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はじめに
薬局の売却において、事業の価値を支えるのは「従業員」です。
薬剤師や事務スタッフが安心して働き続けられる環境を整えなければ、承継後の経営が不安定になり、買い手の評価も下がってしまいます。
特に重要なのが「従業員引き継ぎ教育」です。
売却後、従業員が新しい経営体制にスムーズに適応できるように教育や研修を行うことで、離職リスクを抑え、経営の安定を実現できます。
本記事では、薬局売却に伴う従業員引き継ぎ教育のポイントと実務対応を解説します。
皆さん、こんにちは。YAKUDACHI鈴木です。
今回は薬局M&Aにおける従業員の引継ぎ教育です。
大手が買い手の場合にはPMIプログラムの一環として引継ぎに関する教育が実施される場合が多いです。中小企業の従業員から大企業の従業員へ変わるので、少し戸惑う方もいますが、しっかり教育すれば問題なく移管できます。
大企業では内部統制がしっかり管理されているので、その部分や、後はシステム関連の教育が多いでしょうか。
従業員引き継ぎ教育の重要性

- 経営の安定
- 従業員が新体制に早期に適応できれば、患者サービスの質を維持できる
- 離職防止
- 教育や研修を通じて不安を解消することで、従業員のモチベーションを維持
- 買い手の評価向上
- 引き継ぎ体制が整っている薬局は、買い手にとって安心材料となり、売却条件の改善につながる
M&Aのタイミングで実施される教育研修の目的は、この離職防止にあると言ってもよいでしょう。
買い手からしても、予定されていた人員が離脱すると、単純な頭数としての従業員としてだけでなく、シンプルに運営ノウハウが引継ぎ困難となります。しっかり教育を実施して、自社の社員としてのロイヤルティを高めたい狙いもあります。
もちろん、従業員の方にとっても安心できるのでよいことですね。
引き継ぎ教育で扱うべき内容

- 新体制の方針共有
- 経営方針・ビジョン・ミッションを伝える
- 組織変更や役職の見直しがある場合は明確に説明
- 業務フローの確認
- 調剤業務・在庫管理・レセプト請求などの基本業務
- ITシステムや電子薬歴の運用方法
- 患者対応の統一
- 買い手企業の接遇方針を共有
- 地域医療連携のルールを確認
- 労務・人事制度の説明
- 給与・福利厚生・勤務体系の変更点を周知
- 労働条件に関する疑問を解消
色々記載してますが、従業員の方からすれば、最も大きな関心事は給与面でしょう。不利益変更しないことを真っ先に伝えるとよいでしょう。
ただ、大規模なM&Aの場合など、従業員教育が複数回に跨るばあいもあると思います。バラバラと質問事項に応えるのではなく、主な疑問点など、事前に整理して(時には社内調整して)のぞみましょう。
Aさんに答えた内容とBさんに伝えた内容に齟齬があると、従業員間で混乱が生じます。M&A直後は特にセンシティブな時期なので、ほんのちょっとのミスが、思わぬ噂話に発展したりもします。
実務対応のステップ

- 教育プログラムの設計
- 売却契約締結後から引き渡しまでの期間で実施
- 座学・OJT・説明会を組み合わせる
- キーパーソンの育成
- 薬局長やベテラン薬剤師を中心に教育担当を設定
- 現場でのフォロー体制を強化
- 個別面談の実施
- 従業員一人ひとりの不安や要望をヒアリング
- 必要に応じて買い手企業の人事担当者と同席
- 研修記録の作成
- 研修内容を文書化し、後から確認できる体制を整備
できれば、在籍職員の方の中から新たな講師役を選抜できるとよいでしょう。
もちろん、事前に教育期間は必要になりますが、M&Aの買い手が講師をやると、どうしても見え方は上から目線になってしまいます。身内から講師が出ているとなれば、買われた側の捉え方も柔らかくなります。
成功事例と失敗事例
成功事例
関東のA薬局は、売却後に従業員向けの研修プログラムを実施。
買い手企業の担当者も参加し、方針・業務フロー・人事制度を丁寧に説明した結果、従業員の離職ゼロを実現した。
失敗事例
関西のB薬局は、売却後の引き継ぎ教育を軽視。
方針や待遇の説明が不足し、従業員の不安が高まり、薬剤師の退職が相次ぎ、経営安定に大きな悪影響を与えた。
実務チェックリスト

- 引き継ぎ教育プログラムを設計したか
- 新体制の経営方針を従業員に共有したか
- 業務フロー・人事制度を丁寧に説明したか
- キーパーソンを育成し、フォロー体制を整えたか
- 研修内容を記録し、従業員が後から確認できるようにしたか
キーパーソンの把握、活用は効果的です。
元々いる従業員の方がスピーカーになると、その他の従業員の方も聞いてくれたりします。
売り手と買い手の一体感と言った意味でも効果的です。
特に薬局のM&Aの場合にはアナログというか、対人関係がM&Aの成否に影響します。
まとめ

薬局売却における従業員引き継ぎ教育は、経営の安定と従業員の安心を両立させるために欠かせません。
- 新体制の方針・業務フロー・人事制度を丁寧に共有する
- キーパーソンを育成し、研修プログラムを整える
- 従業員の不安を解消し、離職リスクを最小化する
次回は「薬局売却と地域医療連携|承継後も地域に信頼される薬局であるために」をお届けします。