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はじめに
薬局を売却する際に最大の懸念事項の一つが「患者の継続利用」です。
経営者が変わったことで患者が不安を感じ、他の薬局へ流れてしまうケースは少なくありません。
しかし、承継後も患者に選ばれ続ける薬局であれば、経営は安定し、買い手にとっての魅力も大きくなります。
本記事では、薬局売却と患者継続利用の関係について解説し、承継後も患者に支持されるための実務ポイントを整理します。
皆さん、こんにちは。YAKUDACHI鈴木です。
今回は薬局M&Aと患者継続です。
M&Aの主な目的は売上利益の拡大でしょう。そのためには、M&A前後で患者数が変わらずくることが前提になります。
従業員のほぼ全員が承継前後で変わらなければ、それほど問題になることはありませんが、例えば管理薬剤師が変わる場合など、大きな変化があると、医師や介護施設担当者からは注目されることもあります。患者さんも、そういうアナログな部分は敏感に察知するものです。
一部の噂好きな方が、ありがたくも評判を広めてくれたりもしますので、他の施策に劣後するとは言え必要な対策はしましょう。
患者が離れる主な理由

- 経営者交代による不安
- 「スタッフが変わるのではないか」「サービスの質が落ちるのではないか」との懸念
- 接遇やサービスの変化
- 売却後に接客態度や説明方法が変わることで違和感を覚える
- 利便性の低下
- 営業時間・待ち時間・取り扱い薬の種類などに変更が生じる
患者離れの影響についてですが、ご存じの通り、薬局はサービス品質がそこまで売上に影響することはありません。
例えば、メチャクチャ感じ悪い薬剤師がいたとして、3%売上を落としたら相当なものです。
逆に言えば、接遇のプロみたいな薬剤師がいても、個人が売上に影響するのはせいぜい1~3%程度です。
元も子もない言い方になりますが、医者が人気なら、薬局はなんとでもなるのがこのビジネスです。
ただし、処方箋数で語れば、大きな影響がないと言える患者数の変化(1~3%)ですが、M&Aの目線ではどうかと言えば、これは話が変わってきます。
例えば、売上が3%減少すると仮定します。
多くのM&A案件では営業利益額やキャッシュフローを株価計算のベースに使用します。
それでは売上3%減が利益やCFにどの程度インパクトするかと言えば、ざっくり20~30%の利益減になるでしょう。
これは株価の計算が2~3割ズレることを意味します。
つまり、5000万で買った案件の価値が1000~1500万減少したということです。
いかがでしょうか。数%の患者減が数字でみれば微減かもしれません。(毎日の事なので気づかないかもしれない程度)ですが、M&Aの株価評価の視点では多額の損失になることが理解できましたか?
患者継続利用のための売却前準備

- 事前説明と情報発信
- 店頭掲示やニュースレターで「薬局は継続して地域に貢献する」ことを周知
- 経営者交代があっても従業員やサービスが変わらないことを伝える
- 従業員の安定確保
- 患者にとっては薬剤師やスタッフとの信頼関係が重要
- 離職を防ぐことで安心感を維持できる
- 地域医療機関への説明
- 主な処方箋発行元の医師に承継を説明し、患者への不安を減らす
承継後の患者維持施策

- 挨拶と顔合わせ
- 新経営者や買い手企業の代表が患者に挨拶
- 「今後も変わらず利用いただける」とのメッセージを伝える
- サービス水準の維持
- 接遇方針や服薬指導を従来のスタイルに近づける
- 急激な変更を避ける
- 利便性の強化
- 営業時間の延長やオンライン服薬指導の導入
- 地域ニーズに合わせたサービス改善
- 地域貢献活動の継続
- 健康相談会やイベントを実施し、地域との接点を維持
成功事例と失敗事例
成功事例
関東のA薬局は、売却前に患者へ事前告知を行い、従業員も全員残留。
承継後には新経営者が積極的に顔合わせを行い、患者離れを防止した。結果として処方箋枚数も安定的に推移した。
失敗事例
関西のB薬局は、売却を患者に事前告知せずに実施。
経営交代後に複数の薬剤師が退職し、患者からの信頼が揺らぎ、競合薬局に患者が流出してしまった。
実務チェックリスト

- 患者に対して売却・承継の事前説明を行ったか
- スタッフの離職防止策を講じたか
- 医療機関へ承継の経緯を説明したか
- 承継後に患者への挨拶を実施したか
- サービス水準や利便性を維持・改善したか
まとめ

薬局売却における患者継続利用は、承継後の経営安定を大きく左右するテーマです。
- 売却前に患者・地域・医療機関へ情報発信を行う
- 従業員の定着を図り、安心感を維持する
- 承継後は挨拶やサービス維持によって信頼をつなげる
いかがでしたでしょうか。今回は薬局M&Aと患者数の維持についてお届けしました。
次回は「薬局売却と買収監査(デューデリジェンス)|高値売却とリスク回避のための必須プロセス」をお届けします。
買い手からすれば当然実施したプロセスであるDDも、売り主さんからは大変不評です。
特に初めて売却を経験する売り主さん(多くの場合初めてですね)には結構違和感のある作業です。
DDと言うと横文字でよくわかりませんが、自社のことを結構根掘り葉掘り聞かれますし、一部は疑いの目を向けられることもあります。
私自身も売り手としても買い手としても仲介の立場でもDDに立ち会ってきましたが、あまり気分のよいものではありません。
そうはいっても多くのM&Aでは必須プロセスになります。その必要性を理解して、必要な協力はおしまない姿勢が必要になります。
是非ご参照ください。