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はじめに
薬局経営者にとって「いつ売却・承継すべきか」というタイミングの判断は最も難しいテーマのひとつです。
早すぎれば利益を逃す可能性があり、遅すぎれば価値が下がるリスクがあります。
「後継者がいない」
「薬価改定の影響で利益が減ってきた」
「自分の年齢や健康面が気になる」
こうした理由でタイミングを悩む経営者は多く、本記事では薬局売却・承継のベストタイミングを見極めるためのポイントを解説します。
あなたは株式投資をしますか?
東証で取引した経験があればわかりますが、あなたが売ったその時に買った人がいます。同様にあなたが買ったその時に売った人がいます。
つまり、あなたが売るべき、買うべきと思ったタイミングで全く逆に考えた人が日本のどこかにいたということです。
市場環境で売却のベストタイミングを計ることができないと理解いただけましたか?
極論、自己都合で売却するのがベストタイミングです。
とはいえ、参考情報は必要なので以下に記します。
タイミングを決める3つの主要要因

1. 経営環境の変化
- 薬価改定の影響:2年ごとの改定で収益性が変化
- 調剤報酬制度の動向:地域包括ケア、在宅医療への評価強化
- 競合環境:ドラッグストアや大手チェーンの進出
👉 政策や制度が追い風になる前に売却するのが理想です。
まぁ、薬局経営に長年携わってきた方ならおわかりかと思いますが、自称専門家の方々の予想のあてにならないこと・・・薬剤師オワコンとか、○○年までに2割減少とか。センセーショナルなことを言いふらして注目を集めたいだけの方、多いですからね。
2. 薬局自身の経営状況
- 処方箋枚数が安定している
- 利益率が確保できている
- 人材が定着している
👉 経営が安定しているときに売却した方が評価額は高くなります。
↑これはその通りなんですけど、まぁ、だったら売りたくならないような・・・
3. 経営者個人のライフステージ
- 健康状態
- 引退時期の希望
- 老後資金の計画
👉 「売りたい」より「売れる時期」を優先して判断することが重要です。
薬局売却は自己都合で決めるのがベストです。
○○歳までに引退する!とかが明確でよいです。
2年くらいかけると、満足できる株価を引き出すこともできますし、こだわりがあるなら後継者の人柄を見定めることもできます。従業員のかたに時間をかけて寄り添うこともできます。
ちなみに注意していただきたいのが老後資金の計画です。計画はよいですが、あなたの老後にいくらかかるから株価○○円は誰も納得しません。無責任な営業が「株価○○円で買う人、必ず見つけるので契約してください!!」とか言うかもしれませんが、セールストークです。
案件化したら、営業成績にしてほったらかしにされるでしょう。
薬局売却のベストタイミングを逃すとどうなるか

- 高齢化リスク
経営者が高齢になると、売却まで十分な時間が取れず、適切な株価がつかないことがある - 業績悪化リスク
処方箋枚数の減少や薬価改定で利益が減ると、売却価格は大幅に下がる。 - 廃業リスク
適切なタイミングを逃すと「売却ではなく廃業」という選択肢しか残らなくなる。
業績悪化は株価に甚大な影響を与えます。多くの買い手は将来収益を予測して、その結果に基づいて株価を決めます。業績が伸びている企業に対してはバラ色の未来を、業績が落ちている企業に対してはかなり慎重に査定します。
つまり、よい業績を更に良く評価してつける株価と、悪い業績を更なる悪化を懸念してつける株価には雲泥の差があるということです。
M&A業界ではよく聞く話ですが、「うちの会社は5年前に5億で売ってくれって話があったんだ!5千万で売れるわけないだろ!」のようなことを言うオーナーがいます。(ちなみに5億は契約欲しい営業のセールストークで、実際は3億程度)
ただし、3億だった株価が数年で5千万はおおいにあり得る話です。
売却を検討すべき具体的なシグナル

- 薬剤師の採用・定着が難しくなってきた
- 医師との関係が希薄になりつつある
- 経営者が60歳を超えて後継者が不在
- 設備投資やICT対応への負担が大きい
- 今後の薬価改定がマイナスに働く見込み
👉 こうした兆候が見えたら「準備の始めどき」です。
承継の選択肢とタイミング

1. 親族承継
- メリット:地域密着性を維持しやすい
- デメリット:後継者の薬剤師資格が必須
👉 子や親族が薬剤師資格を取得する前に準備が必要。
親族内承継は最もスムーズな承継方法です。多くの場合、株式はいずれ相続で承継されるものなので、極端な話、株価をいくらにしても大きな問題にならないです。
2. 従業員承継
- メリット:従業員の安心感が高い
- デメリット:資金力が不足しがち
👉 早めに承継スキームを設計しておく必要あり。
私の経験上、従業員承継は聞いたことがありません。もちろん、株式を渡さずに代表交代はよくありますが、中小企業においては本質的な承継になりません。
3. M&Aによる第三者承継
- メリット:高値売却が可能、地域医療体制を維持できる
- デメリット:売却先によっては地域密着性が失われる可能性
👉 処方箋枚数が安定しているうちに検討するのがベスト。
親族内承継が不可能なケースではM&Aが現実的な解決策と言えます。できれば、高い株価のつく時点での承継をおススメします。
皆が欲しがる会社だからこそ、周囲の協力を得やすいですし、交渉力もうまれます。
逆にあまり魅力のない薬局では、たとえばM&A仲介会社の扱いもかわってくるでしょう。
最悪の場合、契約だけしてほったらかしなんてことも・・・
声がかかるうちが花です。
成功事例と失敗事例
成功事例
東北地方のA薬局は、処方箋枚数が安定している50代の時点で売却を決断。
買い手企業が在宅医療を強化し、地域医療にプラスの影響を与えました。
失敗事例
関西地方のB薬局は、経営者が70代になってから売却を検討。
処方箋枚数が減少し、採用難も深刻化。結果として希望価格の半分以下で売却となりました。
ベストタイミングを見極めるチェックリスト

- 経営者の年齢は60歳前後か
- 薬局の業績は安定しているか
- 薬価改定前後で不利にならないか
- 従業員の定着率は高いか
- 買い手候補は存在するか
👉 これらを総合的に判断し、専門家と相談しながら決断することが大切です。
「儲かってるから売る必要ないんだけど、話くらいなら聞いてもいいよ」みたいなオーナーは交渉力あります。
「すぐに買ってくれないと困るんです!」では当然交渉できません。
まとめ

薬局売却・承継のベストタイミングは「経営が安定している時期」かつ「経営者が60歳前後」のタイミングが最適とされています。
- 制度や市場環境を注視する
- 薬局の経営状況を冷静に分析する
- 経営者自身のライフプランを考慮する
次回は「薬局売却と金融機関・投資家の視点|資金調達・投資判断から見る薬局M&Aの実態」につきお届けします。