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はじめに

薬局経営において収益の大部分を占めるのが「調剤報酬」です。
そのため、調剤報酬改定は薬局の経営環境を大きく左右する重要な要素であり、売却(M&A)の際にも無視できないリスクです。
「次回の改定で報酬が下がったら、売却価格はどうなるのか」
「改定前と改定後、どのタイミングで売却を進めるべきか」
本記事では、薬局売却における調剤報酬改定リスクと、その対策について解説します。
皆さん、こんにちは。YAKUDACHI鈴木です。
今回は薬局M&Aにおける調剤報酬改定とその影響です。
確かに調剤報酬改定は、薬局M&Aにおいて譲渡対価に重大な影響を与えます。
ただし、次回の改定はある程度見えていても、その次は?そのまた次は?
わからないですよね。
そのわからない中でも買い手は経営を継続します。
つまり、次回改定がどうであれ、買い手があなたの薬局を欲しい気持ちに変わりはないんです。
交渉の中で、報酬改定を理由にディスカウントをしたいというのが本音でしょう。
調剤報酬改定が薬局に与える影響

- 基本料の見直し
- 調剤基本料は薬局経営の基盤
- 大型チェーン差別や処方箋枚数による格差が導入されやすい
- 加算要件の厳格化
- かかりつけ加算や地域支援体制加算の取得要件強化
- 薬剤師の体制・夜間対応・在宅訪問実績が必要
- 薬学管理料の評価変更
- 服薬情報の一元管理・ICT活用の進展により報酬体系が変化
- 電子薬歴やオンライン資格確認システムの導入が前提化
私も前職は大手チェーンにいたので、調剤基本料の大手減算が導入されたときは、度肝を抜かれました。
確かに医療費は貴重な社会資源です。儲けすぎ批判は的を得ていますが、大手が利益拡大したのは紛れもなく経営効率が向上したためであって、中小に比べてあくどいからではありません。
逆に中小企業で、大手になりたくなくて中小のまま甘んじている企業がどれだけあるでしょう?
大手が大手たるゆえんは経営が抜きんでて素晴らしかっただけです。アインも日調も元々は1薬局の小さな中小企業だったはず。経営効率を追求し、規模が拡大したのであれば資本主義における成功と言えないでしょうか。
経営が優れた会社が大きくなり、社会によい影響をあたえ、そうでない企業は小さいままか廃業して消えていく。結果社会全体は効率化され、少ない費用で多くの便益を享受できます。
調剤報酬改定リスクと売却交渉への影響

- 売却価格の下落リスク
改定で報酬が下がると、利益が圧迫され、企業価値(株価評価)が低下 - 買い手の投資判断の慎重化
改定直後は経営への影響が不透明なため、買い手が交渉を控える傾向 - 売却スケジュールへの影響
改定前後で価格や条件が大きく変わるため、タイミングの見極めが重要
私は前職の大手時代、M&Aの買い手担当者でしたが、はっきり言って、次回改定くらいは参考にしますが、その次、そのまた次なんて考えても無駄なので、一切考慮してませんでした。
とは言え、(私見ですが)調剤報酬の改定には流れがあり、国が考える医療のあるべき姿にむかって、改定ごとに報酬その他で業界を規制していくことにかわりはありません。
例えば、後発品使用が必要と国が考えたので、GE率が報酬に盛り込まれ、改定ごとに点数の増加やハードルの向上などがとられました。
そういった、改定の流れにそった薬局の譲渡対価は一定評価されたものになりますし、隣の病院の薬剤部を外に出しただけ、のような国から見ても、医薬分業のあるべき姿から遠い薬局は評価がさがる傾向にあります。
実務対応のポイント

- 財務シミュレーションの実施
- 改定による収益減少をシナリオ別に試算
- 「改定前の収益」「改定後の予測収益」を比較し、リスクを可視化
- 加算取得体制の強化
- 地域支援体制加算やかかりつけ加算を積極的に取得
- 承継後も安定した報酬が得られる体制を示す
- ICT・在宅医療への対応
- 電子薬歴・オンライン資格確認の導入
- 在宅訪問サービスの実績を積み上げる
- 売却タイミングの見極め
- 改定直前は不確定要素が多く、価格が下がる可能性
- 改定後に影響を踏まえた数値が出た段階で交渉した方が有利な場合もある
正直、売却タイミングはわかりません。
確かに、改定の影響が見えていないと算定しづらい側面はありますが、そうは言ってもどうせ買った後も隔年改定なので、次回改定だけが特別重要とも言えないからです。
株式投資と同じで、売るべきタイミングは市況的には正解はなくて、自分都合でよいと思います。
余談ですが、薬局M&Aの市況が過去一番良かったのは、はるか昔、2010~2015あたりと言われています。とっくに過ぎ去ったので、ひょっとしたら今日が一番売却によい日かも知れませんね。
成功事例と失敗事例
成功事例
関東のA薬局は、調剤報酬改定前に財務シミュレーションを実施し、収益が安定的に維持できることを買い手に提示。
結果として「改定後も強い薬局」と評価され、相場より高値で売却できた。
失敗事例
関西のB薬局は、改定直前に交渉を始めたが、買い手が「改定影響が不明」と判断し条件を大幅に下げて提示。
最終的に売却を断念し、改定後に再交渉する羽目になった。
実務チェックリスト

- 調剤報酬改定の最新動向を把握しているか
- 改定による収益影響を試算したか
- 加算を最大限取得できる体制を整えているか
- ICTや在宅対応など「改定に強い薬局」の姿勢を示しているか
- 売却のタイミングを戦略的に検討したか
まとめ
薬局売却において調剤報酬改定リスクは、価格や交渉に大きな影響を与える要因です。
- 改定の収益影響をシミュレーションしておくこと
- 加算取得やICT化で「改定に強い薬局」をアピールすること
- 改定前後のタイミングを見極めて売却を進めること
いかがでしたでしょうか。
調剤報酬改定が薬局M&Aの譲渡対価に影響すること、またその影響は限定的で対処可能なことご理解いただけましたか。
なお、弊社YAKUDACHIでは詳細な改定影響額の分析により、正確な株価シミュレーションを無償にて提供しております。
薬局の売却をお考えの方は、是非こちらのお問い合わせフォームよりご連絡ください。
次回は「薬局売却におけるのれん代評価|見えない価値を価格に反映させる方法」をお届けします。
薬局M&Aでよく聞く「のれん」とは具体的になにを指すのでしょうか。
また、その算定はどのようになされ、対策は可能か?
是非、ご参照ください。