Contents
はじめに
薬局売却を成功させるには、売り手側だけでなく「買い手企業が何を求めているか」を理解することが重要です。
買い手は単なる薬局の数を増やすのではなく、「長期的に安定した収益が得られるか」「地域医療にどのように貢献できるか」を基準に判断します。
本記事では、買い手企業が薬局売却をどう評価しているのか、その視点を解説します。
皆さん、こんにちは。YAKUDACHI鈴木です。
今回は薬局M&Aにおける買い手側の視点につき紹介します。
私は前職で大手薬局チェーンのM&A担当者でした。
100社を超える企業の評価をしてきた経験に基づき、買い手企業がどんな視点に立って判断するのか解説します。
薬局売却において買い手企業が注目するポイント

1. 収益の安定性
- 処方箋枚数が安定しているか
- 季節変動や医師依存度が高すぎないか
- 薬価改定による影響をどれだけ受けやすいか
2. 薬剤師の定着率
- 管理薬剤師や常勤薬剤師が安定しているか
- 離職率が高い薬局はマイナス要因
3. 医師・病院との関係
- 地域の基幹病院やクリニックとの関係性が強いか
- 医師の診療方針を理解し、信頼関係を築いているか
4. 立地条件
- 病院門前や医療モール内は高評価
- 競合が少ない地域はさらに評価が高い
5. 成長余地
- 在宅医療や地域包括ケアへの展開可能性
- OTC販売やオンライン服薬指導など新サービス導入の余地
薬局M&Aにおける買い手企業の種類と特徴

1. 大手チェーン
- 全国展開を目指して積極的にM&Aを実施
- ブランド力・経営ノウハウが強み
- 買収後に経営統合(PMI)がスムーズ
2. 中堅チェーン
- 地域展開を重視
- 医師や地域との関係性を重視する傾向
- 従業員や患者に配慮した柔軟な対応が可能
3. 投資家系ファンド
- 高収益薬局を対象に投資
- 数年後の再売却を前提にする場合もある
- 財務面の透明性と収益性を重視
上記買い手の中では、投資ファンドが唯一の非薬局運営法人です。長期的には他社に売却されることが予想されます。
企業ではありませんが、小規模薬局では個人の独立薬剤師も薬局の買い手候補になります。
買い手企業が嫌うリスク

- 医師依存度が高い薬局
特定の医師に依存していると、医師の移転や引退で収益が急減するリスクあり。 - 人材不足の薬局
薬剤師採用が難しい地域では買い手が敬遠する傾向。 - 不透明な財務状況
粉飾決算や債務超過は大きなマイナス要因。 - 地域からの評判が悪い薬局
患者離反のリスクがあるため、買い手は慎重になる。
財務内容が悪いのは、評価を落とせばよいだけですが、不透明な部分は買い手に悪い印象を与えます。経験のある買い手担当者は「なにか隠してませんか?」とは聞きません。黙って評価を引き下げます。大手の立場からすれば、怪しい案件はスルーすればよいだけなんです。
成功事例と失敗事例
成功事例
関東のA薬局は、処方箋枚数が安定し、在宅医療にも積極的に取り組んでいた。
買い手企業は「地域包括ケアに強い薬局」として評価し、希望以上の価格で売却が成立。
失敗事例
関西のB薬局は、特定の医師に依存しており、医師が転院した途端に処方箋枚数が激減。
買い手企業はリスクを懸念し、最終的に希望価格の半分以下での売却となった。
買い手担当者の視点に立てば、成功するM&Aの必須項目は
開示、開示、開示です。
シンプルに全ての情報をさらけ出すことです。
不都合なことや、恥ずかしいこともしっかり開示してくれていれば、買い手として対処できます。売り手にとっては初めてのM&Aであっても、買い手担当者は買収経験豊富です。
提示できるオプションがきっとあります。
都合の悪い事実こそ、早めに開示してください。後出しされれば、買い手としては他にもリスク要因を隠していると判断せざるを得ません。
余談ですが、大手チェーンであれば数十件~のM&A実績があります。検討した案件は千件を超えるでしょう。男女関係や隠し財産、賄賂なんかは聞き飽きてるので、開示しても全然驚かれませんのでご安心を。
買い手に選ばれる薬局になるための準備

- 収益の安定化
→ 複数の医療機関と関係を築き、処方箋依存度を分散する。 - 人材定着の工夫
→ 教育・研修制度を整え、薬剤師が長く働ける環境を作る。 - 地域連携の強化
→ 医師・病院・行政との関係性をアピール材料にする。 - 財務透明性の確保
→ 決算書や資金繰りを整理し、買い手に安心感を与える。
まとめ
薬局売却において買い手企業は、単なる収益額ではなく「安定性・人材・地域連携・成長余地」を重視しています。
- 大手は規模と収益性、中堅は地域性、投資家は財務安定を評価
- 医師依存や人材不足は大きなマイナス要因
- 「選ばれる薬局」になるためには、売却前からの準備が不可欠
いかがでしたでしょうか。
今回は買い手企業の目線に立って、薬局M&Aにおける考え方を整理しました。
M&Aが売買である以上、売り手と買い手の同意でしか物事は決まりません。
相手の視点に立って、自社の情報をしっかり開示し、正当な評価を獲得しましょう。
次回は「薬局売却と法務・コンプライアンス|契約リスクを防ぐための実務ポイント」につきお届けします。
薬局は一部で個人商店のような気質があり、コンプライアンス意識が低い場合があります。
ただし、M&Aにおいては厳密に法務が適用されます。「そんなつもりじゃなかった」と言っても手遅れですので、コンプラ違反だけはさけましょう。
是非ご参照ください。