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はじめに
薬局売却を検討する際、経営者が最も悩むのが「従業員と患者への影響」です。
売却に成功しても、従業員の離職や患者の不信感が広がれば、薬局の価値そのものが低下しかねません。
実際、薬局M&Aで失敗した事例の多くは「従業員・患者対応の不足」によるものです。
一方で、適切な対応を行った薬局は、従業員の定着率が高まり、患者からの信頼も維持でき、結果的に売却後も安定した経営が続くことがわかっています。
本記事では、薬局売却における従業員・患者対応の重要性と、具体的な実践方法を解説します。
皆さん、こんにちは!
YAKUDACHI鈴木です。
今回は、薬局売却M&A時における従業員対応です。
経営者と従業員は、情報をすべて共有することはできません。
特にM&Aの場合には、買い手や医師、テナントの大家さんなど、関係者が多くいるため情報漏洩のリスクを考えれば、従業員への開示は後手に回らざるを得ません。
とは言え、信頼してついてきてくれた従業員への信義則もあるので、結構悩ましい問題だと言えます。
結論、社内のキーパーソンにだけ開示し、それ以外には直前まで秘匿、これが王道です。
全員にちゃんと事前に伝えられたら、そりゃいいですけど、トラブりますからね。
あることないこと噂が広がって、門前Drが激オコ、大家は不動産会社と結託して家賃値上げ要求とかなったら、目も当てられません。
ちなみに弊社YAKUDACHIでは薬局M&Aの際には、必ず重要関係先への開示スケジュールを前もって打ち合わせます。どの順番でいつ開示するのか事前に決定し、最も低リスクなスケジュールで実行します。
薬局売却時の従業員対応の重要性

1. 離職リスクの回避
薬剤師不足が深刻な状況では、従業員が離職すると薬局の評価は急落します。
売却の噂が広がっただけで「不安」を理由に転職する従業員も少なくありません。
👉 事前に誠意ある説明を行うことで、従業員の不安を最小限に抑えることが重要です。
2. 雇用条件の引き継ぎ
買い手企業が提示する雇用条件(給与、勤務時間、勤務地など)は、従業員にとって大きな関心事です。
特に「待遇が悪化するのではないか」という懸念は強く、これに正しく対応できなければ退職につながります。
3. 信頼関係の維持
売却を秘密裏に進めすぎると、従業員が「裏切られた」と感じるケースがあります。
結果としてモチベーションが下がり、薬局全体の雰囲気が悪化するリスクがあります。
薬局売却時の従業員対応の具体的ステップ

- 経営層とキーパーソンへの事前説明
- 管理薬剤師や古参スタッフには早めに情報を共有し、協力を得る
- 従業員全体への説明会開催
- 売却理由と今後の方針を誠実に伝える
- 雇用条件の明示
- 買い手企業と調整し、労働条件の維持・改善を約束する
- 相談窓口の設置
- 個別相談を受け付け、不安を払拭する
👉 ポイントは「不安を放置せず、双方向のコミュニケーションを取ること」です。
薬局売却時 患者対応の重要性

1. 信頼関係を損なわない
薬局は地域住民にとって「健康を守る拠点」です。
経営者が変わっても、患者にとっては「安心して通えるかどうか」が最も重要です。
2. 医療機関との連携
門前医師や地域病院との関係性も、患者対応の一部といえます。
買い手が変わることで医師からの信頼が揺らぐと、処方箋枚数が減少する可能性があります。
3. 患者への情報提供
経営者交代を知らされずに患者が「薬局の雰囲気が変わった」と感じれば、不信感が生まれます。
逆に、事前に丁寧な説明をすれば「変わらず安心して通える」と信頼を得られます。
薬局売却時 患者対応の具体的ステップ
- 売却成立後の適切なタイミングで告知
- 公式なお知らせを店頭掲示・DMで実施
- 患者に向けた説明文の工夫
- 「サービス内容は変わらない」「従業員は継続勤務」といった安心感を伝える
- 買い手企業の紹介
- 新体制の方針や特色を分かりやすく案内する
- 医療機関との連携強化
- 医師に対しても「患者サービスは変わらない」ことを丁寧に説明する
薬局売却時 従業員対応 成功事例と失敗事例

成功事例
関東地方のA薬局は、売却前に従業員への説明会を複数回開催。
雇用条件の維持を買い手と合意し、患者への告知も丁寧に行った結果、離職ゼロで売却を完了。
売却後も処方箋枚数は安定し、買い手企業との統合作業もスムーズに進みました。
A薬局の事例はあくまで、1薬局の法人の場合です。
複数の薬局を運営する法人が、売却前に従業員へM&Aの内容を開示することはほぼありません。
開示するとしても、一部のキーパーソンだけになります。
薬局のM&Aは医師や大家といった重要関係先の意向によって、クロージング直前までどんでん返しが起こることがあります。まさか、売ると言われた従業員とそのまま働くわけにもいかないので、従業員開示はどうしても遅れます。
失敗事例
関西地方のB薬局は、売却を従業員に直前まで隠していました。
結果的に「裏切られた」と感じた薬剤師が複数名退職し、処方箋対応が困難に。
患者からも不安の声が広がり、売却直後に売上が急減しました。
上の事例で示したパターンはむしろ例外とも言えます。
今まで数多くの薬局M&Aに立ち会ってきましたが、M&Aに際して従業員が退職する薬局には特徴があります。それは、レベルの低い従業員がごみ溜めのように残った薬局です。
勤務中の私語や私用スマホの閲覧、不平等な勤務シフトの作成や仕事の割り振り、従業員同士のモラハラ、医薬品や金銭の盗難などなど。
職場というのは、正のスパイラルも負のスパイラルもあり、良い職場は良い従業員が集まり、反対にダメ従業員にとっては居心地悪く、いなくなります。逆に、ダメな職場はダメ従業員にとっては安住の地ですが、良い従業員は気持ち悪くて退職してしまいます。
この繰り返しの結果、一部の薬局はダメ従業員だらけの職場になります。ただし、M&Aが起きると、そんな職場が一気に買い手のルールになるため、ダメ従業員にとっては居心地が相当悪くなります。当然、一部はすぐに退職することになります。
買い手にとっては、確かに買収直後の退職は痛手ですが、どちらかと言えばトラブルメーカーが早くいなくなってくれて、結果的にラッキーと言えます。
従業員・患者対応チェックリスト

- キーパーソンに事前説明を行ったか
- 全体説明会を実施し、売却理由を誠実に伝えたか
- 雇用条件の維持・改善を買い手と調整したか
- 個別相談窓口を設けたか
- 患者向けに安心感を伝える告知を準備したか
- 医療機関にも経営者交代を説明したか
まとめ
薬局売却を成功させるには、単に「高値で売る」だけでなく、従業員と患者の信頼を維持することが欠かせません。
- 従業員には誠実な説明を
- 患者には「サービスは変わらない」という安心感を
- 医療機関とは信頼関係を継続的に築く
この3点を徹底することで、売却後のトラブルを防ぎ、薬局の価値を最大限に守ることができます。
薬局売却をお考えのオーナーは是非当社までご依頼ください。従業員や重要関係先への開示スケジュールもしっかり用意して、スムーズなM&Aを実現します。こちらのお問い合わせフォームよりご連絡ください。
次回は「薬局売却の失敗事例と回避策|後悔しないM&Aの進め方」をお届けします。