薬局経営者が知っておくべき将来の市場変化と収益改善の方向性

薬局経営者が知っておくべき将来の市場変化と収益改善の方向性 薬剤師キャリア

薬局業界の未来を見据える重要性

調剤薬局は医療提供体制の一翼を担っていますが、薬価改定・人口動態の変化・デジタル化など、環境は急速に変化しています。これからの薬局経営者に必要なのは、「現在の収益改善」にとどまらず、将来の市場変化を踏まえた長期的な戦略です。

2年毎の報酬改定も大切ですが、もっと長期的な視点に立って社会の変化に適応していく必要があります。
例えば、処方箋がデジタルデータに移行すれば、今より簡単に患者は薬局を選ぶことが出来るようになります。つまり、医院門前の土地を独占してるからといって、今と同じ枚数が来るとは限らない。では、何が必要でしょうか。


薬局業界の未来を見据える重要性
変化する医療環境に対応する
調剤薬局を取り巻く環境
薬価改定
人口動態の変化
デジタル化の加速

将来の市場変化①:薬価改定と収益構造の変化

将来の市場変化①薬価改定と収益構造の変化
薬価の継続的引き下げ
薬価差益のさらなる縮小
従来モデルの限界
調剤報酬+薬価差益に依存
新たな収益源の必要性
収益構造の多角化が不可欠
収益改善にはOTC販売強化、在宅医療、医療連携がカギ

薬価は今後も定期的に引き下げられる見込みであり、(長期収載品の)薬価差益はさらに縮小します。
従来の「調剤報酬+薬価差益」に依存するモデルでは経営が不安定になり、薬局は新たな収益源を開拓しなければなりません。

ちょっとマニアックな話になりますが、薬価は毎年改定で下がります。ただし、薬剤料は基本的に右肩上がりです。これは新薬収載とその使用拡大によって、旧来の薬の薬剤料低減を上回る勢いで新しい薬に由来する薬剤料が増えるからです。
本稿では薬価差益縮小と薬価改定を直接結び付けて論じてますが、薬価差益の本質は製薬会社の販管費です。製薬会社の利益水準が高ければ、使える販管費が増え、結果として薬価差益は拡大します。その逆もまた然りです。
薬価改定しても全体の薬剤料は上昇傾向(平成30年5.48兆⇒令和5年6兆 厚生労働省発表)という事実は誤解のないよう把握してください。

収益改善の方向性

  • 薬価に依存しないOTC販売・健康食品強化
  • 在宅医療やオンライン服薬指導による加算収益の確保
  • 医療機関や介護施設との連携による処方箋安定化

将来の市場変化②:少子高齢化と医療需要の変化

将来の市場変化②少子高齢化と医療需要の変化
2040年の高齢化率予測
在宅医療、慢性疾患管理需要
小児科領域の処方傾向

日本の高齢化率は2040年に35%を超えると予測されており、在宅医療や慢性疾患管理が中心となります。逆に、少子化により小児科領域の処方は減少傾向にあります。

収益改善の方向性

  • 高齢者対応に強い在宅訪問薬局への転換
  • フレイル予防や生活習慣病対策の支援サービス展開
  • 地域包括ケアの中での「かかりつけ薬局」機能強化

将来の市場変化③:デジタル化・DXの加速

薬局経営における将来の市場変化③デジタル化、DXの加速
選ばれる薬局になるためのデジタル対応
オンライン診療への対応
電子処方箋システムの導入
患者が自由に薬局選択

オンライン診療や電子処方箋が普及すると、患者はより自由に薬局を選択できるようになります。デジタル対応が遅れる薬局は選ばれにくくなるでしょう。

収益改善の方向性

  • 電子処方箋へのスムーズな対応
  • アプリやLINEによる患者フォロー体制の整備
  • CRMやデータ分析を活用したパーソナライズ提案

薬局のDXについては下記も合わせてご参照ください

薬局のデジタル化・DX活用事例|IT導入で実現する収益改善

将来の市場変化④:競争環境の激化

薬局経営における将来の市場変化④競争環境の激化
大手チェーンの動向
M&Aの加速
積極的な出店戦略
規模の経済を活かした経営
地域薬局の強み
地域密着型サービス
医療機関との緊密な連携
患者との信頼関係構築

大手チェーン薬局がM&Aや出店を加速する一方で、地域薬局は淘汰の波に直面します。
しかし、地域密着型の強みを活かせば、大手にはない価値を提供できます。

薬価差益が縮小傾向にあるなか、調剤基本料の大手減算があるので、実は中小薬局の収益性は決して大手に見劣りしません。薬価差交渉サービスの利用等、しっかり収益改善に取り組めば、地域の薬局にまだまだチャンスはあります。

薬局の粗利拡大施策~薬価差益の向上

収益改善の方向性

  • 地域医療機関・介護事業所との強固な連携
  • 健康相談・イベント開催による住民との信頼関係構築
  • ニッチ戦略(漢方、在宅特化、特定疾患対応など)で差別化

下記記事では薬局経営におけるOTC医薬品と健康食品の物販強化戦略で収益向上を図る方法を紹介しています

薬局経営における物販強化戦略|OTC医薬品と健康食品の販売で収益向上

将来の市場変化⑤:薬剤師の役割変化

薬局経営における将来の市場変化⑤薬剤師の役割変化
調剤作業の自動化
AIと調剤ロボットの普及
薬剤師の価値シフト
技術から対人スキルへ

AIや調剤ロボットの普及により、単純な調剤作業は自動化されていきます。その一方で、薬剤師の価値は「患者対応」「健康支援」「多職種連携」にシフトしていきます。

収益改善の方向性

  • 服薬指導や生活支援に注力する薬剤師育成
  • 在宅医療や多職種連携に強い人材戦略
  • 教育研修を通じた薬剤師のスキル高度化

下記記事では患者満足度を高めて“選ばれる調剤薬局”になるための条件を解説しています

患者満足度を高める薬局づくり|選ばれる調剤薬局の条件とは?

薬局経営者が今から取るべきアクション

薬局経営者が今から取るべきアクション
収益源の多角化
調剤依存から脱却し、物販、在宅、デジタルサービスを収益の柱に
DX投資の推進
電子薬歴、在庫管理システム、電子処方箋対応の整備
地域戦略の強化
地域包括ケアの中でなくてはならない薬局としての地位確立
人材育成と働き方改革
教育研修と働きやすい環境整備は最優先課題
M&Aの活用
事業承継や成長戦略として経営基盤を強化
  1. 収益源の多角化
     調剤依存から脱却し、物販・在宅・デジタルサービスを収益の柱に。
  2. DX投資の推進
     電子薬歴、在庫管理システム、電子処方箋対応など、効率化と患者サービス向上を両立。
  3. 地域戦略の強化
     地域包括ケアの中で「なくてはならない薬局」としての地位を確立。
  4. 人材育成と働き方改革
     薬剤師不足を背景に、教育研修と働きやすい環境整備は最優先課題。
  5. M&Aの活用
     事業承継や成長戦略として、M&Aを前向きに検討することで経営基盤を強化。

まとめ|未来を見据えた薬局収益改善

未来を見据えた薬局収益改善
薬局経営の転換点
薬価改定で利益縮小
高齢化で在宅需要増大
デジタル化で選択肢拡大
収益改善の方向性
多角化:新たな収益源
DX:効率化と患者サービス
地域密着:独自の価値提供

薬局経営は今、大きな転換点にあります。

  • 薬価改定で利益は縮小
  • 高齢化で在宅医療需要は増大
  • デジタル化で患者の選択肢は拡大
  • 大手チェーンとの競争は激化
  • 薬剤師の役割は「調剤」から「健康支援」へシフト

こうした市場変化をチャンスと捉え、 多角化・DX・地域密着・人材戦略・M&A を組み合わせることが、薬局収益改善の方向性です。

将来の市場変化をチャンスに変える
未来を見据えて経営戦略をアップデートできる薬局こそが、地域に選ばれ、持続的に成長していく

未来を見据えて経営戦略をアップデートできる薬局こそが、地域に選ばれ、持続的に成長していくことができるでしょう。