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はじめに
薬局を売却する際、経営者が最も心配することの一つが「地域住民との信頼関係」ではないでしょうか。
薬局は単なる医薬品の提供拠点ではなく、患者や住民が日常的に健康相談や生活支援を求める地域密着型の存在です。
売却をきっかけにその信頼関係が崩れてしまえば、承継後の薬局の患者数減少や経営悪化につながりかねません。
本記事では、薬局売却時に地域住民との信頼を守り、承継後も選ばれ続ける薬局であるためのポイントを解説します。
皆さん、こんにちは。YAKUDACHI鈴木です。
今回は薬局M&Aにおける地域住民との信頼関係です。
M&Aはともすれば「身売り」とも揶揄され、特に高齢者の多い患者層には信頼を失う行為と捉えられがちです。
一部、思い込みや誤解は仕方がありませんが、そうは言っても、譲渡後も経営は続くのでほったらかしというわけにもいきません。
今回は、スムーズな承継実現のため、地域住民にどのようにアプローチ(具体的には情報開示)していけばよいか検討していきたいと思います。
薬局と地域住民の信頼関係の特徴

- 「顔なじみの薬剤師」への安心感
- 長年にわたり患者の健康を見守る存在
- 薬局のブランド以上に「人」への信頼が重視される
- 生活に密着した相談機能
- 服薬指導だけでなく、健康相談や介護相談も担う
- 地域包括ケアの一翼を担っている
- 医療機関との橋渡し役
- かかりつけ医と連携し、住民に安心を提供
- 地域医療の信頼ネットワークの中核
薬剤師さんへの地域住民からの信頼は厚いです。
特に、長年その薬局に勤め続けていて、顔なじみとなっている場合、ともすれば医師より信頼されている存在かも知れません。
薬局名が変更となっても、勤務する薬剤師が継続していれば、地域住民からの信頼を失うことは少ないでしょう。
売却が地域住民に与える影響

- 不安感の増大
「経営者や薬剤師が変わったら対応も変わるのではないか」 - 患者離れのリスク
信頼するスタッフが退職すれば、他薬局へ流れる可能性 - 地域医療連携への影響
医師や介護事業者が不安を持ち、紹介や連携が減少する恐れ
地域の医療、介護リソースと連携しているのは、薬局の現場スタッフです。
M&Aによって薬局名が変更となっても、現場が変わらなければ、その旨、アナウンスしましょう。
介護施設や、近隣Drとの信頼関係は維持されるはずです。
地域住民への信頼維持の実務対応

- タイムリーな告知
- 売却成立後、速やかに地域住民へ告知
- ポスター掲示、チラシ配布、ホームページでの発表が有効
- 従業員の継続勤務を強調
- 「顔なじみのスタッフは引き続き勤務する」ことを明確に伝える
- 信頼の連続性をアピール
- 新経営陣の紹介
- 新しい経営者や薬剤師を住民へ紹介
- 挨拶イベントや無料相談会の開催も効果的
- 地域活動への参加継続
- 健康フェアや学校講演、在宅訪問などの地域活動を継続
- 「地域に根ざす姿勢」を示す
地域住民と信頼関係を構築する上で、健康フェアはとても有効です。
近隣Drを講師に招くこともできますし、薬に関する講演会などで新経営陣や薬剤師を紹介することもできます。
成功事例と失敗事例

成功事例
関東のA薬局は、売却成立後すぐに地域住民向け説明会を開催。
経営者と新オーナーが揃って挨拶し、従業員継続と地域活動の継続を宣言。
その結果、患者数は減少せず、逆に新規患者が増加した。
失敗事例
関西のB薬局は、売却を十分に説明せずに経営者交代を実施。
「顔なじみの薬剤師」が退職したことで不安が広まり、患者数が減少。
地域住民から「急に変わってしまった」という声が多く寄せられた。
実務での対応ステップ

- 事前準備
- 売却の背景や今後の経営方針をまとめた資料を用意
- 従業員の継続勤務体制を確定
- 住民への告知方法の設計
- 店頭ポスター、DM、SNS、ホームページで告知
- 医療機関や介護事業者への情報提供も並行して行う
- 信頼を深めるイベントの実施
- 売却後に健康相談会や無料測定会を開催
- 新オーナーやスタッフを住民に紹介する場を設ける
チェックリスト
- 地域住民への告知内容を準備したか
- 従業員の継続勤務体制を明確にしたか
- 新経営者の紹介の場を設けたか
- 地域活動の継続を住民へ伝えたか
- 医師や介護事業者など地域の関係者にも配慮したか
まとめ

薬局売却における地域住民との信頼関係は、承継後の経営安定に直結します。
- 従業員の継続勤務と地域活動の継続を明確に伝える
- 新オーナーの姿勢を住民に示し、安心感を提供する
- 誠実なコミュニケーションが信頼維持のカギとなる
いかがでしたでしょうか。
薬局のM&Aは、多くの関係者にとって寝耳に水、噂話の対象になりやすいです。
人間、残念ながら悪口が好きな人が噂を広めるので、M&A直後には悪いうわさが広がりやすいです。ただし、積極的に情報開示していくことで、本当の姿を伝えることが出来ます。
次回は「薬局売却と調剤報酬改定リスク|M&A交渉に影響する要因と対策」をお届けします。報酬改定は技術料収入に直結するため、当然、M&A価格にも影響します。
ただ、そうは言っても買い手は直近の改定だけを見て買収意志決定するわけでもありません。
ある意味、M&Aの交渉において「報酬改定」とは、値下げ交渉の謳い文句のようなものですね。
是非、ご参照ください。