調剤薬局で事務スタッフとして働こうと考えている人が一番初めに疑問に思うのが、レセプトってなんだろう?ではないでしょうか。また、薬剤師さんの中にもレセプトがよくわからないといった人もいるのではないでしょうか。
スーパーやコンビニでは、お客さんから商品の代金を受け取りますが、医療機関では患者さんから直接受け取るのは代金の一部です。大部分は保険者(健康保険組合)にレセプト請求します。
ってことは、レセプトっていうのは請求書類のことなの?
その通りだよ!John。
薬局におけるレセプトでは、どの患者にどんな薬をどれだけどんな形式で渡したか等の情報が、決められたフォーマットに従い記載されています。
これがレセプトです!!なんだか簡単そうですね。
かる~い感じで解説よろしく!
調剤薬局での就職を考えたときに未経験の方であれば、レセプト業務がそもそも何なのかわかりません。
調剤薬局は数少ない未経験でも正社員になれるお仕事ですが、レセプトって何だろう?、レセコンって何だろう? そう不安になる方も多いです。
この記事では初めて調剤薬局の事務に就職を考えている方向けに、レセプト業務を中心に事務スタッフの仕事内容を解説します。
あなたもこの記事を読んで、薬局のレセプトに詳しくなって頂き、安心して調剤薬局の事務として就労を目指してください。
まずは簡単に調剤薬局事務の業務を振り返ってみましょう!
調剤薬局事務の業務フロー

ここから先は調剤薬局の業務フローをご紹介しますが、そもそも調剤薬局ってなに???という方は以下のリンクをご参照ください。
調剤薬局とは何か、薬局ごとの違いと選び方
まず初めに調剤薬局における事務スタッフの日次の業務フローにつき簡単にご紹介します。一部、薬局によって異なる部分もありますが、大まかに言って以下のフローとなります。
- 受付
- レセコン入力
- 調剤補助
- 会計
受付

受付は調剤薬局の事務スタッフとして働く際に一番想像しやすい業務ではないでしょうか。
受付では患者さんから様々な書面を受け取ります。
処方箋はもちろん、おくすり手帳や健康保険証、各種公費の証明書や台帳などを受け取り、また、今回の処方箋に記載されている薬剤をジェネリック医薬品に変えるかどうかもこの段階で聞き取ります。
レセコン入力

レセコンとはレセプトコンピューターの略称です。
患者
さんの持ってきた処方箋の内容をレセコンに入力するのも調剤薬局事務の主な仕事の一つになります。
レセプトについては後述しますが、お医者さんの書いた処方箋はそのままではレセプト請求できませんので、一部は事務さんの頭の中で変換し、レセコンに入力し、レセコンは入力されたデータをレセプトに適した形でデータとして保存してくれます。
また、患者さんに手渡す用の薬袋(くすりを入れる袋)や薬剤情報提供書(くすりの説明書)、調剤報酬明細書(お会計の内訳)、お薬手帳のシールもレセコンから出力されます。
調剤補助

以前、調剤薬局では事務スタッフの調剤補助がグレーでした。つまり、薬剤師資格を持っていない事務スタッフが調剤する行為は公には認められていませんでした。ただし2019年4月に厚生労働省より正式に通知が発出され、事務スタッフ等の薬剤師資格を持たない人でも、一部の調剤行為を手伝うことが認められました。昨今の調剤薬局では事務スタッフの方のほとんどは調剤補助をしています。
ちなみに事務スタッフに認められている主な調剤補助は①錠剤などPTPシートの取り揃え、②PTPシートからのバラシ、③錠剤の半割、④全自動分包機などへの錠剤の投入などとなっています。
逆に明確に禁止されている調剤補助は軟膏やシロップ、粉薬などを計量したり混合したりすることです。
会計

会計は薬局によって薬剤師がやったり、事務スタッフがやったりとまちまちです。
病院やクリニックの場合には診療行為に対するレセプト内容が診察後に入力されるため、診察と会計にタイムラグがありますが、薬局の場合には薬剤師の服薬指導後にほぼ同時にレセプト内容が確定(つまり請求額も確定)するため、服薬指導に続いてすぐに会計できます。
薬剤師がそのまま会計する薬局のほうが大部分を占めています。
ただし、大規模な薬局で会計窓口を集約している場合や、衛生面への配慮から薬剤師が金銭授受に関与しない薬局もあります。
薬局のレセプト

ここからは今回の記事の本題である薬局のレセプトについて解説していきます。
薬局のレセプトとは
薬局のレセプトとは、前述の通り患者さんに対して行った調剤行為を詳細に記した明細のことです。主に保険者(健康保険組合など)への請求のために用います。
レセプトへ記載する事項は厚生労働省によって決められています。詳細が気になる方は下記のリンクからどうぞ。ただし、メチャクチャ細かいので、私は読む気になりません。(レセコンに丸投げです)
リンク:診療報酬請求書等の記載要領等について – 厚生労働省
薬局がレセプト請求する時期とは?

薬局では保険者に対してレセプト請求する時期が決まっています。
前月までの調剤分のレセプト請求期限は翌月の10日までです。
多くの薬局は月初作業として各月の第1週あたりを目途にレセプト請求しているのではないでしょうか。
薬局でレセプト請求される金額は?

薬局でレセプト請求される金額は、全調剤報酬から患者さんから直接頂いた金額を引いたものです。患者さんの状況によって自己負担額は0~3割ですので、平均すると全調剤報酬の8~9割をレセプト請求することになります。
また、レセプト請求したもののうち、保険番号の間違いなどで、一部のレセプトは支払われずに保険者から薬局に差し戻されます。
これを返戻と言います。返戻になると、請求金額は支払われません。また、翌月以降に訂正して再請求することになります。
レセプトコンピューター(レセコン)とは

それではレセコンとはなんでしょうか。
レセコンとは、レセプトコンピューターの略で、患者さんが薬局に持ちこんだ処方箋の内容をレセプト形式に変換してくれるものです。
また、薬袋や薬情(くすりの説明書)の印字データもレセコンから出力されます。最近では、自動調剤機器にレセコンからデータ転送し、シロップや混合散剤が自動で調剤されるものもあるので、まさにレセコンは薬局の司令塔となっています。
レセコン入力の仕方

処方箋の記載内容をレセコンに入力する方法は、レセコンの製造メーカーによって異なります。
ただし、基本的な入力方法は以下の二つに分けられます。(私の知る限り、全てのレセコンメーカーはどちらの入力方法にも対応しています)
- キーボード入力
- QRコードスキャン
レセコンへのキーボード入力

一般的なレセコンの入力方法はキーボード入力です。薬の名称などは頭から3文字程度を入力して予測変換し、飲み方(朝食後など)はテンキーで対応したショートカットを入力するパターンが多いです。
ただし、処方箋に記載されている内容をそのまま入力できる場合ばかりではないので、注意が必要です。
多くの処方箋は記載内容をそのまま入力すれば、あとは勝手にレセコンがレセプト形式に変換してくれるのでよいですが、一部の処方箋は記載内容に不備(漏れ、誤りなど)があるため、そのままでは入力できません。
記載されている薬が違ったり、使い方が間違ってるなどの薬学的な不備は薬剤師が処方した医師に問い合わせてくれるので、事務スタッフの仕事とはなりませんが、処方箋の書き方の不備については事務スタッフでなおします。
処方している医師は、患者さんの治療のために処方箋を書いているので、薬局のレセプトの都合は知りません。医院側でもレセコンを使用して処方箋を出力しているので、不備のある処方箋は多くはありませんが、入力する際には注意が必要です。
QRコードスキャンによるレセコン入力

最近では、多くの処方箋にQRコードが併記されています。これは処方内容をN-SHIPSと呼ばれる共通データフォーマットにしたものをQRコードとして記載しています。QRコードには処方内容だけでなく、患者さんの氏名や生年月日なども含まれているため、スキャンした段階でほぼ全てのレセコン入力が完了します。
ただし、処方医があまり一般的でない用法で処方していると、N-SHIPSには反映されず、処方箋の記載内容とQRコードから入力された処方データが異なりますので、そのような場合にはキーボード入力で修正する必要があります。
薬局のレセコンについて理解は深まりましたか?

東京などの大都市であれば、オフィスワークの需要も多いかも知れませんが、地方ではそうもいきません。調剤薬局の事務スタッフはどんな地方都市でも必ず求人があり、女性でも働きやすい(むしろ男性はイメージないので働きづらい)職業です。レセコンと言う、ちょっと聞きなれない言葉がきっかけで、皆さんが調剤薬局の事務スタッフ求人に応募しづらいのではないかと私は少し心配してました。この記事がきっかけで一人でも多くの方が薬局でのお仕事に興味を持ってもらえたら幸いです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。「調剤薬局事務の仕事は未経験OK!」の記事では薬局事務の仕事内容につきもっと詳しく書いてあります。また、実際に薬局事務として採用されるためのノウハウについても書いてありますのでご参考にしてください。
調剤薬局事務の仕事は未経験OK!【超初心者向けまとめ】
以下に「調剤薬局のレセプト業務の上達方法」について、約2000字の記事を作成しました。
調剤薬局のレセプト業務の上達方法
調剤薬局において、レセプト業務は収益の根幹を支える極めて重要な業務です。薬剤師や事務スタッフが行うレセプト業務の正確性と効率性は、薬局の経営安定に直結します。しかし、レセプトには専門的な知識や制度理解が必要であり、ミスが生じると査定や返戻の原因になり、結果的に薬局の損失にもつながりかねません。本稿では、調剤薬局におけるレセプト業務の上達方法を体系的に解説します。
1. レセプト業務の基礎理解を徹底する
医療制度と点数の理解
レセプト業務の基本は、「診療報酬制度」の理解にあります。調剤報酬点数表や通知、告示の内容を読み解く力は、正確な算定に不可欠です。特に、以下の点に注目しましょう。
- 調剤基本料の要件
- 加算(後発医薬品加算、服薬情報等提供料など)の適用条件
- 施設基準の有無とその反映
- 疑義照会や処方変更に関する取り扱い
まずは、最新の診療報酬改定内容を確認し、自身の薬局がどのような基準で点数を算定しているのか把握することから始めましょう。
処方箋の読解力を養う
処方箋には医師の意図や患者の状態が反映されており、それを正しく読み取ることがレセプトに直結します。併用禁忌や用量の過不足、日数の整合性などにも注意が必要です。特に長期投与の際の「分割調剤」や「一包化」の取り扱いには注意が求められます。
2. 実践を通じたスキル習得
点検と記録の徹底
日々の業務の中で、返戻や査定があったレセプトを記録・分析する「査定帳」や「事例ノート」を作成することは非常に効果的です。なぜ査定されたのか、何が不足していたのかを明確にすることで、再発防止策が立てられます。
また、レセプトチェック時にはダブルチェック体制を構築することも、ミスの早期発見と未然防止に役立ちます。
過去事例の学習
特に新人職員は、過去のレセプト返戻事例や査定事例を参考にすると、実務で陥りやすいミスを事前に学ぶことができます。「後発品変更不可」の記載がある処方箋に後発品を出してしまったケースや、服薬指導加算の算定ミスなど、典型的な事例をストックしておきましょう。
この点、チェーン調剤だと、過去事例の社内共有をしていて、効率的に学習できますね
3. ITツール・レセコンの活用
レセプトコンピュータ(レセコン)の理解
レセプト業務の多くは、レセコンに依存しています。よって、使用しているレセコンの特徴や設定の意味を正しく理解することが重要です。薬歴とレセプトが連動しているシステムでは、薬歴記載の不備がそのまま請求エラーにつながる場合もあります。
また、チェック機能や警告表示を活用し、エラーの自動検出を効率的に行うようにしましょう。
AI・クラウドサービスの活用
近年ではAIを活用したレセプトチェックサービスや、クラウド型レセプト確認ツールも普及しています。特に複数店舗を運営している法人では、中央でレセプト内容を一括確認できる体制を整えることで、属人化の回避や教育の標準化に寄与します。
4. 定期的な勉強会と情報共有
スタッフ間の情報共有
薬局内で定期的にレセプト勉強会や情報交換の場を設けることは、全体のレベル向上につながります。特に診療報酬改定時や新しい加算の導入時には、全スタッフが同じ認識で対応できるよう、早期の情報共有が不可欠です。
外部研修や講習会の活用
厚生局や薬剤師会、医療事務団体が主催する研修会への参加も上達には効果的です。実際の査定例や裁判事例などを交えた実践的な内容が多く、制度の「なぜそうなっているのか」が理解できます。
報酬改定時期には卸会社の主催で勉強会がありますね 無料なのでかなり嬉しいです
5. 査定を恐れず、改善機会と捉える
査定や返戻はミスの証拠と捉えられがちですが、実際には「改善のチャンス」として前向きに受け止めるべきです。特に制度変更があった直後は、査定理由が曖昧なこともあります。その場合には、返戻理由を正確に把握し、必要であれば支払基金や審査支部に確認を取りながら根拠を掴み、社内でのルールに反映させていくプロセスが重要です。
おわりに
レセプト業務の上達には、制度理解・実務経験・情報共有・IT活用という複数の要素が相乗的に機能する必要があります。業務の正確性は薬局の信頼と経営を支える土台です。特に近年の調剤報酬改定では、加算要件が厳格化され、書類整備や薬歴の記載義務も強化されています。日々の業務を通じて少しずつでも知識と経験を積み重ね、質の高いレセプト業務を目指していきましょう。