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はじめに
薬局は地域住民にとって「最も身近な医療機関」のひとつです。
そのため薬局売却は単なる経営者の判断にとどまらず、地域医療に大きな影響を及ぼします。
「売却で地域医療が衰退するのではないか」
「大手に統合されることでサービスが変わってしまうのではないか」
こうした不安の一方で、売却によって「地域医療体制が強化される」ケースも少なくありません。
本記事では、薬局売却が地域医療に与える影響とその対応策を整理します。
薬局売却が地域医療に与えるプラスの影響

1. 経営基盤の安定化
- 大手チェーンに承継されることで資金力が強化
- 最新の調剤機器やICTシステム導入が可能に
- 在宅医療や24時間対応など新サービスの展開が進む
2. 人材確保の改善
- 個人薬局では難しかった薬剤師の採用が、大手グループのネットワークで容易になる
- 教育・研修体制が整い、薬剤師のスキルアップに寄与
特に薬剤師採用困難エリアでの大手チェーンの薬剤師調達能力は圧倒的です。社内に常に浮いている薬剤師がいるので、極端な話ですが、明日から沖縄!とか北海道○○村!とかも可能です。また、薬剤師紹介会社とのコネクションも強いので、全国どこでも勤務可能な求職者がいればいち早く情報が集まります。さらには新卒採用で毎年百人単位で入社するので、地方勤務希望者を配属することもできます。
中小企業と大手チェーンでは、人材調達能力に雲泥の差があることは事実です。
3. 医療連携の強化
- 買い手企業が持つ広域ネットワークを活用し、地域病院や診療所との連携が強化
- 多職種連携や在宅医療での役割が拡大
👉 売却は「地域医療の空白を埋めるチャンス」になることがあります。
薬局売却が地域医療に与えるマイナスの影響

1. 地域密着性の低下
- 地元経営者の退任で「顔が見える関係」が薄れる
- 大手チェーンによる画一的な運営で「地域ならではの柔軟対応」が減少
よく言われるのは、大手チェーンの薬局は薬剤師がコロコロ変わる、ですね。
これは事実だと思います。
ただ、地域密着性が一概に低下するかと言えばケースバイケースですね。
中小企業経営者が全員地域密着かと言えば、そんなわけないですし、大手は現場スタッフの他に営業人員をもっていますので、地域薬剤師会とコネクションを作って、あらたな地域の取り組みを始めることもあります。
2. 従業員・患者の不安
- 経営方針の変化により従業員が退職するリスク
- 患者が「馴染みの薬剤師がいなくなった」と感じ、他薬局に流れるケース
従業員の退職は、地域密着とは少しずれる話題かも知れませんが、一部のM&Aでは起こります。
ただ、退職理由をよくよく聞いてみると、その多くはそもそも辞めるつもりだったが、会社が変わって言い出しやすかった場合も多いです。
多くの場合、薬局M&Aでは従業員の基本給等は引き継がれますし、退職金制度や福利厚生など大手ならではの新しい待遇も追加されます。従業員の方にとって薬局M&Aがデメリットとなるケースは少ないと言えます。
3. 医師との関係悪化
- 地元医師が「外部資本の参入」に警戒感を抱くことがある
- 医療連携が弱まり、処方箋枚数が減少するリスク
👉 売却は「地域医療の信頼関係を損なう可能性」も含んでいます。
成功する薬局売却と地域医療の両立

1. 売却先の選定
- 価格だけでなく「地域医療への理解」を重視して選ぶ
- 在宅医療や地域連携に積極的な企業を選定
2. 従業員・患者対応
- 売却後も「従業員は継続勤務」と伝えることで安心感を与える
- 店頭での告知やDMを通じて患者に丁寧に説明
3. 医師との信頼維持
- 売却前後に経営者が医師に直接説明
- 「サービスは変わらない」と保証し、関係を継続
4. 地域医療活動への参加
- 買い手企業が地域医療連携会議や在宅医療チームに積極参加
- 「地域医療の一員」としての姿勢を示す
薬局売却の成功事例と失敗事例

成功事例
北海道のA薬局は、大手チェーンに売却後も在宅医療部門を強化。
地域包括ケアに積極参加し、地元医師からの信頼も厚くなりました。
失敗事例
九州のB薬局は、首都圏大手に売却後、薬剤師の異動が多発。
「馴染みの顔」がいなくなり患者が他薬局へ流出。
地域医師も不信感を抱き、処方箋枚数が減少しました。
ヒトは問題が起こると犯人捜しをしたくなるものです。
その際にやり玉に挙げられるのが「変化」です。
前後で変化したことがあると、問題の原因をそこに求める傾向があります。
「風邪を引いたのは昨日初詣で人混みに行ったからだ」なんてよく聞く話ですが
潜伏期間を経ずにウィルス暴露から翌日発症するわけないです。
薬局売却を地域医療に活かすための3つの視点

- 地域密着性をどう守るか
→ 従業員・患者・医師への説明を徹底し、信頼関係を維持する - 買い手企業の方針をどう見極めるか
→ 単なる規模拡大ではなく、地域医療を大切にする企業を選ぶ - 経営者自身の役割をどう残すか
→ 一定期間は顧問として関与し、橋渡し役を担う
まとめ

薬局売却は、地域医療にとってリスクとチャンスの両面を持っています。
- プラスの側面:資金力・人材力・ネットワークの強化
- マイナスの側面:地域密着性の低下、信頼関係の喪失
経営者に求められるのは「地域医療を守りながら売却を進める」姿勢です。
次回は「薬局売却と承継のベストタイミング|高値売却と地域医療を守るための判断基準」をお届けします。