薬局売却と従業員モチベーション維持|承継を成功に導く組織マネジメント

薬局売却と従業員モチベーション 薬剤師キャリア

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はじめに

薬局を売却する際、価格や条件に目が行きがちですが、実際の承継の成否を大きく左右するのは「従業員のモチベーション維持」です。
従業員は薬局経営の中核であり、患者との信頼関係を築いているのも現場の薬剤師や事務スタッフです。
売却の過程で従業員の不安が大きくなれば、退職やモチベーション低下につながり、承継後の経営に深刻な影響を及ぼします。

本記事では、薬局売却における従業員モチベーション維持の重要性と、実務対応のポイントを解説します。

皆さん、こんにちは。YAKUDACHI鈴木です。
薬局M&Aを知って喜ぶ従業員はいません。多くは動揺し、不安に思い、一部の方は売られたといった事実に失望します。
ただし、丁寧なコミュニケーションを繰り返すことで、動揺はおさまり、不安は解消されます。一部の方は、M&Aの自分に対するメリットに気づくことでしょう。


薬局売却が従業員に与える影響

  1. 雇用継続への不安
    • 「売却後も雇用が続くのか」
    • 「待遇が悪化するのではないか」
  2. 職場環境の変化
    • 経営方針の変更
    • 人事制度や福利厚生の違い
  3. 患者対応への影響
    • スタッフの不安は患者にも伝わりやすい
    • 信頼関係が揺らぐ可能性

日本ではM&Aを「ハゲタカ」と揶揄する傾向が根強いです。
時代遅れな表現ですが、M&Aになじみが薄い人が多数派である以上、印象は変わりません。まずは、従業員の方の不安(その多くは噂話に基づく誤解)を解消することからはじめましょう。


買い手企業が重視する視点

  • 従業員の定着率
    → 売却後もスタッフが継続勤務するかどうか
  • モチベーション維持策の有無
    → 売却プロセスで従業員ケアがされているか
  • 人材育成体制
    → 承継後も人材を活かせる体制があるか

👉 買い手にとって「従業員が安心して働ける状態」が、スムーズな承継の最大要因です。

M&A前後で従業員の方の待遇の基本は「不利益変更禁止」です。
一部、むしろM&A後の方が有利なこともあるので、多くのM&Aでは、従業員の方に対するメリットも多いです。
ただ、コミュニケーションが不足すると(噂話のようなコミュニケーションは逆に不足することがないので)根拠のない不安だけが広がっていきます。


従業員モチベーション維持の実務対応

  1. 情報開示のタイミング
    • 売却成立直後に速やかに従業員へ報告
    • 遅れると噂や憶測が広まり、不安を助長
  2. 説明の透明性
    • 「売却の理由」「今後の方針」「雇用継続の有無」を明確に伝える
    • 曖昧な説明は不信感を招く
  3. 買い手企業との顔合わせ
    • 新しい経営陣や担当者を紹介
    • 直接のコミュニケーションが安心感を生む
  4. 待遇維持の明文化
    • 就業条件や福利厚生を維持する方針を契約に盛り込む
    • 不安を軽減する効果が高い

情報開示のスピードを重視するあまり、不確定段階で曖昧な情報を出さないようにしましょう。必要であれば「まだ確定してないので言える段階にない」とバッサリ伝達するしかありません。曖昧な回答の不足部分は噂話では自動的に悪意を持って埋められることになります。


成功事例と失敗事例

成功事例

東海のA薬局は、売却成立直後に全従業員説明会を実施。
経営者自らが「雇用は継続される」「待遇も大きく変わらない」と説明し、さらに買い手企業の代表を紹介。
従業員の離職はゼロで、承継後も患者対応が安定した。

失敗事例

九州のB薬局は、売却報告が遅れたため、従業員が不安を募らせて複数名が退職。
結果として承継直後に人手不足が発生し、買い手企業が急遽人材補充を行う羽目になった。

一点、補足ですがM&Aはそもそも従業員の方の退職契機になりやすいです。これは買い手が悪くなくても起こり得ます。なぜなら、言い出しやすいからです。
買い手に対しては既存従業員は、文字通り赤の他人なので、なんら恩義を感じることなく退職できます。
もともと辞めようか迷っていた人にとっては絶好のチャンスとなるわけです。


実務での対応ステップ

  1. 事前準備
    • 雇用契約や労働条件を整理
    • 待遇維持に関する買い手との合意を確認
  2. 報告体制の構築
    • 全体説明会と個別面談を組み合わせる
    • 質問を受け付け、不安を払拭
  3. 承継後のフォローアップ
    • 新経営者が定期的に現場を訪問
    • モチベーション維持のための研修や制度を導入

一番大切なのはお金周りです。
身もふたもない言い方ですが、働くもっとも大きな理由は給料の為以外にありません。
お金周りを明確に、伝えることが出来れば、従業員対応は8割がた終わりです。
まずは、金銭面を伝えましょう。


チェックリスト

  • 従業員への報告タイミングを決めているか
  • 雇用継続・待遇維持を明確に伝えられるか
  • 買い手企業を従業員に紹介する場を設けたか
  • 説明会後に個別フォローを行う体制を準備したか
  • 承継後の人材育成方針を共有したか

まとめ

薬局売却において、従業員モチベーションの維持は承継成功のカギです。

  • 売却理由や今後の方針を誠実に伝える
  • 雇用継続と待遇維持を明確に保証する
  • 買い手企業と従業員の関係構築を早期に進める

いかがでしたでしょうか。
売り手社長がともに過ごしてきた従業員の方が離反するのは、つらいものですよね。
しっかりコミュニケーションをとって無用な退職を招かないようしっかり準備しましょう。

次回は「薬局売却と地域住民との信頼関係|承継後も選ばれ続ける薬局であるために」をお届けします。