreneurial Models for Expanding Clinical Pharmacy Services in Rural America

Gettman, D. (2025)
遠隔地域での臨床薬局サービス提供モデルの革新例。
📄PDFリンク


2. The Role of PBMs in the US Healthcare System

Levine, E. et al. (2025)
PBMの役割と市場支配、薬局への影響を論じるホワイトペーパー。
📄PDFリンク


3. Independent Community Pharmacies and Public Health Preparedness

Yassanye, D. et al. (2025)
地域薬局の公衆衛生対応(COVID-19や災害時)と連携構造の構築。
🔗論文リンク


4. Practice of Billable Pharmacy Service Programs and Billing in the United States

Lirong, Y. et al. (2025)
請求可能な臨床サービス(例:MTM)の制度と収益化の事例。
🔗論文リンク


5. Pharmacists’ Contributions to the Management of Opioid Use Disorder

Stranges, P. et al. (2025)
薬物依存症対策における薬剤師の役割強化と制約。
🔗論文リンク


6. A Telehealth Collaboration Between a VA System and Pharmacy School

Carr-Lopez, SM. et al. (2025)
退役軍人医療機関との連携による遠隔臨床薬剤サービスの展開。
📄PDFリンク


7. Strategies to Eliminate Counterfeit Medications in the Pharmaceutical Supply Chain

Mosby, CE. (2025)
偽薬排除に向けた薬剤師の現場対応とサプライチェーン安全保障。
🔗論文リンク


8. Pharmacy Practice and First Peoples Health Equity: A Scoping Review

Carlisle, K. et al. (2025)
アメリカ先住民地域における薬剤アクセス格差と薬局の役割。
🔗論文リンク


9. Evaluating Impact of Second-Level Observation Units with Pharmacists

Sunkara, P. et al. (2025)
多職種連携(薬剤師・看護師含む)による観察ユニットの運用改善事例。
🔗PubMedリンク


10. Applications of AI and Telepharmacy Trends in the US

Sulistyaningrum, IH. et al. (2025)
アメリカを含む主要国でのAI/遠隔薬局の活用分析。
📄PDFリンク


✅【まとめ】

アメリカの薬局経営は今、ビジネスと公衆衛生、テクノロジーの統合を中心に急速に進化しています。保険制度との関係やPBMによる薬価支配の問題、公衆衛生との連携、さらに薬剤師の専門性を活かした収益化が重要な論点となっています。


ここから更にPBMによる薬価支配について深堀りしてみましょう。
PBM(Pharmacy Benefit Manager)による薬価支配について、わかりやすく整理して解説します。


🌐 PBMとは?

PBM(Pharmacy Benefit Manager)は、薬局給付管理会社とも訳され、アメリカの医療保険制度で処方薬の調達・価格交渉・給付運営を一手に担う巨大事業者です。

PBMは保険者(健康保険組合、メディケアなど)や雇用主の代わりに、

  • 薬剤の価格交渉(製薬会社と値引き交渉)
  • 薬局ネットワークの構築
  • 処方審査や給付ルールの設計
  • 患者自己負担額の決定
  • リベート(値引き・販売奨励金)の管理
    を行います。

アメリカでは、**3大PBM(CVS Caremark, Express Scripts, OptumRx)**が市場の約75%を支配しています。


🧭 「薬価支配」とは?

PBMが薬価を支配する仕組みは、以下のステップで成り立っています。

🔹1) フォーミュラリ(Formulary)の操作

フォーミュラリは「保険がカバーする薬剤リスト」です。
PBMはこのリストを決める強力な権限を持ちます。

  • 製薬会社は、自社の薬を「優遇カテゴリー」に入れてもらうため、PBMに値引き交渉をします。
  • PBMは「どの薬を推奨するか」「どれを排除するか」を自由に設定できます。

結果として、特定の薬が市場シェアをほぼ独占する場合があり、他薬の選択肢が事実上排除されることもあります。


🔹2) リベート(値引き返戻)の取得と非開示

PBMは製薬会社から「リベート」を受け取ります。
これは「フォーミュラリで優遇する代わりの見返り」です。

ただし、リベートの大部分は保険者や患者に還元されず、PBMの収益になります。
実勢の仕切価格(Net price)は不透明で、

  • 患者負担は公表上の高額な「リスト価格」を基準に計算される。
  • リベート額は非公開で、PBMが一部を利益にする。

これにより、

  • 薬の公表価格が高騰する一因となる。
  • 医療費の透明性が失われる。

🔹3) スプレッド・プライシング(Spread Pricing)

PBMは薬局に支払う価格と、保険者に請求する価格の差(スプレッド)を設けます。

  • 例えば:薬局に1錠100ドル支払い、保険者に150ドル請求
  • 差額50ドルがPBMの利益

このスプレッドは契約上隠される場合が多く、薬局も保険者も詳細を把握できません。


⚠️ PBMによる薬価支配の問題点

  1. 薬価の上昇圧力
    リベート競争のため、公表価格(リストプライス)が年々高くなる。
  2. 患者負担増
    多くの保険プランではリスト価格をもとに自己負担を計算するため、リベートは患者に反映されない。
  3. 薬局経営圧迫
    スプレッドプライシングにより小規模薬局のマージンが圧縮される。
  4. 市場競争の歪み
    リベート優遇による事実上の独占が生じる。

📈 最近の改革動向

この問題に対し、アメリカでは以下の動きがあります。
リベート透明化法案(透明性強化)
リベート禁止・直接値引き制度(Medicare/Medicaid改革案)
スプレッドプライシング禁止(オハイオ州など複数州で導入)


🔗 参考


さらに日本版PBMの可能性はどうでしょうか。
日本版PBM(Pharmacy Benefit Manager)の可能性と、候補になりうる企業・組織について、整理して詳しく解説します。


🌏 日本でPBMモデルを導入する意義

アメリカのPBMは主に「薬剤給付を契約・一括管理し、薬価交渉を行う巨大中間事業者」です。
日本にはまだ同等のビジネスモデルは存在しませんが、以下の背景から将来的に日本版PBMが台頭する可能性が高いと考えられます。


🇯🇵 導入の背景・ニーズ

✅ 高齢化と医療費の急増
→ 薬剤費抑制と効率的給付管理が国策的に重要
✅ 医薬品流通・処方のデジタル化進展
→ 電子処方箋、オンライン診療の普及
✅ 調剤薬局の経営環境厳格化
→ 調剤報酬改定で収益源が減少
✅ 製薬会社・保険者のコスト最適化ニーズ
→ 医療費透明化とリスクシェアモデルへの移行


🧭 日本版PBMに求められる機能

  1. フォーミュラリ管理
    • 医療保険組合・企業健保の薬剤選定支援
    • コストと治療効果を加味した推奨薬リスト運用
  2. リベート交渉・調達代行
    • 製薬企業との一括価格交渉
  3. 服薬アドヒアランス支援
    • 適正使用促進(ポリファーマシー対策)
  4. データ解析とレポーティング
    • 処方パターンやコストのモニタリング
  5. アウトカム保証(Value-Based Contracting)
    • 治療成績に応じた薬剤費調整

💼 日本で候補になりうる企業・組織

以下は、PBM機能の一部を担えるポテンシャルが高い領域とその企業例です。


1️⃣ 医療保険システム・大手保険者との連携企業

候補例:

  • 日本生命保険、第一生命
    大規模健康保険組合を持つ。データ連携・疾病管理支援の経験あり。
  • 健康保険組合連合会(健保連)
    組織横断型の薬剤費管理プロジェクトを推進可能。

2️⃣ 調剤チェーン・薬剤師ネットワーク

候補例:

  • アインホールディングス
    国内最大級の調剤薬局ネットワークとIT基盤を保有。
  • メディカルシステムネットワーク
    直営調剤薬局のほかに国内最大の価格交渉ネットワークを保有。日本版PBMを強く意識したビジネスモデル。
  • 日本調剤
    電子処方箋対応・医薬品流通網を持つ。

これら企業がフォーミュラリ運用・服薬指導に特化するPBMモデルを構築する可能性があります。


3️⃣ 製薬業界のデータベンダー・IT企業

候補例:

  • JMDC
    レセプトデータ解析のリーディングカンパニー。
  • メドレー
    クラウド型診療支援、オンライン服薬指導の強化を進める。
  • M3(エムスリー)
    医療ビッグデータを活用した最適化支援の豊富な実績。

4️⃣ 医薬品卸・流通業

候補例:

  • メディパルホールディングス
  • スズケン
  • アルフレッサ

卸売機能と薬局支援システムを統合し、「購買支援+薬価交渉+フォーミュラリ」を担うPBM的役割を検討する余地があります。


5️⃣ 保険×医療IT連携プラットフォーム

候補例:

  • SOMPOホールディングス
    介護・健康管理サービスと保険を融合する戦略。
  • オリックス
    ヘルスケアデータ事業を拡充中。

🧠 導入における課題

  1. 公的医療保険中心の制度
    民間PBMが交渉権を持つ余地は限定的。
  2. リベート透明化の法的規制
    アメリカのようなリベート文化は馴染みにくい。
  3. フォーミュラリの導入ハードル
    医師の裁量を制限することへの反発。
  4. 患者の自己負担割合の低さ
    民間薬価交渉のインセンティブが薄い。

🔮 将来像

日本で「完全アメリカ型PBM」を移植するのは難しいですが、

  • 企業健保・大規模保険者向けコンサル型PBM(薬剤費抑制提案)
  • クラウド服薬指導×フォーミュラリ支援
  • データ分析×アウトカム保証契約

などのハイブリッドモデルが拡大すると予測されています。