派遣で働く薬剤師が知らなきゃ損する3ヶ条【初心者向け簡単解説】

派遣で働く薬剤師が知らなきゃ損する3ヶ条表紙 薬剤師




派遣薬剤師については、結構誤解が多いです。
例えば有給休暇。派遣にも有給休暇があるのをご存知でしょうか?

いわゆるOLさんの「ハケンの〇〇」のイメージが強いんでしょうね。

薬剤師の派遣就労は一般的なハケンとは働き方も待遇も全く異なります。
世間のイメージには左右されず、自分のキャリア形成のひとつの選択肢として検討してください。

派遣薬剤師って手軽で高収入

そんなイメージあるけど、本当かな? すぐクビにされたり、職場で差別されたりしないかな?

そんな疑問ありませんか?

気軽に働けて時給だけ高いなんて、なんだかちょっと都合良すぎる感じがしますよね

今回は初めて派遣で働くことを考えている薬剤師の方に知らないと損する鉄板3ヶ条をお教えします。

もしあなたが・・・・ ・

  • 子育てしながら働くので正社員はちょっと・・・と考えているママ薬剤師
  • 異業種から転職を考えているけど、まずは派遣で・・・お試し薬剤師
  • お給料が全て!派遣もやって目指せ年収1000万!・・・燃える薬剤師

だとしたら、知らなきゃ損する派遣の知識をお教えします。

こんにちは。合同会社YAKUDACHI代表、薬剤師社長の鈴木重正です。私は普段、薬局M&Aをお手伝いしながら自分の薬局で管理薬剤師としても働いています。

以前は派遣薬剤師として月収70万円以上を稼いでいました。また、大手チェーン在籍時には採用企業側の役員としても派遣薬剤師を見てきました。

今回は派遣薬剤師初心者の方を対象に知らなきゃ損する派遣の知識をご紹介します。 このコラムを読んで、しっかり派遣薬剤師の注意点を理解して、自分が本当に派遣で働くべきか、正しく判断しましょう

薬剤師の働き方はますます多様化してきています。正しい知識をもって、あなたにあった働き方で、素敵な薬剤師人生を送ってください。

派遣薬剤師はメリットとデメリットがはっきりしているので、しっかり理解して有効に活用しましょう!!

わかりやすく説明してくれるかどうかで、理解度は変わると思うけど。

た、確かに・・・ 頑張ります。

Contents

派遣薬剤師とは?

派遣薬剤師とは?

派遣薬剤師とはそもそもどういった働き方でしょうか。また、働く側だけでなく、採用する企業側から見たときにどんな特徴があるんでしょうか。

派遣薬剤師の定義、意味

そもそも派遣社員とは働く場所(薬局)を運営する企業ではなく、労働者を派遣する企業(派遣会社)の社員として派遣される人のことです。雇用関係はあくまで派遣会社と派遣社員の間で結び、派遣会社の依頼に基づいて就労先(薬局)で勤務しているにすぎません。下図参照。

派遣薬剤師と派遣契約、就業先の関係
派遣薬剤師、派遣会社、就業先の関係図

給料、社会保険関係、有給休暇などは全て派遣会社が対応します。あくまで就労先企業(薬局)は業務委託費として月々決まった金額を派遣会社に支払うのみです。

薬剤師からみた派遣のメリット、デメリット

薬剤師が派遣で働くメリット、デメリットは上図のような派遣薬剤師、派遣会社、就労先の3者の関係性から派生したものが多いです。

派遣薬剤師は特徴がハッキリしているので、メリット、デメリットをしっかり把握して、自分に合っている働き方かどうか判断しましょう。

薬剤師からみた派遣のメリット

薬剤師からみた派遣のメリット
  • 給料(時給)が高い
  • 気軽に職場変更できる
  • 職場の人間関係に深く関わらなくて済む
給料(時給)が高い

派遣薬剤師は一般的に給料(時給)が高くなります。これはパートの時給に対してはもちろんですが、一部は正社員の方よりも時給換算で派遣薬剤師の方が高くなります

気軽に職場変更できる

派遣薬剤師は気軽に職場変更ができます。就労先の薬局や病院としても、派遣であれば短期間での入れ替わりはある程度、前提として受け入れているので、薬剤師が変更となっても違和感ありません。また、いつか正社員での転職をする際には多様な職場での経験がメリットになることはもちろん、履歴書の職歴が派遣会社1社となり、すっきりします。

職場の人間関係に深くか関わらなくて済む

派遣薬剤師は職場の人間関係に深く関わらなく済みます。薬剤師の悩みの一つに狭い職場での人間関係が挙げられます。派遣の場合には、一定期間での就労先変更が前提ですので、人間関係が深くなりづらいです。

薬剤師からみた派遣のデメリット

薬剤師からみた派遣のデメリット
  • 派遣期間が選べない
  • 昇給、昇進がない
  • 就労先での待遇
派遣期間が選べない

派遣薬剤師は一つの就労先での派遣期間が選べません。たとえ、あなたがとても気に入った職場があったとしても、派遣会社と就労先での契約次第で、急に職場変更となります。

昇給、昇進がない

派遣薬剤師には昇給や昇進がありません。若い薬剤師の場合、瞬間風速的に時給があがったような気がしますが、長い目で見たときには正社員就労の方が年収は高くなります。

就労先での待遇

これはメリットの裏返しですが、派遣薬剤師は就労先で、あくまで派遣として見られます。社員同士の「仲間感」からはどうしても一線を引かれることもあるでしょう。

結局、メリットの裏返しじゃねぇか・・・

派遣薬剤師は特徴がハッキリしているので、デメリットはメリットの裏返しです。メリットが自分にとって魅力的で、デメリットがあまり気にならないようなら、あなたは派遣薬剤師に向いていると言えるでしょう。

採用企業からみた派遣薬剤師とは

採用企業からみた派遣薬剤師とは

ここで多くの方が疑問に思うこと「派遣薬剤師って企業からみたらすごく割高なんじゃ・・・?なんで派遣つかうんだろう?」に採用企業側の視点でお答えします。

ずばり、派遣薬剤師は割高ですが、ありがたい存在です。

ご存じの通り、派遣社員が受け取るお給料の他に派遣会社のマージン(30~40%)まで負担しなくてはならないので、かなり割高になります。

よくある都内の派遣求人では時給3,000円前後なので、派遣会社のマージンを加えると企業が派遣会社に支払う金額は、時間当たり5,000円程度になります。一般的な正社員が年間就労時間2,000時間なので・・・派遣薬剤師一人で年間1,000万円かかります。いきなり1,000万円プレーヤー誕生です。

ただし、ここまで派遣薬剤師が広まったのは採用企業側にも大きなメリットがあるためです。

それは欲しいところに、欲しいとき、欲しいだけ薬剤師が確保できるからです。急な退職が続いた薬局や大型の新規開局で処方箋数が読めない場合、そもそも正社員採用が全くできないエリアなど派遣薬剤師が活躍する場面は多いです。

派遣で働く薬剤師が知らなきゃ損する3ヶ条

派遣で働く薬剤師が知らなきゃ損する

ここからは派遣で働く薬剤師が絶対に抑えておくべき下記3ヶ条についてご紹介します。

  • 薬剤師派遣会社のマージン率について理解する
  • 薬剤師派遣会社の有給休暇の取扱いについて理解する
  • 薬剤師派遣に強い紹介会社について理解する

薬剤師派遣会社のマージン率について理解する

マージン率とは労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(23条5項)にて派遣会社による公開が義務付けれている事項です。

派遣元事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、労働者派遣事業を行う事業所ごとの当該事業に係る派遣労働者の数、労働者派遣の役務の提供を受けた者の数、労働者派遣に関する料金の額の平均額から派遣労働者の賃金の額の平均額を控除した額を当該労働者派遣に関する料金の額の平均額で除して得た割合として厚生労働省令で定めるところにより算定した割合、教育訓練に関する事項その他当該労働者派遣事業の業務に関しあらかじめ関係者に対して知らせることが適当であるものとして厚生労働省令で定める事項に関し情報の提供を行わなければならない。

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(23条5項)

読んでもわかりません。ざっくり言うとマージン率とは派遣料金から派遣薬剤師の賃金を引いた割合(%)となり派遣薬剤師が受け取る給料にいくらの派遣会社の取り分が乗っかっているかを示しています。

マージンは派遣会社の利益はもちろんですが、派遣薬剤師の社会保険料(13~14%)や有休取得費用(3~4%)も含まれているので注意が必要です。特に有給取得費用は次項でも詳述しますが派遣会社により、差がある部分ですので、理解したうえで派遣会社を選びましょう。

転職サイトマージン率
ファルマスタッフ(札幌支店)34.2%
マイナビ薬剤師派遣なし
アプロ・ドットコム33.5%
クラシス(札幌事業所)36.0%
ファーマリンク32%
薬剤師紹介会社各マージン率比較 2020年5月著者調べ

薬剤師派遣会社のマージン率は自分で調べることができる

マージン率は誰でも調べることができます。派遣会社は法律でマージン率の公開が義務付けられており、上図のマージン率も私が各転職サイトに見に行って調べたものです。

薬剤師派遣会社のマージン率は地域差が大きい

マージン率は地域によって差が大きい項目です。一般的には薬剤師の給与水準が高いエリアはマージン率が低い傾向にあります。派遣会社が負担する経費は薬剤師の給与水準にかかわらず、ほぼ一定のためです。

マージン率の活用方法は派遣会社選び

マージン率は一概に高ければ悪い、低ければ良いとも言えません。なぜなら、個別の派遣先ごとに計算される数字ではなく、事業所単位の平均だからです。また、地域差や有休費用の多寡も関係するため、派遣会社選びの目安として利用しましょう。

薬剤師派遣会社の有給休暇の取扱いについて理解する

薬剤師派遣会社の有給について理解

初めて派遣で働こうとする薬剤師にとっては、派遣の有給休暇???ってよくわかりません。

派遣薬剤師にも有給休暇がある

派遣薬剤師にも有給休暇はあります。これは一般的な正社員やパートと同様に労働基準法39条に規定されています。具体的な有給休暇の付与日数は下図参照。

継続勤務期間と週当たり労働日数
継続勤務期間と週当たり労働日数 労働基準法39条より著者作成 

上図の通り派遣社員にもその継続勤務期間と週当たり労働日数に応じて有給休暇が付与されます。(*)週に30時間以上働く場合は週当たり労働日数が5日と同じ有給休暇不要日数となります。

派遣薬剤師の場合は派遣会社から有給休暇が付与される

派遣薬剤師は就業先の薬局ではなく、派遣会社の社員であるため、有給休暇の付与義務も派遣会社にあります。当然、継続勤務期間も派遣会社で通算されるので、勤務先ごとではありません。

有給と言っても派遣の場合は給与額が派遣会社により違う

ここで疑問になるのが有給休暇としていくらもらえるのか?ということです。

労働者派遣法によると派遣就労者の有給休暇の賃金としては平均賃金や月額賃金の30分の1など、いくつか指標があります。現行運用としては標準賃金の6割以上と解されているため、派遣会社により有給休暇中の賃金は異なります

もし、派遣として働くことを考えている薬剤師は「有給休暇中の賃金がいくらか」は絶対に派遣会社に確認しましょう。

有給休暇中の賃金について契約時給の満額(つまり100%)で支払ってくれることが確認できたのはファルマスタッフさんとアプロ・ドットコムさんでした。ちなみにここでは書きませんが、みんな知ってる超有名薬剤師紹介会社は契約時給の60%での有給消化になりますのでご注意ください。

薬剤師派遣に強い紹介会社について理解する

あなたがもし、派遣をやっていない薬剤師紹介会社の社員だったとしたら、派遣のメリットを薬剤師に伝えるでしょうか?

伝えませんよね。だって、やってない派遣を薬剤師が選んだら自分たちの売上にならないんだから。むしろ派遣のデメリットを伝えて、派遣以外の就業形態を勧めるはずです。

つまり、派遣薬剤師として働くかどうか、検討する際には転職サイトごとの特徴をしっかり理解して、自分に合ったサイトに登録するようにしましょう。派遣薬剤師に強みがある3社をご紹介します。

ファルマスタッフ

6万件を超える公開求人数は業界No.1職業紹介優良事業者認定や優良派遣事業者認定も取得しており安心して登録できます。総合病院門前の薬局に強みがあります。コンサルタントの方が会社や薬局に訪れてしっかり情報収集しているので派遣就業先への理解が高いです。有給休暇も全額支給。派遣薬剤師として働くなら、ファルマスタッフは外せません。必ず登録しましょう。

クラシス

ファルマスタッフと同じく優良派遣事業者認定を取得しています。特に都内の求人情報に強みがあります。派遣薬剤師向けに福利厚生目的で独自のポイントプログラム(K・POINT)があり面白いです。

アプロ・ドットコム

薬剤師紹介会社としては老舗に分類されます。単発求人に強みがあります。有給休暇も全額支給。同社のメールマガジンは独特のテイストで著者も愛読しています。優良派遣事業者認定を取得しています。

派遣に向いている薬剤師、向いていない薬剤師

派遣に向いている薬剤師、向いていない薬剤師

派遣は別に特別なことじゃなく、現在は働き方の一つとして認知されています。ただし、自分の性格や状況、キャリアプランなどにより、向き不向きはあるのでしっかり理解しましょう。

キャリアプランや求める給料による派遣薬剤師の向き不向き

当然ですが、大手企業のマネジメントクラスや人事採用などの本部スタッフといった長期的なキャリア形成を志望している薬剤師であれば、派遣薬剤師には向いていません

逆に確固たるキャリアプランが無い場合には、派遣薬剤師は受身でも就労先を派遣会社が選んでくれるので向いていると言えるでしょう。

また、現時点で高い給料が欲しい、高い時給で働きたいといった薬剤師には向いていますが、安定的に年収を維持したい薬剤師には向いていません。

働く時間や曜日による派遣薬剤師の向き不向き

子育て中の薬剤師家業を手伝っていて働ける曜日が決まっている薬剤師には派遣就労は向いています。曜日や時間など、柔軟に対応してくれる派遣会社が多いです。求人数の多い派遣会社であれば、派遣薬剤師の希望に沿った求人を紹介してくれるでしょう。

ただし、週40時間程度のいわゆるフルタイムでの就労を考えている方は、そもそも派遣以外の就業形態も選択肢に入れてみましょう。土日が絶対働けないとか、幼稚園のお迎えで17時帰宅とか事情があっても、薬剤師業界はママ薬剤師が多いので、意外と融通が利いたりします。あきらめていた正社員も、実はあっさり決まったりしますよ。

性格や職場での付き合い方による派遣薬剤師の向き不向き

性格や職場での付き合い方による派遣薬剤師の向き不向き

性格が社交的な方は派遣薬剤師に向いています。派遣薬剤師の場合は派遣会社の事情で就労先が変わることも多く、新しい職場に早く慣れることができるのはプラスになります。

また、職場での飲食などのお付き合いが苦手な方は派遣薬剤師に向いています。正社員など長く働くことを前提にすると、付き合いも断りづらいかも知れませんが、派遣の場合は一定期間しか同じ職場にいない前提なので、気兼ねすることなく行きたくない飲み会は断ることができます。

逆に職場の同僚と友だちのような深い付き合いを求める場合は、派遣薬剤師には向いてません。

派遣薬剤師について理解が深まりましたか?

派遣薬剤師の未来

今回は初めて派遣薬剤師として働くことを考えている方を対象に、派遣薬剤師について基本的なことをご紹介しました。

マージン率や有給休暇、派遣に強い会社かどうかは、後から知っても遅いです。

事前にしっかり情報収集して、必要であれば派遣会社に問い合わせ、ご自身に合った派遣会社を利用してください。

仕事選びはあなたの人生にとって極めて重要なことです。派遣薬剤師も働き方の一つですので、「向いてるな」と思った方は積極的に利用して、豊かな人生を送る一助として頂ければ幸いです。