薬局売却と競業避止義務|売却後に注意すべき制約と実務対応

薬局売却と競業避止義務 薬局 M&A

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はじめに

薬局を売却する際に多くの経営者が見落としがちなのが「競業避止義務」です。
M&A契約の中では、売却後に売り手が同一地域や同業で新たに薬局を開設することを制限する条項が設けられることが一般的です。

これは買い手企業にとって、せっかく譲り受けた薬局の顧客や地域基盤を守るための重要な取り決めですが、売り手にとっては今後のキャリアやビジネス活動に影響を与える可能性があります。

本記事では、薬局売却における競業避止義務の内容や有効範囲、実務での注意点について解説します。

皆さん、こんにちは。YAKUDACHI鈴木です。
今回は薬局のM&A契約における競業避止義務についてです。
あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、ほぼすべてのM&Aに関する契約ではこの競業避止義務が規定されています。(主に売り手の義務)
契約書の中ではふんわり「競業避止義務を負う」とだけ書いてあったり「○○医院の処方箋を応需する薬局」とまで限定していたりします。
義務の範囲が限定されている場合は、文字通りなので迷いませんが、ふんわり規定されているときは注意が必要になります。
特に、売り手が商号を継続する場合などは、買い手にとって競合ととられかねないので、競業の範囲についてはしっかり合意しましょう。


競業避止義務とは

  • M&A契約において、売却後に売り手が同業で事業を行うことを制限する条項
  • 主な目的は「買い手企業の利益と顧客基盤を守る」こと
  • 薬局業界では特に患者や医師との関係性が重要であるため、強く求められる傾向がある

薬局のM&Aにおいて、競業避止が問題になりやすいのが施設在宅です。
特に都市部では市町村をまたいで、施設在宅に訪問することも珍しくありません。
M&A後に丸々施設在宅を売り手に持って行かれると、収支はひっくりかえります。
特に最終契約では競業の範囲について明文化しておくとよいでしょう。


薬局売却での競業避止義務の一般的な内容

  1. 地域の制限
    • 同一市区町村や都道府県内で新規薬局を開設できない
    • 場合によっては全国規模で制限されることもある
  2. 期間の制限
    • 一般的には2〜5年程度
    • 長期に及ぶ場合は裁判で無効と判断される可能性あり
  3. 対象業種の制限
    • 調剤薬局の経営や運営に関与することを禁止
    • ドラッグストア経営やコンサル業務まで含まれる場合もある

法的観点からの有効性

  • 競業避止義務は「合理的な範囲」であれば有効
  • 地域や期間が過度に広い場合、公序良俗に反して無効となる可能性
  • 売却契約書に明記されることで法的拘束力を持つ

実務での注意点

  1. 制限範囲の明確化
    • 「市区町村単位」「半径〇km圏内」といった具体的な記載が望ましい
  2. 期間の合理性
    • 3年程度が妥当な水準
    • 5年以上の場合は交渉の余地あり
  3. 対象業種の限定
    • 薬局経営以外の事業(例えばヘルスケア関連の別事業)まで制限されないように調整
  4. 違反時のペナルティ
    • 違約金の設定がある場合、金額の妥当性を確認する必要あり

成功事例と失敗事例

成功事例

関東のA薬局は、競業避止義務を「半径5km・3年間・調剤薬局経営に限定」と交渉。
その後、医療コンサル事業を立ち上げ、制約を受けずに新しいキャリアを築くことに成功した。

失敗事例

関西のB薬局は、競業避止義務を「全国・5年間・医療関連全般」と定めた契約を締結。
売却後に介護事業へ参入しようとしたが、競業避止義務違反とみなされ、違約金を請求される事態となった。


実務チェックリスト

  • 契約書における競業避止義務の範囲を理解しているか
  • 地域制限・期間制限が合理的かどうか確認したか
  • 制限される業種を明確に把握しているか
  • 違約金条項の金額が妥当かどうか確認したか
  • 将来のキャリアに影響しないか検討したか

まとめ

薬局売却では、競業避止義務は避けて通れない条項の一つです。

  • 合理的な範囲(地域・期間・対象業種)で設定することが重要
  • 将来のキャリアや事業計画を踏まえて交渉することが必要
  • 契約前に専門家へ相談し、適切な内容に調整することが望ましい

いかがでしたでしょうか。
競業避止は主に最終契約に規定される項目です。
締結前にしっかり確認しましょう。

次回は「薬局売却と取引先対応|卸・医療機関・サプライヤーとの信頼を守る方法」につきお届けします。取引先との信頼関係の維持はビジネスの基本ですね。是非ご参照ください。