薬局売却と競業避止義務|売却後に制限される範囲と注意点 悪意ある売り手に騙されないために

薬局売却と競業避止義務 薬局 M&A

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はじめに

薬局を売却する際、売り手が注意すべき大きな契約条件のひとつが「競業避止義務」です。
これは、薬局を売却した後に同じ地域や同業種で新たに薬局を開業したり、競合他社に協力したりすることを制限する義務を意味します。

買い手にとっては、売り手がすぐ近くに新しい薬局を出して患者を奪うリスクを避けるために不可欠な条項です。
一方で売り手にとっては、将来の働き方や生活に大きな制約を与える可能性があり、交渉段階でしっかりと確認しておく必要があります。

皆さん、こんにちは。YAKUDACHI鈴木です。
今回は薬局M&Aにおける競業避止義務についてお届けします。
ちょっと難しい単語ですが、なんとなく意味はおわかりになるのでないでしょうか。
読んで字のごとく、ライバルになるような事業を行うことを禁止する義務です。
薬局であれば、メインとなる処方元からの処方箋応需を目的としていたり、近所への薬局開設などが該当します。
通常は競業の範囲について、最終契約書に規定するので、明確ですが、売買当事者間での合意が明記されていないと思わぬトラブルに巻き込まれかねません。信頼できるM&A仲介を利用していない場合には、少なくとも最終契約書に競業の範囲について記載があるか再確認してください。
ちなみに事業譲渡の場合、契約書の記載がなければ隣接市町村内にて20年間競業禁止です。めちゃくちゃ広い範囲で、同一業態が禁止されるので、最終契約の重要性がご理解いただけると思います。


競業避止義務とは?

  • 定義
    契約に基づき、売却後に一定期間・一定地域で同業の事業を行わない義務。
  • 目的
    買い手の投資を保護し、承継後の経営を安定させる。
  • 典型的な規定例
    • 「売却後3年間、半径5km以内で薬局を開設してはならない」
    • 「売却後2年間、競合薬局への就職や顧客勧誘を禁止する」

薬局のM&Aで競業の範囲をさだめる場合に多い表現は「主たる処方元を○○クリニックとする調剤薬局を開設しない」でしょうか。
皆さん、ご存じの通り、薬局は数百メートル離れたら、もう競業しません。施設在宅とかは除きますが、メインの処方元さえ押さえておけば、あとはご自由にどうぞといった姿勢ですね。
全国チェーンの場合には、「半径○○キロメートル」のような表現で競業を禁止すると、自動的に自社の他薬局が該当してしまいます・・・


薬局売却における競業避止義務の特徴

  1. 地域の制限
    • 「半径○km以内」という形で設定されることが多い
    • 都心部では1km、地方では5〜10kmと変動する
  2. 期間の制限
    • 通常は2〜5年程度
    • 長すぎる制限は裁判で無効とされる可能性がある
  3. 活動内容の制限
    • 薬局の新規開設の禁止
    • 他薬局への就職・コンサルティング禁止
    • 取引先や患者の勧誘禁止

競業避止で買い手からセンシティブにとらえられがちなのは、在宅処方箋でしょう。
特に施設在宅であれば、失ったときのPLインパクトが大きく、下手したら買収自体が失敗になりかねません。
競業の範囲については慎重に検討する必要があります。

私がM&Aの買い手であれば、そもそも在宅処方箋は割り引いて考えます。
競業避止義務でいくら縛ろうとも、正直抜け穴はあります。契約書で担保できる範囲は限定的でしょう。シンプルに在宅処方箋は悪意ある売り手にとられる可能性があるとみて、一定の割引率で収支想定すべきですね。

逆にあなたが売り手で在宅処方箋を評価して欲しい場合、処方の継続性はしっかりアピールすべきでしょう。何も言わなければ、買い手は自動的に割り引いていると思ってください。
詳しくはお問い合わせください


競業避止義務が売り手に与える影響

  • 生活設計への影響
    → 再び薬局を開業したい場合、地域や時期を大きく制約される
  • キャリアへの影響
    → 売却後に薬剤師として働きたい場合、就職先が限定される可能性あり
  • 家族への影響
    → 親族が同じ地域で薬局を経営している場合、連鎖的に影響する可能性もある

法律上の義務なので、あえて厳しい表現で記載していますが、競業避止義務は善意の売買当事者間であれば、まず問題になりません。
私もM&Aに従事して約10年ですが、1件しか競業でトラブルは経験ありませんし、その1件は完全なる悪意でした。
詳細ご興味ある方はお気軽にお問い合わせください。お話しできる範囲でお伝えします。


実務対応のステップ

  1. 制限範囲の確認
    • 契約書に記載された地域・期間・活動内容をチェック
  2. 交渉による調整
    • 「半径10km → 5kmへ縮小」
    • 「5年 → 3年に短縮」など具体的に交渉可能
  3. 代替案の検討
    • 承継後は別の地域で新規開業
    • コンサルタントや教育活動など制限外の業務にシフト
  4. 専門家への相談
    • 弁護士・M&Aアドバイザーを通じて契約内容を精査

成功事例と失敗事例

成功事例

関東のA薬局は、買い手から「10年間の競業避止義務」を提示されたが、交渉の結果「3年間・半径3km」に縮小。
売却後は少し離れたエリアで新規開業し、生活基盤を維持できた。

失敗事例

九州のB薬局は、競業避止義務の条項を深く確認せず契約。
売却後に再び薬局勤務を希望したが「同一県内での薬局勤務禁止」とされ、希望のキャリアが断たれてしまった。


実務チェックリスト

  • 契約書に記載された地域・期間・制限内容を確認したか
  • 制限が長すぎたり広すぎたりしないか交渉したか
  • 承継後の生活・キャリアプランを考慮したか
  • 弁護士に契約書レビューを依頼したか

まとめ

薬局売却における競業避止義務は、買い手にとって経営安定のために必須である一方、売り手にとっては将来の自由を制約するリスクがあります。

  • 制限範囲・期間・内容を正確に確認する
  • 生活やキャリアに支障がないよう交渉する
  • 専門家を活用し、リスクを最小化する

いかがでしたでしょうか。
今回は薬局M&Aにおける競業避止義務についてお届けしました。
善意の当事者同士でトラブルなく取引したものですね。

次回は「薬局売却と税務調整|譲渡益課税・消費税・相続税対策まで徹底解説」をお届けします。
薬局M&Aと税務は切っても切れない関係です。大きな金額が動く取引だからこそ、税務対策いかんによって手取り額は結構上下します。
是非ご参照ください。