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はじめに
薬局の売却は、経営者のリタイアや事業承継の一環として行われるケースが多いですが、その後に避けて通れないのが「相続対策」です。
売却で得た資金は、多くの場合「現金」という流動性の高い資産に変わります。
現金は相続税の課税対象となりやすく、適切な対策を取らなければ、家族に重い税負担がかかる可能性があります。
さらに、薬局経営に関与していない親族が相続人の場合、資産分配を巡るトラブルが起こりやすいため、早期の対策が不可欠です。
本記事では、薬局売却後の相続対策について、実務的な視点から整理します。
皆さん、こんにちは。YAKUDACHI鈴木です。
今回は薬局M&Aと相続対策です。
多くの経営者は70歳前後でご勇退でしょうか。
ちょっと意識しだすのが相続ですね。
売却代金をご自身で使い切るという方は、むしろ少数ではないでしょうか。
そうなると、近い将来、次世代に残すということになります。
金銭か不動産か、それとも保険で残すか?株式のまま残すという選択肢もあります。
M&Aと一緒に考えておきたいところです。
薬局売却と相続の基本構造

- 売却益が相続財産に組み込まれる
- 薬局を売却すると、得られた資金は経営者個人の財産となる
- 現金はそのまま相続税の課税対象となる
- 相続税の課税対象額が増加
- 現金・預金は評価額=そのままの金額で課税対象
- 不動産や株式と違い、評価減ができない
- 相続人間のトラブルリスク
- 売却資金をどう分配するかで親族間対立が起こりやすい
- 特に薬局経営に関わっていない子どもがいる場合は注意
経営者ご自身のお考えはもちろんですが、相続まで意識してM&Aを考えた場合、相続人の方の意見も大切です。
金銭で残した方がわかりやすいだろうと、もしかしたらお考えかも知れませんが、あなたと息子さんの意見が果たして同じでしょうか。
親子は近しいものでも、腹を割って話す機会の少ないもの。私もそうです。
子供たちと自分の死後の世界を話す機会は日常にはありません。
M&Aを意識しだしたのなら、一度、話し合う機会を設けてみませんか。
きっと、予想していなかった反応や子供たちの想いに触れることができるはずです。
相続対策の重要ポイント

- 生前贈与の活用
- 暦年贈与(年間110万円まで非課税)
- 相続時精算課税制度の利用
- 資産の組み換え
- 売却資金を不動産や生命保険に変えることで評価額を圧縮
- 中小企業投資促進税制などの活用も選択肢
- 遺言書の作成
- 資産分配方法を明確にすることで、相続人間のトラブルを防止
- 事業承継税制の活用
- 売却ではなく親族承継を選択した場合、税制優遇を受けられる可能性あり
事業承継税制の適用を受けようと考える中小企業オーナーは現時点での特例承継計画の提出期限が2026年3月末ですのでご留意ください。詳しくは中小企業庁の事業承継税制に関するWebサイトを参照してください。
実務対応のステップ

- 資産と相続人の整理
- 売却資金・不動産・保険・金融資産を一覧化
- 相続人ごとの取り分をシミュレーション
- 税理士・弁護士への相談
- 相続税評価額の試算
- 生前贈与や信託の活用可能性を検討
- 遺言書・信託契約の作成
- 公正証書遺言を利用することで、法的効力を担保
- 民事信託を活用すれば、柔軟な承継設計が可能
相続において、不動産の取扱いは特に注意が必要です。
本邦においては相続税の考え方において、相続人の住宅としての不動産に関しては有利な相続税の算定方式がとられています。(詳しくは国税庁のWebサイト参照)
遺言状は作成する過程で、税務や相続人への分配に関して、自分でも整理できるのでお勧めします。たとえ、公正証書として遺言書を作成しても、後日撤回できますので変更可能です。作ってみることで、不動産をどうしようとか、誰に何を残すとか、はたまた遺留分の取扱いなどなど。結構相続はトピックが多いので、相続人が多い方は特に時間のかかる話ですよ。
成功事例と失敗事例
成功事例
関東のA薬局は、売却後に得た資金を生命保険と不動産に組み替え。
さらに遺言書を作成し、相続人ごとの取り分を明確化したことで、相続発生時もトラブルなくスムーズに承継が進んだ。
失敗事例
九州のB薬局は、売却資金をそのまま預金として保有。
相続発生時に巨額の相続税が発生し、子どもたちは納税資金を確保するために不本意な資産売却を強いられた。
実務チェックリスト

- 薬局売却後の資金を相続財産として整理したか
- 相続税評価額の試算を行ったか
- 生前贈与・生命保険・不動産などによる節税策を検討したか
- 遺言書を作成し、分配方法を明確にしたか
- 税理士・弁護士など専門家の助言を受けたか
まとめ

薬局売却はゴールではなく、その後の資産承継や相続対策が重要です。
- 売却資金はそのまま相続税課税対象になる
- 生前贈与や資産組み換えで評価額を圧縮できる
- 遺言や信託を活用して親族間トラブルを防ぐ
いかがでしたでしょうか。今回は薬局M&Aにおける相続対策についてお届けしました。
次回は「薬局売却と債務整理|借入金・保証・金融機関交渉の実務ポイント」をお届けします。是非ご参照ください。