薬剤師として独立・開業したいけど、まず何から始めていいかわからない。
知り合いのDrと一緒に開業しようとしているけど、事前準備は何をしたらいいの?
それまで会社員として薬剤師をしていた方が、独立・開業しようとしても一体、何から手を付けたらいいかわかりません。私自身も独立・開業するときは全ての事が初めてで、誰が教えてくれるわけでもなく、途方に暮れていました。
薬剤師の独立・開業準備は法人設立から始めましょう。契約、融資、申請全てに必要になるので、余裕を持ったスケジュールで設立しましょう。
こんにちは。薬剤師独立M&Aコンサルタントの鈴木重正です。私は薬剤師の方の独立を、M&Aを利用して支援しています。自分自身もM&Aによって薬局を譲り受け、薬局オーナー兼管理薬剤師としても日常業務を行っています。
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薬剤師が独立・開業するために法人設立は必要か?
薬剤師が独立・開業するために法人設立は絶対に必要なわけではありません。これは薬局の開設が法人に限定されているわけではなく、個人で薬局開設者となることもできるからです。
ただし、概ね4~5百万円くらいの年間収入から法人の方が税金メリットが出るとされているので、ほとんどの薬局は法人が開設者です。
もし、法人設立するか、はじめだけでも個人事業主で行こうか迷っている薬剤師の方がいましたら、この記事を読んでサクッと法人作っちゃいましょう。細かい法人税や設立経費、消費税などの論点はありますが、長い時間かけて調べても、結局、納得して法人設立することになるので、無駄な時間を使わないようにしましょう。
独立する!と決めたのだから迷う必要はありません。この記事を読んで、サクッと社長になりましょう。
薬剤師が独立・開業するために法人設立する場合、自分でするかそれともプロに頼むか
通常、薬剤師が独立する場合、法人を設立し、その法人が薬局を開設することが多いと思います。ただ、薬剤師はいわゆる専門職のため、法人を作った経験がないのではないでしょうか。
そういったときに多くの方は「会社 設立」とかのキーワードで検索するかと思いますが、表示される検索結果はいわゆる士業専門家の方たちのウェブサイトばかりです。
でもご心配なく。法人設立なんかサクッと自分でできちゃいます!
つまり、法人設立する際に「依頼する業者」の情報ばかりが出てきてしまいます。ところが、法人設立はそもそも自分でできる手続きであり、書面さえちゃんと揃えば、提出先の法務局で否認されることもありません。検索結果が依頼先ばかりだと、業者に依頼が当たり前のような気がしてしまいますが、誤解です。自分でできます。
ただし、ただでさえ忙しい創業期に法務局との些末な書類訂正のやり取りは時間の無駄なので、効率よく設立関連書類を揃えるために「会社設立freee」などの会計クラウドの付加サービスを使うと良いです。
私もfreeeを利用して設立関係書類を作成しました!
薬剤師が独立・開業で法人設立したら、忘れてならない申請、提出
会計クラウドの付加サービスを利用して会社設立をした場合には、設立時の提出書類や提出先もクラウド上で準備できるので問題ありません。
ただし、自分で設立を一からする人は法人設立後に関係各所への届け出(主に法人を設立した事実の届け出)を忘れないようにしましょう。届け出は税務関係の届け出と労務関係の届け出があります。
税務関係の届け出
税務関係の届け出先としては税務署、都道府県税務事務所、市町村役場があります。都道府県税事務所と市町村役場は法人設立届だけなので、返信用封筒入れて、郵送でOK。税務署は以下の書類を提出します。税務署だけは提出が遅れると、不利な扱いを受ける提出物なので、私は持参しました。ただし、現在はコロナなので郵送がベターかもしれません。
- 法人設立届
- 青色申告の承認申請書
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
労務関係の届け出
労務関係の届け出先としては労働基準監督署、年金事務所があります。提出物はそれぞれ以下の通りです。
- 労働保険概算保険料申告書(労働基準監督署)
- 新規適用届(年金事務所)
ただし、労務関係は従業員の有無や扶養の有無など、必要書類が変わるので自分でするのはおススメしません。私の場合は法人設立当初から社会保険労務士の先生に顧問になって頂き、手続きの一切をお任せしました。
ただでさえ、開業前後は忙しいので、細かな官公庁対応はプロに丸投げしましょう。信頼できるプロフェッショナルへの費用支払いは極めて効率の良い投資です。
会計クラウド+社労士の組み合わせが独立薬剤師にはベストマッチだと思います。懐に余裕が出来たらクラウド対応の税理士事務所と契約しても良いですね。
自分で法人設立した薬剤師が実際にかかった時間、費用
私の場合は会計クラウドの付加サービスを利用して設立関係書類は作成しました。つまり、いわゆる会社設立サービスは利用していません。また、設立当初から社会保険労務士の先生には顧問としてお手伝い頂いていたので、その前提でお話します。
会計クラウドを利用した設立関係書類の作成時間
会計クラウドの付加サービスを利用して設立関係書類を作成する場合、必要事項の入力自体は数十分で完了します。ただし、電子定款の作成に恐らく1~2日の待ち時間が発生します。また、書類作成に付随して会社印の作成時間や代表者の印鑑証明取得などの手間は発生します。作成した書類を法務局に提出して、登記完了までは1~2週間が目安となります。
会計クラウドを利用した場合の法人設立にかかる費用
会計クラウドの付加サービスを利用して法人設立する場合、いわゆる法人設立サービスを利用する場合と違い手数料は発生しません。概ね以下の金額になります。(ただし、合同会社を前提にしているので、株式会社の場合はプラス約14万円)
- 登録免許税(6万円)
- 印鑑作成(1~3万円)
- 電子定款の作成(0~5千円)
- 代表者(自分)の印鑑証明(300円)
合計で10万円もあれば十分足ります。
無料で設立!は、設立後に何かの費用がかかる
無料で会社設立!とあるウェブサイトはよく見かけますが、そのほとんどは設立後のサービスが有料です。よくあるのは税理士法人さんのケースで会社設立サポートは無料、ただし、設立した会社の税務顧問に就任の場合に限る・・・。
恐らく税理士さんの顧問料は決算手続き手数料まで含めると年間30万以上になります。設立当初から税務顧問をそもそも付けるつもりなら全く問題ありませんが、そうでないなら「無料で設立」は高くつきます。お勧めできません。
会計クラウドを利用していれば、ワンクリックで出力される決算申告書ですが、税理士事務所に依頼すれば決算手当として10~20万程度かかります。
独立・開業する薬剤師は法人設立に詳しくなる必要はない
独立・開業する薬剤師は法人の設立方法や法人の種類、ましてや設立書類に詳しくなる必要ありません。ただでさえ忙しいので、サクッと丸投げしましょう。
法人形態は合同会社で決まり
私の場合は合同会社という法人形態を選択しました。設立にかかる手間や費用、決算公告の要否など勘案すると一般的な独立希望の方が初めて法人設立する際には合同会社が適当だと思います。ちなみに合同会社はあまり聞きなれないかも知れませんが、有名どころだとアップルやグーグル、P&Gなんかも合同会社です。
設立関係書類はクラウドサービスを利用
独学で色々な資料を読んで、法人設立に詳しくなれば、確かに設立書類は自分で作成できます。ただし、必要なものや資料、ハンコの押す場所まで法務局では細かくみられますし、お役所なので当然融通は利きません。
設立コンサルでもする気ならいいですが、薬剤師が会社設立に詳しくなる必要はないので、独学で設立書類を作成するのはお勧めできません。また電子定款の作成など自分ですると逆に高くなってしまう手続きもあります。
テクノロジー(会計クラウド)とプロフェッショナル(社労士)を存分に利用して、自分は専門分野に特化すべきです。
私が法人を設立する際に利用したのは「会計freee」というクラウド会計システムの付加サービスである「会社設立freee」です。ちなみに日本語の読み方は「フリー」ですが無料ではありません。ただし、「会計freee」の年間契約で「会社設立freee」は無料になります。
クラウド会計システムを使うかどうかはご自身で判断すればよいですが、私の場合は税理士さんにお願いする予定がなかったため、手作業で(例えばエクセルとかで)経理業務を自分でやる、もしくはクラウド会計システム利用の2択だったため、迷わず年間契約しました。
なお、年間契約しなくても合同会社の設立であれば5,000円しかかからないので巷にあふれる設立代行サービスを利用するより全然安いです。弊社YAKUDACHIでも独立希望の薬剤師の方の会社設立、運営をサポートしてますが、指定がなければ「会計freee」で設立から経理サポートまで実施しています。お気軽にお問い合わせください。
独立・開業予定の薬剤師の皆さんへ
最後までお読みいただきありがとうございました。
マイホームを建てる時と薬剤師が独立して会社を作るときは似ています。と言うのも、どちらも初心者だからです。
そんな初めてのマイホームで業者さんの言うことを鵜呑みにしていたら、いくらかかるかわかりません。そんな時に頼りになるのが、家を既に建てたことのある人の経験談ではないでしょうか。
私は薬剤師として、独立・開業しました。もし、皆さんのお力になれるとしたら、とても嬉しいです。法人設立や独立について、疑問に思うことなどありましたら、お気軽にご連絡くださいませ。
皆さんが、有意義な薬剤師人生を送ることを願っています。
なお、独立薬剤師の為の資金調達、リスクベネフィットの考え方については下の記事をご参照ください。
実際に独立した社長が明かす薬剤師のためのM&A資金借入の方法
去年独立した薬剤師が教える、独立の実情はノーリスクハイリターン(笑)