薬局売却と医薬品在庫・仕入れ契約|承継時の評価とトラブル回避のポイント

薬局売却と医薬品在庫 仕入れ 薬局 M&A

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はじめに

薬局売却を検討する際、見落とされがちなのが「医薬品在庫」と「仕入れ契約」の取り扱いです。
在庫は薬局の資産である一方、売却時の評価や承継方法によってはトラブルの原因となります。
また、医薬品卸との仕入れ契約は薬局経営に不可欠であり、承継時に適切な整理を行わなければ、買い手企業との交渉が難航することもあります。

本記事では、薬局売却における医薬品在庫と仕入れ契約の評価方法、そしてトラブルを防ぐための実務対応について解説します。

皆さん、こんにちは。YAKUDACHI鈴木です。
今回は薬局M&Aにおける医薬品在庫と医薬品卸との仕入れ契約です。
M&Aにおいては、売り手と買い手で情報格差があります。代表的なのが在庫管理の状態でしょう。
「しっかり在庫管理していますか?」と聞いても「しています」という回答しかでてきません。
DDを実施すればよいですが、小規模M&Aでは現実的ではありません。最終契約に在庫に関する規定を盛り込むことでリスク回避しましょう。


薬局売却時 医薬品在庫の評価ポイント

薬局売却における医薬品在庫の評価ポイント
  1. 適正在庫かどうか
    • 売れ残りが多い場合は評価が下がる
    • 特に高額医薬品や期限切れ間近の在庫はリスク要因
  2. 在庫金額の算定方法
    • 原価法(仕入価格ベースで評価)
    • 時価法(市場価格ベースで評価)
  3. 棚卸の透明性
    • 定期的に棚卸を実施しているか
    • 在庫記録が正確に残されているか

在庫評価の方法は、在庫金額がM&A案件に与える影響に応じて変更します。
極論、在庫金額が小さく、誤差があっても無視できる範囲であれば、棚卸せずに譲渡でもOKです。
逆に、在庫金額が大きい場合には、その評価方法や期限切迫品の取扱いを契約上定義して、全数棚卸が実施されます。


医薬品在庫承継の実務

医薬品在庫 承継実務
  • 売却価額に含める場合
    在庫を含めて一括譲渡するケース。買い手にとって分かりやすいが、価格交渉で在庫評価が争点になりやすい。
  • 別途精算する場合
    売却時点の棚卸を基準に、在庫金額を後日精算。公平性が高く、M&Aでは一般的。

👉 特に薬局の場合、在庫額が数千万円に達するケースも多いため、事前に評価方法を明確化しておくことが重要です。

在庫金額を譲渡対価に含めるのは、簡便です。ただし、譲渡までに薬局のコントロールは一方的に売り手がもっていることに注意してください。
事業譲渡の場合には、シンプルに売り手が在庫を絞った分だけ得する構図になります。
(株式譲渡では無視できます。)
詳しくはお問い合わせください。


医薬品仕入れ契約の整理

医薬品仕入れ契約の整理
  1. 卸との取引条件
    • 掛け率や支払条件が明確になっているか
    • 買い手にとって不利な条件でないか
  2. リベートや特別契約
    • 卸からのリベート条件は売却後に引き継げない場合がある
    • 個別契約内容を事前に確認することが必要
  3. 契約の承継可否
    • 事業譲渡の場合、仕入契約は自動的に承継されないため、再契約が必要になる

医薬品卸との基本取引契約では、通常、代表者保証がついています。
株式譲渡の場合には代表者保証の解除が必須となります。
あまりトラブルになるケースは考えづらいですがご留意ください。
(事業譲渡では債権債務を引き継がないので関係ありません)

トラブルになりやすいケース

  • 在庫に期限切れ医薬品が多く含まれていた
  • 棚卸データが不正確で、売却後に差異が発覚
  • 卸とのリベート契約が買い手に引き継がれず、想定外の利益減少が発生
  • 支払条件(サイト)が短すぎて、買い手に負担が集中

在庫周りでのトラブルは、大手が買い手の場合にはあまり考えられません。買い手が中小もしくは個人のケースでは、M&Aに対する能力に差があるため、トラブルに発展するケースも考えられます。


成功事例と失敗事例

成功事例

関東のA薬局は、売却直前に在庫を整理し、期限切れや不動在庫を廃棄。
さらに棚卸を第三者機関に依頼して透明性を担保した結果、買い手企業との交渉がスムーズに進み、希望条件で売却が成立。

失敗事例

九州のB薬局は、在庫評価を甘く見積もって売却交渉に臨んだ結果、デューデリジェンスで大量の不動在庫が発覚。
その分売却価格が減額され、想定より数百万円も低い評価に。


実務でのチェックリスト

  • 棚卸を定期的に実施しているか
  • 在庫評価の方法を明確にしているか(原価法 or 時価法)
  • 期限切れ医薬品や不動在庫を事前に整理しているか
  • 卸との契約条件をリスト化しているか
  • リベート条件が引き継げるか確認しているか
  • 事業譲渡か株式譲渡かで、契約承継の可否を把握しているか

まとめ

薬局売却において、医薬品在庫と仕入れ契約の整理は価格評価に直結する重要項目です。

  • 在庫は公平な評価と棚卸の透明性が必須
  • 仕入契約の承継可否を確認し、条件を整理しておく
  • 不動在庫や期限切れ医薬品は事前に処理する
  • 卸との信頼関係も含めて買い手に引き継ぐことが理想

いかがでしたでしょうか。
医薬品卸との関係性は変化してきています。
私の若いころ(なんかこの表現やだな)には、薬局は完全にお客様待遇でした。
卸の決算は絶好調で、薬価差も大きかったです。
その分、無駄も多く、月末返品や急配、医療機関によっては10か月を超える支払いサイトなどなど、お金が余ると効率が下がる典型的な業界でした。
社会保険が逼迫した現代では考えられない状態ですね。
栄枯盛衰、時代は移りゆくものです。私も時代に取り残されないよう、自分を磨き続けようと思います。

次回は「薬局売却とITシステム・電子薬歴引継ぎ|スムーズな承継を実現するための実務対応」をお届けします。M&Aにおいては薬剤師よりも事務さんのレセコン変更が結構ストレスになります。無用な退職者を出さないよう注意が必要です。是非、ご参照ください。