薬局売却前に確認すべき10のチェックリスト|成功のための準備ポイント

薬局売却前にチェックすべき10のリスト 薬剤師独立

はじめに

薬局の売却は、経営者にとって一度きりの大きな意思決定です。
「そろそろ引退を考えているが、売却の準備は何から始めればいいのか?」
「専門家に相談する前に、自分で整理できることはあるのか?」

こうした疑問を持つ薬局経営者は少なくありません。
実際、売却の成否を分けるのは 売却前の準備の徹底度 です。準備不足のまま進めてしまうと、希望価格を大きく下回ったり、買い手との交渉が難航したりするリスクがあります。

本記事では、薬局売却を成功させるため確認すべき10のチェックリストを解説します。

ビジネスの世界では、初心者はいつもクイモノにされます
例えば、夢のマイホームや結婚式などなど。
2回3回と繰り返す人が少ないので、業者が圧倒的に有利なビジネスです。
同様に、薬局のM&Aも売り手オーナーはM&A初心者がほとんど。
つまり、あなたはこれからクイモノにされようとしています
信頼できるパートナーを見つけ、しっかり準備して薬局M&Aに臨みましょう。

税理士や金融機関紹介料を貰って、仲介会社にあなたを紹介することもあるので信頼できるとは限りません。


薬局売却時チェックリスト① 財務状況の整理

財務状況の整理
薬局売却チェックリスト
  • 最新3期分の決算書を用意しているか
  • 借入金の返済状況を明確にできるか
  • 赤字決算や不透明な支出はないか

👉 財務の透明性が低いと、買い手からの評価が下がります。

財務内容に関しては、買い手が大手の場合、それほど問題になりません
そもそも大手の場合、中小企業経営者の作成した決算書をそれほど信用していないからです。
あくまで、自分たちが経営した場合の収益を自ら想定して買収価格を決定しているので
提出された財務資料は、言ってしまえば参考程度でしかありません。(当然、仲介業者の作った想定収益とかも無視です。)
対して、買い手が中小企業もしくは個人の場合には、財務内容が重要になります。
買い手は現状の決算書の延長線上に自分たちの収益をみるので、例えば節税目的で赤字決算にしていたとしても、評価は下がることになります。
売却を考える薬局オーナーは、まず自分の会社の買い手は大手なのか、それとも中小もしくは個人なのか分けて考えるとよいです。
目安は、売上1億以上、集中率7割以下なら大手向きそれ以外は中小もしくは個人が買い手です。


薬局売却時チェックリスト② 不動在庫・棚卸資産の処理

薬局売却チェックリスト
不動在庫 棚卸資産
  • 長期間動いていない医薬品は整理されているか
  • 棚卸資産が適正に管理されているか

👉 不動在庫は「隠れ負債」として売却価格を押し下げる要因になります。

通常は譲渡契約書の中で、不動在庫等の取扱いに言及するので大きな問題にはなりません。
ただし、過去の決算書記載の在庫の金額と大きく乖離(15~20%以上)する場合には事前に開示しておくと安心です。
当たり前ですが、麻薬や向精神薬の在庫がずれてるのはNGです。少なくともデューデリ前に綺麗にしておきましょう。


薬局売却時チェックリスト③ 人員・雇用契約の確認

薬局売却チェックリスト
人員 雇用契約の確認
  • 常勤薬剤師は何人在籍しているか
  • 契約形態(正社員・パート)が明確か
  • 雇用契約や就業規則に不備はないか

👉 薬剤師不足が深刻な今、人員体制は評価額に直結します。

人事労務の分野は、特に大手(上場企業)が買い手の場合には厳しく見られると思ってください。
例えば、退職金は自動的に導入なので、労務費増(つまり株価減)です。また、有給が消化できる体制が前提なので、たとえ労働者が納得していたとしても大手では許されません。
当然、残業代も勤務実績通り支給になります。
逆に個人が買い手の場合には、現状通りの運営が基本なので特に変わらないことが多いです。


薬局売却時チェックリスト④ 処方箋枚数と売上データ

薬局売却チェックリスト
処方箋枚数と売上データ
  • 月平均の処方箋枚数は把握しているか
  • 医療機関ごとの依存度は明確か
  • 売上の推移をグラフで示せるか

👉 安定した処方箋枚数は高評価につながります。

特に買い手から聞かれるのは、処方箋枚数の変動要因です。
例えば、季節性。冬にインフルで増えるとか、夏場は皮膚科が多いとか。
それに、前年、前々年と比較して変動している場合には、その要因は必ず聞かれると思った方が良いです。
特に減少している場合には、納得できる説明がないと、自動的に株価は減額されます。


薬局売却時チェックリスト⑤ 在宅医療対応の有無

薬局売却チェックリスト
在宅対応の有無
  • 在宅患者数を把握しているか
  • 訪問薬剤管理指導の実績があるか

👉 在宅医療に対応している薬局は将来性が高いと評価されます。

在宅患者数は特に地域支援加算の算定要件として、重要視されます。
現状、地支加算を算定していないとしても、在宅実績があれば、取得は容易と判断できます。
ただし、施設在宅は要注意で、施設に依存している売上は評価を下げる要因になります。
買い手から見ると、経営交代後にホントに継続されるのか疑わざるを得ないです。
もしあなたの薬局が施設在宅に依存しているなら、例えば自分が顧問で1~3年残って施設との関係性を保つ、といった納得感のある説明が必要でしょう。


薬局売却時チェックリスト⑥ 立地・医療圏分析

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立地 医療圏分析
  • 門前医療機関との関係性は良好か
  • 競合薬局との距離や市場環境を把握しているか

👉 特に「医療モール隣接」「競合が少ない地域」は評価が上がります。

デューデリの際にオーナーのヒアリングはまず実施されます。その中で薬局周辺の競合環境や医療機関の話はよく聞かれるので、しっかり答えられると好印象です。逆にあいまいな回答しかできないと、買い手はリスク回避のために様々な粗探しをすることになります。


薬局売却時チェックリスト⑦ 診療科依存度のリスク

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診療科依存度のリスク
  • 特定診療科(内科・整形外科など)への依存度が高すぎないか
  • 医師の高齢化や病院閉院リスクを把握しているか

👉 多様な診療科から処方箋が来ている薬局は安定性が評価されます。

薬局のM&Aにおける評価額は処方医の年齢からも影響を受けます。概ね60才くらいから継続性が疑問視され始めます。
後継者の情報など、事前に収集しておくと買い手の不安を払拭でき、高評価につながります。


薬局売却時チェックリスト⑧ 法務リスクの洗い出し

薬局売却チェックリスト
法務リスク
特に不動産契約
  • 未払い残業代や労務問題はないか
  • テナント契約の更新条件は明確か
  • 訴訟や係争リスクはないか

👉 デューデリジェンスで問題が出ると大幅な減額要因となります。

薬局のM&Aで一番問題になりやすいのは、大家さんとの不動産契約まわりです。
これは譲渡スキームが株式譲渡でも事業譲渡でも、どちらの場合にも当てはまります。
賃貸借契約を大家さんと直接、現オーナーが締結していれば、多くはスムーズに承継されますが、あいだに地元の不動産会社が入ってくると・・・
彼らは原契約を更新すると(と言ってもコピペでちょこっと修正するくらい)更新手数料が家賃1~2か月分くらい入ってきます。慣れた買い手担当者は事前に大家さんと直接覚書を締結して、原契約を有効としちゃいます。

不動産周りはこじれると、M&Aがそもそも不成立となりかねません。仲介のコンサルタントや買い手担当者のウデが試される場面ですね。
トラブルは起きてから対処するのが最低です。起きうるトラブルを想定して事前にいくつ対策を打てるかが、その人の能力と言えるでしょう。


薬局売却時チェックリスト⑨ 税務・相続の確認

薬局売却チェックリスト
税務、相続の確認
  • 売却益にかかる税金を把握しているか
  • 個人事業主か法人かで課税方式が異なることを理解しているか
  • 売却後の資産承継や相続の計画を立てているか

👉 税務対策をしておくことで手取り額が大きく変わります。

税務はM&A仲介会社を選ぶ際にも重視されるとよいと思います。
一部の仲介会社は、オーナーに売却させることばかり注力して、肝心のオーナーの手取りの部分をないがしろにしがちです。
売り手薬局オーナーにとって、手取り額はとても大切です。
特に、退職(金)が絡むので、M&Aスキームに税務の視点が重要になります。
いくらを株価で受取り、自分の退職金をいくらにするか?その場合、買い手側の税務メリットはいくらになるか?そこに売却後の自分の顧問報酬は?残った法人はどうする?などなど
変数が多いので、わかりづらいですがちゃんと整理すると、買い手のメリットが明らかになり、実は株価の向上余地があることがみえてきます。(詳しくお知りになりたい方はお気軽にご連絡ください


薬局売却時チェックリスト⑩ 売却のタイミング

薬局売却チェックリスト
売却のタイミング
  • 経営が安定している段階で動いているか
  • 薬価改定前後のタイミングを考慮しているか
  • 経営者の年齢や健康状態を考慮しているか

👉 遅すぎる売却は「買い手不在・低評価」のリスクがあります。

「以前、他社で株価算定した時は○○億円だった」
は聞き飽きました。
すごく業績のよかった時代に、当時のM&A仲介の営業マンが(セールストークで)言った金額をいまだに信じている薬局オーナーの方が多くいます。
その当時もそもそもその金額では売れなかったですし、今は半値でも売れません。
セールストークに根拠はありません。現実を見ましょう。
特に中小門前薬局の売却価格が今後上昇することは考えづらいです。


まとめ:売却準備が薬局売却M&Aの成功を左右する

まとめ
売却準備が薬局売却M&Aの成功を左右する

薬局売却を成功させるには、財務・人員・在庫・法務・税務の整理を早めに進めることが不可欠です。

今回紹介した10のチェックリストを実行すれば、買い手からの信頼度が増し、交渉を有利に進めることができます。

  • まずは現状を整理する
  • 不明点は(信頼できる)M&Aコンサルに相談する
  • 複数の買い手候補を比較検討する

これらを意識することで、薬局売却で後悔するリスクを大きく減らすことができます。

当社YAKUDACHIでは薬局売却をお考えの経営者の方々に無料にて一切のM&Aサービスを提供しております。(報酬は買い手様からのみ十分いただいてます)
ただの相談や売却価格算定のみでも歓迎いたします。こちらのお問い合わせフォームよりご連絡ください。

次回は薬局売却時の税務、相続対策についてご紹介します。