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薬局経営におけるDXの必要性

薬局業界は、薬価改定や人材不足、在宅医療の拡大など、経営を取り巻く環境が急速に変化しています。従来のアナログ業務に依存した経営では、効率化も差別化も困難です。
そこで注目されているのが「薬局のデジタル化=DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。ITを活用し業務を効率化するだけでなく、患者サービスの質向上や新たな収益モデルの構築にもつながります。
DXと言っても、薬局の場合はかなりアナログ産業なので、初歩的な機械化を指します。
例えば、発注方法を以前は空き箱をバーコードでピコピコ読んでいたものを、在庫をシステム管理にして、なんなら自動発注にする程度。なれてしまえば簡単です。
薬局DXの主な活用領域

1. 在庫管理システム
クラウド型在庫管理を導入すれば、複数店舗で在庫情報を共有し、過剰在庫や廃棄ロスを防止できます。AIによる需要予測を活用すれば、発注の最適化とキャッシュフロー改善も可能です。
AIというと大げさですが、要は過去の処方歴を参照し、必要数量を計算するまでのこと。大したことはやっていません。ただ、ヒトがアナログな手法で行う発注に比べて、機械はミスをしないので、モレとかダブりとかが無いです。
2. 電子薬歴・クラウド薬歴
従来の紙薬歴は記録・検索に時間がかかり、情報共有も困難でした。クラウド型電子薬歴なら、店舗間や在宅訪問先からもデータにアクセスでき、業務効率が大幅に向上します。
3. 調剤監査システム
カメラやバーコードを用いた監査システムを導入すれば、調剤過誤を防止しながら作業スピードを高められます。人材不足の中でも安全性と効率を両立できます。
監査システムは、どうしても一手間増えるので、導入に現場の理解が得られないケースもあります。ただ、使ってしまえば、その安心感たるや手放せないものとなります。
複数薬局の運営会社で監査システムの導入を考える場合、まず1つの薬局に導入し、その薬局に他薬局のスタッフが体験に行くとよいです。慣れてしまえば、大した手間でもない事に気づきます。
4. 患者向けアプリ
処方箋の事前送信や服薬リマインダー機能を備えたアプリは、患者の利便性を高め、リピート率向上に貢献します。オンライン服薬指導にも対応できれば、来局が難しい患者層も取り込めます。
5. CRM(顧客管理システム)
患者の購買履歴や健康相談内容をデータ化すれば、OTC販売や健康食品提案のパーソナライズが可能になります。これにより物販収益を強化できます。
調剤薬局は顧客管理の視点が抜けている企業が多いです。
それは、門前開業モデルで成長してきた業界だから。
ただ、面処方や複数薬局が競合する総合門前などは、実は必要な考え方です。
顧客への応対の仕方によって、そのリピート率が変化するのであれば
当然、顧客一人当たりのLTVが変化します。
接遇の悪い薬剤師によって、いくら会社が損失を受けているか
測定したら恐ろしい結果が見えてきますよ。
逆に言えば、サービス満点従業員の生産性が再評価され
例えば賞与や昇給に反映するといった取り組みも可能です。
DX導入による収益改善の具体的効果

1. 人件費削減と業務効率化
自動分包機や監査システムを活用することで、調剤業務にかかる時間を短縮し、人件費を削減できます。その分、患者対応や新規事業に人材を振り向けられます。
機会を入れて、ヒトを減らす。
なんとも世知辛い話だね。
2. 廃棄ロス削減
在庫管理のDX化で期限切れ廃棄が減少し、年間数百万円単位のコスト削減につながった事例もあります。
3. 患者満足度向上
アプリやオンライン服薬指導の導入で、患者は「便利で相談しやすい薬局」と感じ、選ばれる確率が高まります。満足度向上は処方箋持ち込み数の増加や口コミ効果につながります。
4. 新しい収益源の創出
デジタルツールを活用した健康相談、オンラインサービス、物販提案など、薬局の新しい収益モデルを確立できます。
薬局DXの成功事例

事例①:在庫管理のDX化でキャッシュフロー改善
あるチェーン薬局では、クラウド在庫システムを導入し、全店舗で在庫情報を一元管理しました。その結果、廃棄ロスが30%削減され、キャッシュフローが安定。新規事業に投資できる体制が整いました。
事例②:オンライン服薬指導の導入
都市部の薬局では、オンライン服薬指導を導入することで、外出が困難な高齢者や子育て世代の患者を取り込みました。処方箋枚数が増加し、在宅医療連携も強化されました。
事例③:CRM活用で物販収益拡大
患者データをもとに、花粉症シーズンに合わせてOTCやサプリを提案した結果、物販売上が前年比120%を達成した薬局もあります。
DX導入のステップ

- 現状分析:どの業務に負担がかかっているかを洗い出す
- 優先順位設定:費用対効果の高い領域から導入(例:在庫管理や電子薬歴)
- スタッフ教育:システム定着のために研修を実施
- 効果測定と改善:導入後の成果を数値化し、継続的に最適化
DX導入の注意点

- 初期投資が必要 → 助成金や補助金を活用
- スタッフのITリテラシー差 → 操作が簡単なシステムを選定
- 運用ルールを徹底 → 属人的な使い方を避け、マニュアル化
まとめ|薬局DXが収益改善の切り札に

薬局のデジタル化・DXは単なる業務効率化ではなく、収益改善の強力な手段 です。
- 在庫管理DXでキャッシュフロー改善
- 電子薬歴や監査システムで効率化
- アプリやCRMで患者満足度向上
- オンライン対応で新たな収益源確立
デジタル化に積極的な薬局こそが、選ばれ続け、持続的に成長できる時代になっています。