薬局は地域密着といわれるように、立地するエリアによってその特徴が異なります。今回は東北地方の比較になります。
東北地方(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)の薬局には、地域性や社会的背景に基づくいくつかの特徴があります。以下に主な特徴をまとめます:
Contents
① 地域密着型・個人経営薬局が多い
- 東北は人口密度が低く高齢化率が高い地域が多く、地元密着で信頼関係を築いてきた個人薬局・中小薬局が数多く存在します。
- 地元住民と長年のつながりがあり、「かかりつけ薬局」としての機能が強い傾向があります。
② 在宅医療・訪問薬剤管理の需要が高い
- 東北地方は過疎地・山間部が多く、通院困難な高齢者が多いため、薬剤師による在宅訪問サービスが積極的に行われています。
- 特に福島・岩手・秋田では訪問服薬指導や**多職種連携(医師・看護師・ケアマネなど)**が重要な業務の一部となっています。
③ 大型ドラッグストアの進出が加速
- 宮城や福島など都市部ではツルハドラッグ、マツモトキヨシ、カワチ薬品など大手チェーンが出店を拡大。
- 調剤併設型ドラッグストアも増え、調剤薬局の競争環境は激化しています。
④ 災害対応力の強化(東日本大震災の教訓)
- 東日本大震災の影響を強く受けた地域(宮城・福島・岩手)では、BCP(事業継続計画)や災害時医薬品供給体制への意識が高く、薬剤師会や自治体と連携した訓練も実施。
- 一部薬局では自家発電機やモバイル薬歴端末などを整備しています。
⑤ 医師不足エリアにおける薬剤師の役割拡大
- 医師が常駐していない診療所やへき地では、薬剤師が健康相談や服薬指導を通じたプライマリケアを担うケースも。
- OTC薬の販売やセルフメディケーション支援が活発な薬局も増加。
⑥ 地域医療連携に力を入れる傾向
- 山形や福島では、地域包括ケアシステムの一員として薬局が組み込まれており、病院・介護施設・自治体との連携が進んでいます。
- 薬局薬剤師が地域ケア会議や退院時カンファレンスに参加する例も増えています。
⑦ 薬剤師の人材不足
- 都市部(仙台など)を除いて、薬剤師の人材確保が困難である地域も多く、特に冬季の勤務や交通インフラの制約から就労を敬遠されやすい。
- 結果として、地方自治体や薬局が住宅補助や短期就労制度などを導入して薬剤師を誘致する取り組みも見られます。
以下に、東北6県(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)における主な薬局企業とその特徴・店舗展開などを県別に整理してご紹介します。
🟦【青森県】
有力薬局企業:
- ハッピードラッグ(株式会社丸大サクラヰ薬局)
- 青森県を中心に70店舗以上展開
- 調剤併設型ドラッグストアを運営
- 津軽・南部の両地域にバランスよく店舗がある
- 青森薬局グループ
- 地元の調剤薬局中心のグループ
- 病院門前型が多く、在宅医療にも注力
特徴:
- 地域密着・高齢者向けの対応が中心
- 大手チェーンが少ない分、地場薬局が根強い
🟩【岩手県】
有力薬局企業:
- 株式会社アイリスファーマ
- 盛岡市を中心に岩手・宮城に約30店舗
- 調剤を主体としつつ、OTC販売も強化
- 多職種連携による在宅支援に力
- みやぎ調剤薬局(岩手にも展開)
- 盛岡・花巻・北上などの中核都市に進出
- 地域包括ケア連携が進んでいる
特徴:
- 人口が分散しており、「1人薬剤師」薬局が多い
- 訪問服薬、災害時対応、車両での配薬など柔軟な対応
🟦【宮城県】
有力薬局企業:
- アイリス薬局グループ
- 宮城県内に10店舗以上、仙台市中心部に強い
- 医療モール型やマンション下のテナント型が主流
- メディカルカンパニー(たんぽぽ薬局)
- 調剤中心、地域連携・在宅支援が充実
- 多職種との情報共有にICTを活用
- ツルハドラッグ(北海道発)
- 宮城県に100店舗以上の圧倒的展開
- 調剤併設型が都市部中心に増加中
特徴:
- 東北最大の都市「仙台市」を中心に都市型調剤薬局と郊外型ドラッグストアの両方が共存
- 新規開業も活発
🟧【秋田県】
有力薬局企業:
- 株式会社わかば(わかば薬局)
- 秋田県に20店舗以上
- 病院門前型中心・在宅支援も展開
- すずらん薬局
- 秋田市・由利本荘など中都市に多く出店
- 小規模・高齢者対応重視
特徴:
- 人口減少・高齢化進行により「在宅」「かかりつけ薬局」ニーズが非常に高い
- 降雪地域に対応した配達・訪問サービスが整備されている
🟪【山形県】
有力薬局企業:
- やまがた薬局
- 山形市・天童市・寒河江市を中心に多店舗展開
- 医師会・介護施設との連携が強い
- エムズ薬局(株式会社エムズ)
- 山形市・鶴岡市・新庄市などで運営
- 無菌調剤室完備、在宅支援に特化
特徴:
- 小規模な調剤薬局が多く**「薬局間連携(広域ネットワーク)」**が進んでいる
- 農村部でのモバイル薬局や地域包括支援センターとの連携も盛ん
🟥【福島県】
有力薬局企業:
- グリーン調剤薬局(株式会社グリーンメディカル)
- 郡山・福島・会津などに多店舗展開
- 在宅対応・無菌調剤・ICT導入に積極的
- 福島調剤薬局
- 原発事故後の医療支援活動でも注目された地元密着型企業
- 災害BCP・多職種連携が先進的
- マツモトキヨシ(全国大手)
- 調剤併設店を郡山市・いわき市中心に展開中
特徴:
- 震災・原発事故の影響からBCPや災害対応意識が非常に高い
- 都市部(郡山・いわき)ではドラッグストア型薬局が急増、一方で過疎地では人材確保が深刻
まとめ:東北6県の薬局業態比較
県名 | 主な薬局形態 | 主な企業 | 特徴 |
---|---|---|---|
青森 | 調剤+地域密着 | ハッピードラッグ | 個人薬局が根強い |
岩手 | 調剤中心+在宅 | アイリスファーマ | 医師不足地域多く在宅ニーズ高 |
宮城 | 都市型調剤+DS | アイリス薬局、ツルハ | 競争激化、都市集中 |
秋田 | 調剤中心+訪問 | わかば薬局 | 高齢者・降雪地対応 |
山形 | 調剤中心+地域連携 | やまがた薬局 | 医療連携・小規模ネットワーク |
福島 | 調剤・BCP重視 | グリーン調剤、福島調剤薬局 | 災害対応・在宅医療に強み |