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はじめに
薬局を売却する際、忘れてはならないのが「行政手続き」と「許認可の承継」です。
薬局は薬機法に基づく許認可事業であり、適切な手続きを行わなければ営業を継続できません。
売却後に「許可が失効して営業できない」といった事態を避けるためにも、事前に流れを理解しておくことが重要です。
本記事では、薬局売却時に必要となる行政手続きや許認可承継の方法、そしてトラブルを防ぐための実務対応について解説します。
皆さん、こんにちは。YAKUDACHI鈴木です。
薬局M&Aで絶対に押さえなくてはならない行政許認可手続きは保健所の薬局開設許可と厚生局の保険薬局指定です。ここを落とすと、他の手続きが全て止まります。逆に、一部の手続きは両者の手続きで自動的に通知がきたりするものもあります。
M&Aが決まったら、まっさきにすることは、保健所と厚生局に事前相談です。
薬局の許認可と法的根拠

- 薬局開設許可(薬機法第7条)
- 都道府県知事の許可が必要
- 開設者(法人または個人)ごとに付与される
- 管理薬剤師の設置義務(薬機法第9条)
- 開設者は必ず管理薬剤師を選任し、届け出る必要あり
- その他の関連届出
- 保健所への届け出
- 保険薬局指定申請(厚生局)
- 健康保険組合等への契約継続確認
そのほかに各種公費の申請があります。
生活保護や難病、自立支援などです。
分からない方は、譲渡前の法人から許認可関係書類をまるっともらいましょう。
譲渡前の法人と同じ許認可を取っておけばまず安心です。
売却スキームごとの手続きの違い

1. 株式譲渡の場合
- 法人格はそのまま存続するため、許認可は自動的に維持される
- 管理薬剤師や従業員の変更がない場合、手続きは最小限
👉 最もスムーズに承継できる方法
多くの株式譲渡では代表取締役の交代をともないます。(つまり社長交代)
多くの許認可は代表者の変更を届出事項としているので、許認可自体が継続されていても、届け出は必要になりますので、誤解しないよう注意してください。
2. 事業譲渡の場合
- 許認可は包括承継できないため、買い手が新たに薬局開設許可を取得する必要あり
- 保険薬局指定も新規で申請が必要
👉 承継準備に時間と手間がかかる
厚生局の保険指定は、事業譲渡の場合、遡及申請が適用されます。
これは一定条件を満たした場合に、申請期限が譲渡後に延長される仕組みです。
例えば、1月1日から新会社で運営する場合、遡及申請は1月中旬頃まで認められます。(必ず厚生局に確認してください)
3. 会社分割の場合
- 分割承継会社が新たに薬局開設許可を取得
- 労働契約や資産・負債と同様に許認可も移転可能
実務で必要となる主な手続き

- 薬局開設許可申請(都道府県)
- 開設者変更時に必須
- 管理薬剤師の選任も同時に届け出る
- 保険薬局指定申請(地方厚生局)
- 事業譲渡の場合、新規指定を受ける必要あり
- 保険医療機関との契約継続が可能か確認
- 労働基準監督署・年金事務所への届出
- 労働保険・社会保険関連の手続き
- 税務署への届出
- 法人設立届出や事業承継に伴う税務手続き
忙しい方は、各専門家にまるっとお願いしてもOKです。
私も3社薬局を経営していますが、保健所、厚生局、各種公費は自分で申請して③、④の人事税務関係はそれぞれ、社労士さんや税理士さんにお願いしてます。
費用はかかりますが、その分、時間の節約になりますし、自分の得意分野に集中することが出来ます。
信頼できる税理士、社労士がわからないのであれば、当方からご紹介しますのでお気軽にお問い合わせください。薬局は特殊な業界なので、詳しくない先生だとコミュニケーションに少しストレスがあります。
トラブルになりやすいケース

- 事業譲渡なのに開設許可の新規取得を失念
- 保険薬局指定の遅れ
- 管理薬剤師変更届の遅れで行政指導を受けた
- 行政への手続きを売却直前まで放置し、買い手が不安を抱いた
保険薬局の指定は、遡及願いで拝み倒してなんとかなるケースもあります。あきらめないで、まずは相談しましょう。
成功事例と失敗事例
成功事例
関東のA薬局は、M&Aアドバイザーと行政書士を交え、許認可承継のロードマップを事前に作成。
株式譲渡スキームを選択し、売却後も営業を止めることなくスムーズに承継を実現。
失敗事例
九州のB薬局は、事業譲渡で売却を進めたが、公費の申請を失念。
結果として公費関連の報酬請求に支障をきたした。
実務チェックリスト

- 売却スキームごとに必要な手続きを把握しているか
- 開設許可・保険薬局指定の申請スケジュールを立てたか
- 管理薬剤師変更届を準備したか
- 行政書士や専門家と連携しているか
- 売却契約に「許認可承継に関する条項」を盛り込んだか
まとめ

薬局売却では、行政手続き・許認可承継を誤ると、営業停止や調剤報酬請求不能といった深刻なリスクを招きます。
- 株式譲渡は許認可承継が最もスムーズ
- 事業譲渡は新規許可・指定申請が必要
- 専門家と連携し、事前に手続きロードマップを作成することが成功の鍵
いかがでしたでしょうか。
今回は薬局M&Aにおける行政関連手続きにつき紹介しました。
薬局が規制産業である以上、監督官庁とのかかわりはないがしろにできません。
私も行政手続きは大嫌いですが、心を無にして粛々とこなしています。
次回は「薬局売却と地域包括ケアシステムとの関わり|承継後も地域医療で信頼を守る方法」をお届けします。