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はじめに
薬局経営において、ITシステムや電子薬歴は業務の中枢を担う存在です。
患者情報の管理、調剤業務の効率化、監査対応など、薬局の信頼性を支える基盤でもあります。
薬局を売却する際、このシステムの引継ぎをどう行うかは、買い手にとっても極めて重要なテーマです。
本記事では、薬局売却におけるITシステム・電子薬歴の承継ポイントと、トラブルを防ぐための実務対応を解説します。
皆さん、こんにちは。YAKUDACHI鈴木です。
今回は薬局M&AにおけるIT対応、電子薬歴につきお届けします。
多くのM&Aでは買い手は大手になります。
自社レセコン、ITシステムを構築している大手は多く、M&Aでは自動的にシステム統合となります。
従業員の方にとっては、いきなり聞かされた買収騒動で、レセコン変更が告げられる。まさに寝耳に水となります。
薬局ITシステムの主な種類

- 電子薬歴システム
- 患者の処方情報・服薬指導記録を管理
- 法令で保存義務があるため、承継は必須
- レセプトコンピュータ(レセコン)
- 調剤報酬請求を行う基幹システム
- 薬歴システムと連携しているケースが多い
- 在庫管理システム
- 医薬品在庫の発注・使用を管理
- 自動発注や期限管理機能を備える場合も
- 本部連携システム
- 複数店舗を展開している場合に本部と情報共有
電子薬歴のデータ連携は比較的スムーズに行くことが多いです。
NSIPSという医療連携のためのデータ形式が広く採用されているため、該当データは他社薬歴ともすぐに共有できます。
トラブルが多いのは本部連携システムでしょう。
本部連携システムは、大手各社がバラバラにシステムベンダーに発注して作った、かなり大規模なシステムになります。各社独自性が強く、他社レセコンとの相性は勘案されていません。
また、操作する薬局スタッフにとっても負担が大きいです。
一般に中小企業が経営していた薬局では、本部システムが導入されておらず、その業務に慣れていないどころか、何をやらされているのか理解できません。
PMIでいつからシステム連携を導入するか、よく検討する必要があります。
薬局売却時に確認すべきポイント

- システムの契約形態
- 自社ライセンスか、リース・クラウド型か
- 契約名義を買い手に変更できるか
- ベンダーとの契約条件
- サポート契約の内容
- 契約期間の残存有無、解約時の違約金
- データ移行の可否
- 電子薬歴データを新システムに移行可能か
- データフォーマットや互換性を確認する必要あり
システムの話に付随して、M&A前後のリース契約承継があります。
多くのシステムはハードをリース契約しているため、M&A後も継続してそのシステムを利用するためにはリース契約の引継ぎが必要になります。
ただし、リース会社によっては引継ぎを拒否するケースもあり、その場合にはリース残債の一括償還で対応することになります。
ベンダーがサポート契約の継続を拒否する事例は聞いたことがありません。
電子薬歴引継ぎの実務

- 個人情報保護対応
- 個人情報保護法に基づき、患者情報は適切に承継する必要あり
- 売却契約書に「患者情報の適切な管理・承継」を明記することが望ましい
- データ移行の流れ
- 現行システムからバックアップ取得
- ベンダーの協力を得て移行作業を実施
- 移行後、テスト運用を行いデータの欠損がないか確認
- 患者説明の必要性
- 原則として患者個人に個別同意を得る必要はないが、プライバシーポリシーでの告知は望ましい
個人情報保護法の観点から、患者データを法人間で引き継ぐことは困難に思えます。ただし、監督官庁の厚生省は事業譲渡の際に(具体的には遡及申請の要件として)患者データの引継ぎをむしろ求めており、医療機関である薬局においては個人情報保護よりも、適切な医療提供体制の維持の方が優先されていることがうかがえます。
買い手企業が重視する視点

- システムの汎用性
→ 自社の既存システムに統合できるか - 契約の柔軟性
→ 名義変更や解約の容易さ - データの正確性
→ 薬歴やレセプトデータに欠損や不整合がないか
👉 特に大手チェーンは自社システムへの統合を前提とすることが多く、データ移行がスムーズに進むかが重要です。
成功事例と失敗事例

成功事例
東海地方のA薬局は、売却前にシステムベンダーと調整し、データ移行計画を事前に作成。
買い手企業のシステムへ短期間で移行が完了し、開局業務への影響が最小限で済んだ。
失敗事例
九州のB薬局は、システム契約が個人名義で整理されておらず、買い手への承継に時間を要した。
さらに電子薬歴データの一部が移行できず、患者対応に支障をきたした。
実務でのチェックリスト

- 使用中のシステムの契約内容を整理したか
- 契約が法人名義か個人名義かを確認したか
- ベンダーに承継可否を確認したか
- データ移行計画を事前に作成したか
- 個人情報保護の観点で告知や対応を検討したか
まとめ

薬局売却において、ITシステム・電子薬歴の承継は業務継続に直結する極めて重要な要素です。
- システム契約内容を整理し、承継の可否を確認する
- データ移行計画を事前に作成する
- 個人情報保護の観点からも適切に対応する
いかがでしたでしょうか。
システム継続もしくはデータ連携は、事業を継続していく上で必須になります。
M&Aでは価格条件が優先され、検討が遅れがちですが、現場スタッフにとってスムーズな承継とするためにはシステムの取扱いは大切にしましょう。
次回は「薬局売却と地域医師会・薬剤師会との関係|信頼を守り承継を成功させる方法」をお届けします。
まぁ、一部企業が買い手の場合には関係のない話題ですが・・・