薬剤師の皆さん、キャリアプランってご存じですか?
いやいや、それはさすがにわかるでしょう~
ではキャリアプランとキャリアパス、キャリア形成の違いは何でしょうか?
ん~、確かになんとなくしか、理解してないですね。
結構、言葉の定義があいまいになったままの方、多いのではないでしょうか(詳細は後述します)。
言葉の定義をあいまいにしたまま、自分のキャリアについての考え方が誤ったままでは、自分の職業人生、もったいないと思いませんか?
こんにちは。合同会社YAKUDACHI代表の鈴木重正です。
私も薬剤師ですが、キャリアについて真剣に考える機会、薬剤師してるとあまりないものですよね。
日々の仕事に忙殺されていて、気づいたら今の職場に10年・・・
同期はいつの間にか、みんな転職していて、なんだかお財布事情も自分と違いそう。
しっかり考えたうえでの決断ならよいですが、キャリアについて真剣に考えないままに、年齢だけ重ねていくのはもったいないです。
時間は絶対に戻ってこないので、もし、今までキャリアプランについて考えてこなかった人は、今ここで立ち止まって考えてください。
皆さんが有意義な薬剤師人生を送ることを願っています。
薬剤師キャリアに関する基本
はじめにあいまいな言葉の定義やキャリアプランの作り方について解説します。
薬剤師キャリアに関する言葉の定義
冒頭でも述べましたが、キャリアパス、キャリアプラン、キャリア形成など、キャリアに関する単語は紛らわしいものが多く、誤解を招きます。言葉の定義なので使う人や、時代によってズレてきますが、現代では概ね以下のような意味として使われています。
薬剤師にとってキャリアパスとは
薬剤師にとってキャリアパスとは、雇用主である企業側が示すキャリアの道筋の事です。
次のポジションは何で必要なスキルは何か、また、5年後10年後に目指すべき姿はどれとどれか、といったものです。
企業側が採用活動や従業員のモチベーション維持、スキルアップのために策定します。そのため、従業員本人の人生にとってベストかどうかは関係ありません。←ここ重要
薬剤師のキャリアプランとは
薬剤師のキャリアプランとは、自分自身が長い目で見た自分の職業人生に対する計画です。キャリアパスと違い、自分自身のために作るので、必要に応じて、転職や起業が含まれます。習得すべきスキルや資格も現在属している会社に関係ないものも含まれます。
薬剤師のキャリア形成とは
薬剤師のキャリア形成とは、作成したキャリアプランに従って、まさに自身のキャリアを形成していくことです。自分の目指す姿に向かってのスキル習得や転職などの過程を言います。
薬剤師にとって、なぜキャリアプランとキャリパスが異なるのか
前述の通りキャリプランとキャリアパスは異なります。
雇用主である企業側は、従業員に会社のために役に立ってほしいだけなので、あなたの人生にプラスになるかどうかはキャリアパスの設計に関係ありません。
また、もしあなた自身にとってのベストが転職を伴うものであった場合、逆に会社にとっては不都合な事実なので、積極的にあなたに伝えることはないでしょう。
よって、会社側が示すキャリアパスには転職も起業も出てきません。
ここがキャリアパスとキャリアプランの違いです。
会社が主人公なのがキャリアパス、自分が主人公なのがキャリアプラン。
もう、どちらを選ぶべきかは明白ですね。
薬剤師の為のキャリアプランの作り方
薬剤師の為のキャリアプランの作り方はストレングスファインダーやリクルートのWill Can Mustなど様々な手法がありますので、自分に合ったものを選べばよいと思います。
また、参考図書も以下にご紹介しますが、ド定番のものばかりです。1冊買って、実践すれば十分でしょう。
・絶対内定2022: 自己分析とキャリアデザインの描き方
・さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0
絶対内定は自己分析からキャリアプランまで一冊で完結できるので、やり切れば他には何もいらないと思います。ただ、ワークボリュームが多いので、とっつきにくいと言えば、とっつきにくいです。
ストレングスファインダーは、どちらかと言えば、心理テストのようなもので、読み手として受身のままでも自分の特性を知ることができます。
どちらも使ったことのない人、初めて自己分析する人はストレングスファインダーの方がよいかも知れません。
なお、キャリアプランのエッセンスは以下の2つです。
- 徹底的な自己分析
- キャリアプランの出来栄えは気にしない。「ある」という事実が重要
キャリアプランには徹底的な自己分析が必要
キャリアプラン作成には、そもそも徹底的な自己分析が含まれています。
ところが多くの人は自己分析を曖昧にしたまま、形式的なフレームワークに入ってしまうという過ちを犯します。
自分の事を本当に理解していなくては、いくら美しいキャリアプランを作っても、来月にはもうどこに行ったか分からなくなっているでしょう。
自分ととことん向き合い、自分の本当の姿や本質、気づかないふりをしていた自分自身と対面し、心の底から成し遂げたい、たった一つのこの命を捧げたいと思える人生を見つけてください。
そんな自己分析に基づいていれば、キャリアプランは明確にあなたの意識に刻み込まれ、あとは脳が勝手に実現しようと手伝ってくれます。
なお、自己分析については「薬剤師には自己分析→ガクチカが足りない」の記事もご参照ください。
就職先に迷う薬剤師には自己分析からのガクチカが足りない
キャリアプランは「ある」という事実こそが大切
キャリアプランは出来栄えが悪くても作成して、自分の中に持っていることが重要です。
夢物語でも全然問題ありません。
キャリアプランがあれば、やるべきことが見えてきて、毎日に目標意識が生まれます。あなたが今日、朝起きて会社に行くことも自分の目標のためであれば、ポジティブに捉えることができるのではないでしょうか。
また、キャリアプランは途中で変わっても全然OKです。
繰り返しますが、美しい、完璧なキャリアプランなど作れなくて良いんです。出来栄えは悪くてもまずは自分のキャリアプランを持ってください。
薬剤師にとってはキャリア形成が難しい
それでは薬剤師の場合はどうでしょうか。
しっかりした自己分析の元、キャリアプランを作ったとして、キャリア形成していけるでしょうか。
実は、薬剤師はキャリア形成が難しい職種と言えるかもしれません。
薬剤師にとってキャリア形成が難しい理由
薬剤師はキャリア形成が難しいです。それは薬剤師免許という、かなり強い国家資格を持っているからでしょう。
つまり、薬剤師免許があるゆえに、職業も薬剤師を選ぶことが、選び続けることが多くの場合、妥当になってしまいます。特にキャリア形成の重要な時期である20代から30代では、年収面から見ても薬剤師以外の職業は選びづらいのではないでしょうか。
そうすると、例えば理想のキャリアプランでは30代前半に会計知識を付けるために資格を取得し、転職して実践する。といったことを考えても、転職後では現在の生活が維持できないといったことが起きてしまいます。
また、薬剤師の周囲には薬剤師ばかり、といった現状もキャリア形成を難しくさせます。
職場の先輩や上司が、キャリアプランを持たずにずっと薬剤師だけをしてきた人たちだと、キャリア形成について相談しても、的を得たアドバイスは貰えないでしょう。
薬剤師はキャリアプランを勘違いしている
多くの薬剤師はキャリアプランを勘違いしているのではないでしょうか。
私の経験では、キャリアプランと聞いて、ピンっと来ない人が多いと感じています。
どこか、文系大学生の就活手法のひとつ、その程度の認識の方が多く、「薬剤師なんだから就職先はいくらでもある、だからキャリアプランだかキャリアステップだか知らないけど、関係ない。」そんな風に捉えている方が多いと思います。
つまり、よくわからないけど、たぶん、自分には必要ないから知らなかった。
でも、大丈夫です。キャリアプランはいつでも作れます。もし、この記事を読んで、ハッとした方がいらしても、今日、これから始めればよいだけです。
ここからは、薬剤師にとって正しいキャリアプランの理解のために、よくある思い違いをご紹介します。
医薬品知識の習得は薬剤師キャリアに重要とは限らない
薬剤師の方が研修、キャリアアップと聞いて真っ先に思い浮かべるのは、医薬品に関する勉強会、研修会ではないでしょうか。
ただし、医薬品知識はあなたのキャリアに重要だとは限りません。
素晴らしい薬剤師はある程度の医薬品知識が前提ですが、あなたのキャリアプランに必要な知識はどの程度でしょうか。
多くの場合、薬剤師が研修会に参加しているのは、キャリア形成の為ではなく、ただなんとなく、MSさんから誘われて・・・ではないでしょうか。
会社主催の研修参加は薬剤師キャリアにつながらない
会社主催の研修もあなたのキャリアに有用とは限りません。
雇用主はあくまで、会社の役に立つように、あなたを教育したいのであって、あなたのキャリアプランは関係ないからです。
前述の医薬品勉強会同様、研修参加自体が悪いのではありません。
研修参加することにより、あなたが自分のキャリアに必要なこと、それを考えなくなってしまうことが危ないのです。
研修に参加して満足するのではなく、能動的に自身のキャリアプランを設定し、必要な知識や資格、経験は自分から習得するようにしましょう。
著者が薬剤師として実際に歩んだキャリアステップ まとめ
最後に私が実際に歩んだ(歩んでいる)キャリアと、そのキャリアプラン作成について、ご紹介します。
私のキャリアプランの入り口は前職の大手チェーン入社時に「10年でサラリーマン辞める」と決めたことから始まります。
会社員ではなくなるので、自動的に何らかの事業家になるしかありません。私の当面の目標は「独り立ちできるだけの様々なビジネススキルを習得する」というものになりました。当時はそんなに明確ではなく「いろんなスキルを身につけてみたい・・・あれも、これも」程度のアバウトなものです。
ところが、入社してみると企業から求められるスキルの大部分はいわゆる「現場力」、よって医薬品知識や接遇などのスキルアップの機会は豊富にありますが、ビジネスマンとして多彩なキャリアを歩んでいくために必要なスキル、例えば会計の基礎知識や経営学などは学ぶ機会がありません。
私の場合は自分の強み弱み(いわゆるSWOT)と現在もしくは将来のポジションに求めれるスキルを整理し、以下のような行動をとりました。
薬局勤務時代
薬局に勤務していて、日々研鑽を積んでいる以上、薬局関係のスキルは十分なので、社内で経営層と言われる人たちのスキルを分析し、その中で自分に無いものは「営業力、会計、投資意思決定」と考えました。独学で会計と投資から手を付けました。
その後、社内の新入社員研修を担当するようになり、社長はじめ経営層と接する機会が増えましたが、その際に会計知識に基づいて会話ができることが「ただの薬剤師」ではない、と自分を認めてもらうきっかけになったと考えています。
子会社取締役時代
薬局経営に関しては初めての事であっても馴染みやすいものでした。
ところがPMI(M&A後の統合作業)を任されるようになってからは不慣れなM&Aの現場で、しかもファイナンシャルアドバイザーや会計士と接するために、自身のM&Aに関する知識不足を痛感することになります。
これも独学で知識習得することになりました。
新規事業担当時代
社内でジェネリック医薬品メーカーを立ち上げるために新規事業の担当となりました。
薬剤師ですので医薬品には馴染みがありますが、そもそも新規事業、スタートアップ、起業といった分野はまるで素人でした。
自分に足りないものは起業マインドだと思い、書籍を買いあさって独学もしましたが、マインドの習得には環境を変えるしかないと考え、起業家グループに飛び込んで毎月交流会(という名の飲み会)に出ていました。
結果として現在は、M&Aにて自分の薬局を取得し経営しています。
最後になりますが、私は丸10年を薬剤師サラリーマンとして過ごしました。
振り返ってみれば過去に自分が必要と思い学んだスキルは現在に生きていると思います。
大切なことは現状に満足せず(薬剤師でいいや、ではなく)、次のステップで求められるスキルを自ら学ぶことだと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。皆さんが、それぞれ自分自身にとって良き職業人生を歩まれることを切に願っています。
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