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はじめに
薬局の売却を検討する際、忘れてはならないのが「家族・親族への説明」です。
薬局は経営者個人の財産であると同時に、家族の生活や将来にも直結する存在です。
また、親族が従業員として関わっていたり、将来的に事業承継を考えていたりする場合も少なくありません。
売却の意思決定を独断で進めてしまうと、後になってトラブルや不満が生じ、承継後の経営にも影響が出る可能性があります。
本記事では、薬局売却における家族・親族への説明の重要性と、円滑に進めるための実務的なコミュニケーション方法を解説します。
皆さん、こんにちは。YAKUDACHI鈴木です。
私も3人の子供を持つ親です。
親が子供を見るように、子供もまた親を見ています。
親が経営者であれば、言われていなくても自分が跡継ぎかも知れないと意識する瞬間はあるでしょう。ましてや、親の職場で勤務している場合などは、意識しない方がまれです。
ただ、親子の会話で「跡継ぎ」の話題はあまりでませんよね。ウチもそうです。
親からすれば気恥ずかしいような、子供からすれば親の引退をうながすようでなんだか話しづらいです。
ただ、第三者承継をするのであれば、親子間の意思疎通は必要になります。あなた個人の意思決定だけでなく、子の人生設計にも関わる問題です。
NDAの関係で、安易な情報開示はさけるべきですが、反面、必要なコミュニケーションもあります。売買当事者同士、仲介が居れば仲介もまじえて、秘密情報の開示先を整理しましょう。
家族・親族への説明が重要な理由

- 生活への影響
- 売却によって収入や生活環境が変化する可能性がある
- 特に家族が薬局の給与収入に依存している場合は影響大
- 相続・資産管理の観点
- 売却代金が相続財産に組み込まれる
- 親族間で資産配分や相続の争いが発生するリスク
- 感情的な側面
- 「家業を継ぐべきではなかったのか」
- 「先祖からの財産を手放すのは残念だ」
多くのM&Aの場合、売り主の売却タイミングは相続と関係します。
事業戦略的な売却を除き、薬局の売却はオーナーの引退と同義だからです。
つまり、相続問題の前段階としてM&Aがあります。
税務での株式価値評価とM&Aでの評価の乖離、事業承継税制、生前贈与、相続人が複数いる場合には遺産分割協議や遺留分など、論点は盛りだくさんです。株式が高額になるほど、相続人が増えるほど、問題は複雑になります。整理して考える必要がありますね。
弊社YAKUDACHIでは顧問税理士と連携してご相談に応じています。是非お気軽にお問い合わせください。(お問い合わせフォームはこちら)
家族・親族への説明の実務対応

- 売却の理由を明確に伝える
- 経営者の高齢化・後継者不在・経営環境の変化など
- ネガティブな印象を与えないよう「前向きな理由」で説明する
- 売却のメリットを共有する
- 経営リスクの軽減
- 売却益による生活資金の確保
- 従業員や患者への安定的なサービス継続
- 売却スケジュールを伝える
- 売却検討の開始時期からクロージングまでの流れを共有
- 家族が精神的に準備できる時間を確保
- 経済的影響を説明する
- 売却益の分配方針や相続への影響
- 節税や資産管理の方法
④売却益の分配は、安易な発言を控えましょう。あなたが特に意識せずに発した言葉も、受け取り方によっては相続時に問題を引き起こします。「将来的にはみんなに相続されるものだから」、のみんなとは?相続人で現金等分?
相続発生時、あなたは死人に口なし、発言の機会は与えられません。必要なことは必ず公証書面に残しましょう。
まさかまだ「うちの子に限って」とか思ってないですよね。
トラブルを避けるための工夫

- 早めの相談
→ 事後報告ではなく、検討段階から相談することが信頼関係を守るカギ(ただしNDA厳守) - 第三者専門家の活用
→ 税理士・弁護士・M&Aアドバイザーに同席してもらうことで客観性を担保 - 文書での共有
→ 説明内容を文書化し、後の誤解やトラブルを防ぐ
NDA違反の秘密漏洩はもちろんNGです。
親族で共有する必要があれば、正式に売買当事者で合意するか、そもそもNDAに盛り込みましょう。
多くの場合、買い手側、親族への情報開示を否認することはありません。ただし、あなたが情報開示した対象は、あなたと同様の秘密保持義務を負い、その責任はあなたが負うことになります。開示する際には、NDAの厳格性をしっかり伝えましょう。特に開示対象が普段ビジネスに接していない方の場合には注意が必要です。奥様同士の井戸端会議で「内緒なんだけどね」は秘密保持でもなんでもありません。当日中にSNSで拡散されないよう、しっかりNDAの内容を伝えてください。
成功事例と失敗事例

成功事例
関東のA薬局は、売却を検討し始めた段階で家族会議を開催。
経営状況と売却理由を丁寧に説明し、税理士を交えて相続への影響も共有。
結果として家族全員が納得し、スムーズに売却が成立した。
失敗事例
関西のB薬局は、経営者が独断で売却を進め、クロージング直前に家族へ報告。
「もっと早く相談してほしかった」と反発を受け、親族間の関係が悪化。
売却代金の使途を巡って争いが生じ、最終的に相続問題にも発展した。
多くの経営者は売却後に相続問題が控えているはずです。
まずはM&A、相続の事はあとで・・・・は通用しません。
なぜなら、複数の相続人がいる場合、M&Aが不利になる人、有利になる人、相続税額への影響などなど、相続とM&Aは関係するからです。
繰り返しますが、相続発生時、あなたはこの世にいません。株の評価はあなたの想像とは無関係です。あなたの意に反する相続人が遺産分割協議で遺留分に異議申し立てすれば、株式価値は法廷闘争まで発展する可能性もあります。
安易に考えず、しっかり専門家に相談しましょう。
実務チェックリスト

- 家族・親族に売却理由を明確に説明したか
- 売却によるメリットを共有したか
- 売却スケジュールを伝えたか
- 売却代金の分配や相続への影響を検討したか
- 専門家を交えて説明する準備をしたか
大手チェーンへの売却であれば、ご子息に社内ポジションを残すという選択肢もあります。売却せずに息子に継がせるのか、それとも売却して現金を残すかの2択と勘違いされる方もいますが、M&Aに多くの選択肢を持っている大手チェーンは、例えば子会社の社長など、売り主のご子息に一定の配慮を設けてくれる場合があります。
詳しくはお問い合わせください。
まとめ

薬局売却における家族・親族への説明は、単なる情報共有ではなく、承継を円滑に進めるための重要なステップです。
- 売却理由・メリット・スケジュールを明確に伝える
- 経済的影響や相続への影響を共有する
- 早めに相談し、専門家を交えて客観性を担保する
いかがでしたでしょうか。
家業であれば、その継続は経営者の問題だけでなく、家族全体の問題です。
個々人の考えがすけて見えるわけではないので、十分なコミュニケーションが必要になりますが、特に一緒に働いているとビジネスの話題ばかりで、本質的な会話が減少しがちです。
たまには温泉でも浸かりながら、親子の会話が必要ですね。と、自戒を込めて。
次回は「薬局売却と金融機関対応|借入金・保証・承継リスクをどう乗り越えるか」をお届けします。牧歌的な薬局経営に対して、金融機関は大手町ビジネス集団です。その企業文化は決定的に違うので、特にM&Aが金融取引である以上、彼らの常識で行動する必要があります。
ナメてかかると、金融事故は長年にわたって経営に悪影響を及ぼすので注意が必要です。
是非、ご参照ください。