日常的に使っている調剤薬局。
そもそも調剤薬局ってなんだろう?
なんだか最近よく聞くようになったこの調剤薬局という言葉、わかるようなわからないような。
そんな疑問をお持ちではないでしょうか?
処方箋を扱っている場所、であれば最近ではドラッグストアも処方箋を受け付けているし、商店街の薬屋さんでは処方箋を扱っていないところもありそう。
こんにちは。合同会社YAKUDACHI代表の鈴木重正です。
今回はそんな「調剤薬局」にスポットライトを当てて、その種類や定義、 さらにはたくさんある調剤薬局の中から自分に合った薬局の選び方まで解説します。
この記事を読んで薬局に詳しくなって頂き、自分にぴったりの薬局を見つけてください。
Contents
調剤薬局とは?
調剤薬局とは何でしょうか。
イメージとしてはお医者さんの隣にある、小さな薬局です。
すこし深堀してみましょう。
そもそも薬局とは
薬局の定義
薬局は以下のように定義されています。
「薬局」とは、薬剤師が販売又は授与の目的で調剤の業務を行う場所(その開設者が医薬品の販売業を併せ行う場合には、その販売業に必要な場所を含む。)をいう。ただし、病院若しくは診療所又は飼育動物診療施設の調剤所を除く。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)抜粋
全国の薬局数
厚生労働省 平成30年度衛生行政報告例の概況によれば全国の薬局の数は、平成 30 年度末現在、 59,613 施設で、前年度に比べ 475 施設(0.8%)増加している。
ちなみによく比較されるコンビニエンスストアは(社)日本フランチャイズチェーン協会によれば2020年6月末で55,782店舗となっており、コンビニよりもやや多い施設数の薬局が全国にあることになる。
ただし、その利用者数はコンビニの年間利用者がのべ150億人に対して薬局は8億人なのでコンビニの方が圧倒的に利用者が多いです。
薬局の種類
現在では、以下の表にあるような薬局が存在します。
調剤薬局 | 主として処方箋調剤を行う薬局 |
調剤室併設のドラッグストア | 店舗の一部に調剤室を併設したドラッグストア |
院内薬局 | 厳密には薬局ではない。属する病院の処方のみを取り扱う調剤所 |
漢方薬局 | 通常、処方箋は扱わない。漢方薬を患者に応じて薬剤師が調剤する薬局 |
零売薬局 | 通常、処方箋は扱わない。医療用医薬品を患者の希望に応じて小分けする薬局 |
院内薬局って薬局じゃないんですね。
一般的な認識とは違うかも知れませんが、院内薬局は薬局ではありません。
零売薬局って、見たことないけど、どこにあるんですか?
零売薬局は、最近増えてきている薬局で、主要駅の駅前などにあります。
調剤薬局の定義
調剤薬局とは実は明確な定義のない言葉です。
現代の日本語の意味としては、主として保険調剤を行う薬局のことを調剤薬局と言います。
薬局の監督官庁である厚生労働省も「調剤薬局」という単語は基本的に使いません。唯一、公表文書の中で「調剤薬局」という単語が出てきたのは○調剤薬局の取扱いについて(昭和五七年五月二七日薬発第五〇六号・保発第三四号)、内容としてはいわゆる特定の医院の近傍で開局して、その他の処方箋を取り扱わずに、ほぼ医院と同一の経営と見られるような薬局を規制するものでした。
上記文書の趣旨からも、調剤薬局とは、薬局の中でも保険調剤を主体としたものと位置づけられていることがわかります。
調剤とは
調剤とは医師、歯科医師、獣医師の発行した処方箋に基づく医薬品の調製のことを言います。
厳密には公的保険の使用の有無を問わないので、保険を使わなくても調剤には当たりますが、現実的には、日本は皆保険なので、ほぼ全ての調剤は保険調剤であると言えます。
ドラッグストアは調剤薬局?
ドラッグストアは調剤室を設置しているものと、設置していないものがあります。
もともと、ドラッグストアに調剤室の設置義務はありません。調剤室が無い場合には、そもそも「薬局」ですらないため、調剤薬局とは言えません。
また、調剤室がある場合にも、ドラッグストアの主眼は大衆薬販売や日用品販売の為、調剤薬局とは言いません。
ただし、調剤室があり、保健所による薬局開設許可を受けていれば、店名を「〇〇薬局」と称することは可能です。
調剤薬局の選び方
調剤薬局については詳しくなったかと思います。
ここから先は、数ある調剤薬局の中で、もっともあなたに合った薬局の選び方について解説します。
調剤薬局なんて、どこだって同じなんじゃないの?
違います!
①調剤薬局によりその料金が違うことと、②信頼できるかどうか、③利便性の3つの点で薬局を選びましょう。
えっ???
同じ薬なのに、調剤薬局によって料金って違うんですか?
確かに違います。
ただし、料金が高い=ダメな調剤薬局というわけではないので、誤解しないように。
調剤薬局ごとの料金の違い
調剤薬局ごとに料金が違います。
調剤薬局の料金は技術料と薬剤料の2つの料金の合計になっています。
技術料とは
薬局の料金の一つ、技術料とは調剤薬局のサービス料です。つまり、薬本体の値段ではなく、薬剤師さんの服薬指導や薬の調剤にかかる料金です。
優れた機能を持っていたり、高い実績が評価される調剤薬局には高い料金の算定が認められています。
ただし、それほど大きな金額の差が生まれるものでもありません。最も高い料金の薬局と低い料金の薬局で比べても、自己負担3割の方で300円前後です。
負担金額の違いは主に薬剤料からくるものです。
薬剤料とは
薬剤料とはまさに、医薬品本体の値段、つまりくすり代です。
個々の医薬品の値段(=薬価)は全国どこの薬局でも共通なので、違いはありません。
ただし、調剤薬局ごとに在庫している医薬品によって、同じ処方箋を調剤したとしても使用する医薬品の違いにより、薬剤料が変わります。
一つの成分の医薬品であっても、先発品とジェネリック医薬品の二つがありますが、医薬品の値段(=薬価)という意味ではジェネリック医薬品が更に高いジェネリック~安いジェネリックまで複数の薬価が付いています。
例えば日本中でよく処方されている高血圧の薬、オルメサルタンで比較すると下記のとおりです。
一錠の値段(=薬価) | 1か月分 | |
先発品 | 95.5円 | 2,700円 |
高いジェネリック | 33.9円 | 900円 |
安いジェネリック | 21.6円 | 600円 |
先発品が高いのはイメージ通りだけど、高いジェネリックと安いジェネリックを比べても1.5倍くらい違うんですね。
意外と自分がどんなジェネリックを飲んでいるか意識していない患者さんは多いです。
いかに信頼できる調剤薬局かどうかが重要であることがおわかりいただけるのではないでしょうか。
詳しい料金の内訳が知りたいと思った方は、調剤薬局のお会計の時に受け取る調剤報酬明細書をご確認ください。わからないことは、各薬局で教えてくれるはずです。
信頼できる調剤薬局の選び方
信頼できる調剤薬局かどうかを、外から見分けるのは難しいです。まずは一度、調剤を受けてみてください。
信頼できるかかりつけの薬剤師さんがいる場合には、その方を頼るのが良いと思います。
顔なじみの薬剤師であれば、あなたが飲んでいる薬だけでなく生活リズムや食習慣に応じて、適した飲み方を提案してくれたり、処方した医師に処方変更を依頼してくれるでしょう。
かかりつけの薬剤師さんがいない場合には、薬局の品質はその清潔感で選ぶと良いと思います。
薬を調合する調剤室の中は高い衛生環境が求められますが、いい加減な薬剤師が管理する薬局の場合には、保健所の検査にひっかからない程度にしか清掃がなされていないこともあります。
患者さんとして薬局に行った際には調剤室の中までは見る機会がないと思いますが、例えば待合室やトイレなど、清掃が行き届いているかはその薬局の管理者がどんな人間かを推し量る要素にはなると思います。
私見ですが薬剤師が上だけ白衣で下はジーパンだったり、土足の場合にはその薬局には2度と行きません。
ジーパンであれば、恐らくその薬剤師は調剤室に入る際に着替えていないので、自身の日常生活と高い衛生環境が求められる薬局内を分けてないことになります。
つまり、その薬剤師にとっては調剤室は大して衛生的でなくてもよいということになります。
土足は不衛生ですが、ドラッグストアに併設される調剤室や古いお薬屋さんが始めた薬局に土足が多いように思われます。一部、業務効率上、しょうがないのかもしれません。
身だしなみや仕草、言葉遣いが、その人柄を推し量る要素というのは、万国共通です。
薬局ごとの利便性の違い
薬局によってその利便性は違います。主に以下の項目によって判断すると良いでしょう。
- 立地
- 決済手段
- 処方箋受付方法
薬局の立地は医療機関に近ければ良い、とは限らない
医療機関の目の前にある薬局についつい行ってしまう。
そんな患者さんは多いと思います。
ただし、よくよく考えてみると帰り道の途中にある薬局の方が、利便性が高いことがあります。
これは待ち時間の有効活用によるもので、医療機関の目の前にある薬局の場合、処方箋を薬局に出してから待ち時間が発生します。
短いものでも数分、長い場合は数十分待たされるのではないでしょうか。
ところが、医療機関で受け取った処方箋をSNSやネット経由で帰り道にある薬局に送信しておいた場合には、その薬局までの移動時間で、待ち時間が相殺されます。
つまり、帰り道沿いにある薬局まで移動する時間に、調剤が終わっているということです。
医療機関と自宅が近所の場合には当てはまりませんが、遠くの総合病院に通っている場合などは、実は目の前の薬局に行くメリットは低いです。
地元に馴染みの薬局を持てば、在庫切れの心配もありませんし、不足薬がある場合には自宅まで届けてくれるかもしれません。
私は北海道の千歳で調剤薬局を経営していますが、札幌の大学病院に通っている患者さんは、診療が終わると薬局の公式LINEで処方箋を送信してくれます。
調剤に時間のかかる処方の為、病院の目の前の調剤薬局に行くと、日によっては1時間を超える待ち時間になるそうですが、私の薬局への移動時間に調剤は済んでいるため、到着したころには薬の調剤は終わっていて、そのまま受け取って帰宅されてます。
薬局の決済手段は多いほど良い。キャッシュレス決済は感染症対策にも効果的
薬局での決済手段は現金、クレジットカードはもちろん、最近ではQR決済も普及してきました。キャッシュレスの利便性はちろんですが、高い衛生環境への意識は決済手法にも出ると思います。
新型コロナウィルスへの感染対策という意味でも、キャッシュレス決済への対応は薬局の責務と言えます。
薬局の処方箋受付方法は患者利便性への意識の表れ
既述の通り、目の前の医療機関からの処方箋に依存している薬局の場合、処方箋受付方法は特に何も取り組む必要がありません。
SNSやネット受付が有用なのは、離れた場所にある医療機関から処方箋を受け付ける場合のみだからです。
逆に言えば、様々な医療機関からの処方箋を受け付ける意識の高い薬局は、ネットやSNSで積極的に処方箋受付します。
処方箋受付手法は薬局選びの一つの指標となります。
調剤薬局に関して理解は進みましたか?
調剤薬局について理解は進みましたか?
一昔前から比べると、調剤薬局は町にずいぶん増えました。
普段、何気なく使っていた調剤薬局も、その料金や信頼度、利便性で見直してみると、改めて選んでみたくなったのではないでしょうか。
皆さんが自分自身にピッタリの調剤薬局に出会えることを、切に願っています。最後まで読んで頂きありがとうございました。