ヨーロッパの薬局経営事情とオンライン薬局の収益性
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ヨーロッパにおける薬局経営は、国ごとに法制度や市場環境が大きく異なりますが、以下の観点から概要を整理します。
1. 基本的な特徴(ヨーロッパ全体に共通する傾向)
項目 | 内容 |
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所有形態 | 多くの国で個人または家族経営が主流(例:ドイツ、フランス) |
規制の厳しさ | 各国で薬局設立・運営には厳格な国家資格と地域制限がある |
医薬分業 | 原則として医師と薬剤師の役割は明確に分かれている |
販売範囲 | OTC医薬品・処方薬に加えて健康食品やコスメも販売 |
IT化・電子処方 | 電子処方や医薬品トレーサビリティ制度が進んでいる(例:北欧諸国) |
2. 国別の薬局経営の特徴
◆ ドイツ
- 薬局の設立制限:薬剤師1人が経営できる薬局は1つ本店+3つまでの支店(所有と経営の分離不可)。
- チェーン薬局:禁止(外資・法人が薬局を直接所有することはできない)。
- 報酬体系:薬剤費+調剤報酬は国家が一律に設定。
◆ フランス
- 薬局数:約20,000件。
- 薬局の場所:人口に応じて地域割当があり、新規開業は既存薬局の買収が主。
- 販売範囲:処方箋薬、OTC、化粧品(特に「パラファーマシー」と呼ばれる部門が発達)。
- 利益率:商品販売による利益率が高く、薬局経営は比較的安定。
◆ イタリア
- 薬局の所有:2017年法改正により民間企業による薬局経営が可能になり、チェーン展開が進む。
- 公的保険との関係:調剤薬局は国民健康保険と連携し、薬剤費は部分的に自己負担。
◆ スウェーデン(北欧代表)
- 完全自由化:2009年に国家独占から民間開放へ移行し、現在はチェーン薬局が主流。
- 電子処方率:90%以上。患者はスマホで処方情報確認、薬局間の連携もスムーズ。
- 大手プレーヤー:Apoteket(旧国営)、Kronans Apotek、Apotek Hjärtatなど。
3. トレンド・課題
トレンド | 内容 |
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高齢化 | 慢性疾患の増加により薬剤師の役割が拡大(服薬指導、医師との連携など) |
デジタル化 | 電子処方、在庫管理、顧客管理が進化。特にeHealth、遠隔医療との連携が注目 |
競争の激化 | 特に自由化した国では大手チェーンと個人薬局の競争が顕在化 |
人手不足 | 地方や離島では薬剤師の確保が課題 |
4. 日本との比較
項目 | ヨーロッパ | 日本 |
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経営形態 | 個人薬局(ドイツ、フランス)、一部チェーン化(北欧、イタリア) | 法人によるチェーン薬局が多数 |
出店制限 | 人口制限や距離制限あり | ほぼ自由(調剤基本料などの誘導はあり) |
薬剤師業務 | 調剤に加え、服薬指導や健康相談が重視 | 調剤・服薬指導が中心 |
電子処方 | 普及が進んでいる(北欧中心) | まだ一部普及段階 |
5. まとめ:ヨーロッパ薬局経営のキーポイント
- 規制強め+安定経営の国(例:ドイツ・フランス)
→ 高い規制に守られつつも、利益率が安定 - 自由化による競争激化の国(例:スウェーデン・イタリア)
→ チェーン薬局台頭で経営手法の多様化 - デジタルヘルスとの融合が急加速
→ 電子処方・eHealth連携は世界的先進
以下に、ドイツとフランスの薬局経営に関する財務指標および主要企業の状況を整理しました。
🇩🇪 ドイツの薬局経営・財務情報
■ 平均薬局の収益構造(2023年)
- 平均売上高(VAT抜・年額):€3.44 M / 年 (abda.de)
- **原価(売上の約80%)**を差し引くと、粗利益は約€0.708 M。その後、
- 人件費:約€0.355 M
- その他費用:約€0.219 M
→ 税引前営業利益(EBT):約€0.148 M (reuters.com)
■ EBITDA・利益率(オンライン薬局など)
- Redcare Pharmacy(ドイツ中心に展開)
- apo.com Group(オンライン薬局チェーン)
■ 市場規模と流通構造
🇫🇷 フランスの薬局経営・財務情報
■ 薬局全体のマージンと構造
- **卸・仕入れの協同購入(CAP/SRA)**などを通じてコスト最適化が進行中 (smart-pharma.com)
- 2025年以降、フランス政府は薬(医療消耗品含む)に対し€1 Bのコスト削減目標を設定
■ 薬剤師報酬・業界圧力
- 2024年5月:薬局経営者らが報酬低下と大型チェーンの参入を背景に全国ストライキ
- 90%の薬局が閉店し、薬剤師個人の収益が圧迫されている状況が浮き彫りに
■ 民間企業のEBITDA水準
- Equasens社(フランス):EBITDAマージンは約31–32% (equasens.com)
- ※これは薬局チェーンというよりヘルスケア関連企業の例
🔍 比較まとめ(ドイツ vs フランス)
国家 | 平均薬局売上・利益 | EBITDAマージン(業界) | 業界動向・課題 |
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ドイツ | 売上約€3.44 M、粗利約€0.708 M、EBT ~€0.148 M | オンライン薬局2–3%、将来的8%目標 | 高い市場規模、オンライン勢台頭、粗利圧迫 |
フランス | 卸コスト最適化進行中 | 民間社30%以上も薬局は未公開 | 助成金不足、ストライキ発生、チェーン参入圧力 |
📈 注目企業の例
✅ 次のステップにご興味ありましたら
- 他国(例:イタリア、スウェーデン)の財務指標
- 個別企業(DocMorris、Shop/Redcare等)の詳細決算分析
- オンライン vs 実店舗の収益構造比較
以下に、ヨーロッパ(特にドイツ・フランスを中心)におけるオンライン薬局と実店舗薬局の収益構造の比較を整理します。
📊 オンライン薬局 vs 実店舗薬局の収益構造比較(2023–2024年)
項目 | オンライン薬局(例:Redcare, DocMorris) | 実店舗薬局(例:ドイツ平均薬局) |
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平均売上高 | €150–300M(大手)、€3–10M(中小EC薬局) | 約€3.44M(ドイツABDA平均) |
粗利益率(売上総利益) | 20–25%(薬価制約+薄利多売) | 約21%(ドイツ) |
営業利益率(EBIT) | 約1–3%(黒字化したRedcareの2024見込み) | 約4–6%(ドイツ実店舗平均EBIT:€0.148M) |
EBITDAマージン | 2–2.7%(Redcare 2024Q2時点) | 非公表(概算では5〜10%と推定) |
物流コスト | 高(倉庫・配送・返品対応) | 低(自店内在庫・対面販売) |
人件費比率 | 約5–10%(効率化可能) | 約12–15%(人手中心) |
設備・維持コスト | 倉庫+IT(初期投資は大) | 店舗家賃・改装費用など |
販売地域 | 全国〜EU圏(スイス含む) | 主に店舗周辺地域 |
成長余地 | 高(e処方拡大・若年層) | 限定的(人口密度・地域制限あり) |
サービス内容 | 配送・アプリ・相談チャットなど | 処方受付・対面服薬指導・健康相談など |
💡 収益性の差の要因分析
1. 売上のスケーラビリティ
- オンライン薬局は広告・SEO・e処方連携により全国/海外から集客可能。売上拡大の天井が高い。
- 実店舗は地域密着が強みだが、物理的なキャパシティに限界。
2. コスト構造
- オンライン薬局は物流コスト・初期IT投資が大きく、利益率は薄い。
- 実店舗は家賃・人件費など固定費が重いが、リピーターによる安定収益が見込まれる。
3. 薬価・マージンの違い
- 処方薬はどちらも公定価格のため大きな差はないが、OTCやサプリではオンラインの方が価格競争が激しく利益が取りづらい。
- 実店舗ではブランド・相談対応を通じて高単価商品が売れる余地がある。
🏆 どちらが収益性が高いか?
評価項目 | 優位性 | 理由 |
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短期収益安定性 | 実店舗薬局 | 常連客による処方売上、地域連携が強固 |
長期的な成長余地 | オンライン薬局 | e処方制度の拡大、若年層のEC利用増加 |
EBITDAマージン | やや実店舗優勢(現状) | 人件費比率が高いが、一定の利益率を確保 |
営業利益・黒字化速度 | 実店舗優勢(短期) | オンラインは赤字期間が長く、規模が出るまで時間がかかる |
拡張性・出口戦略 | オンライン薬局 | VC投資・IPO・M&Aに向いたビジネスモデル |
🔍 ケーススタディ:Redcare Pharmacy(旧Shop Apotheke)
年度 | 売上(€M) | 調整後EBITDA(€M) | EBITDAマージン | 備考 |
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2023 | €1,476.4M | €53.5M | 約3.6% | 初の黒字転換(調整後) |
2024Q2 | 非開示 | €26.8M | 2.7% | ドイツe処方の急増により利益回復傾向 |
中長期目標 | — | — | 8%以上 | 2025年以降に本格黒字化を見込む |
✅ まとめ
結論 | 内容 |
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💡 現状では実店舗薬局の方が安定収益を得やすいが、オンライン薬局は急成長・拡張性が高く投資対象として魅力的 | |
⚖️ 利益率は大差ないが、スケールの出やすさ・販路の広さ・IT活用の余地ではオンラインが優位 | |
📈 今後の鍵は「e処方の普及速度」と「パーソナライズ化・サブスク化」などの付加価値サービスの展開 | |